第41話 疑惑
あの上田が竹内を殺して、さらに副島まで手にかけるなんて……
ゲームが始まった当初から不倫していることを知ってしまってさらに魅了スキルのせいとはいえ不倫相手の金子を殺してしまったりと異常な行動は見ていたけど、今回の竹内達は確実に自分の意思で殺している……元の世界に戻るために一緒に行動してきた竹内を簡単に殺してしまえる冷酷さは今まで見てしまったどの殺害光景よりも衝撃的だった。
デバッグルームで一緒に映像を見ていた俺と河合と中村さん3人ともにあまりのことにしばらく会話もできず唖然としていた。
上田って誰とでもすごくフランクに接して悪くいう奴もいないし、仕事もかなりできるって聞いたことがある、なのに偉ぶってないっていうか、俺なんかに対してもわざと突っ込ませるようなおどけた態度をとってきて腹を割って話ができる数少ない職場でも人間だと思っていたのに……
今回のゲームで特に上田に関しては裏の顔をたくさん見てしまったような気がする。
もしかしたら上田だけじゃなくてみんな見せてないだけでそういう部分があるのかもしれない、それこそここにいる河合や中村さんだって……
信用できなくなっちゃうよな……誰のことも……
「箕輪さん!」
えっ……!?
河合が俺のことを呼んでいるなんだか心配そうに俺を見てる。
「ん、どうした?」
「どうしたじゃないですよ、さっきから呼んでるのに一点を見つめて黙ってるから心配したじゃないですか」
河合に何度か呼ばれていたらしい……考え事をしてて全然気がつかなかった、「悪い」と軽くあやまると河合は話を始めた。
「竹内さん、上田さんにジャマされなかったらどうするつもりだったんですかね?」
「ジャマ? ジ・エンドに潰されてどのみち先は長くなかったろうしどうもできなかったんじゃ」
「その前です……竹内さん、二発目のジ・エンドをかわそうとしてたように思うんです、そこに上田さんが割り込んで来たからあんなことになってしまいましたけど……」
「ん……そうなのか……?」
急だったら全然覚えてないけど、確か浮遊スキルで制御不能になったジ・エンドとマネージャーを繋ぐ紐を切ろうとした時に上田が止めに入った、そのあとのやりとりが河合には何かあったように見えたってことか。
気になるな……この映像巻き戻し機能とかついてないよな? ある訳ないか……
「あの時、上田さんが来てしまったから助けることを優先したから回避しきれなくなって致命傷を負ってしまったんじゃないかと思うんです、現に上田さんはそのおかげで生きてるし」
言われてみれば竹内を止めようとして割り込んだ上田が無傷で竹内だけダメージを負っていたのは変だ……
助けたと考えるのが妥当か……じゃあ待てよ、上田は助けられた直後に竹内を殺したってことなのかよ……
「上田さんは、そのことに気付いているんでしょうか……?」
中村さんが話に入ってきた。
「とっさのことだし、ただの事故だと思っている可能性はゼロでもないかもな……」
そうでないと上田、やばすぎるだろ……
上田はともかく今は竹内の話か、河合は話を続けた。
「竹内さんのやろうとしていたことが気になりませんか? 多分それは上田さんも理解してないことだと思うんです」
「確かに推測の域をでないけど、そのやりとりを聞くと竹内さんがやろうとしているとこと、上田さんがやろうとしてることにはズレがあるかもな」
竹内は何か理由があって一緒にいた上田にも伝えてないことをやろうとしていたのかもしれない……
色々と気になることはあるけど、デバッグルームの外に出たらマネージャーに狙われるんだよなぁ……
副島もいなくなってしまったし確実に俺は狙われる、回避するスキルなんて持ってないし外には出れない……
とはいえ、この空間にいれば察知されないみたいだけど。
「箕輪さんのスキル本当に不思議ですよね、ここにいると外からは見つからないんですね、ひとりだけ安全地帯を持っているなんてズルいですよ」
河合はデバッグルームに来てから感心しっぱなしだ。
一見完璧な安全地帯に思えるけどそうでもないんだよな……
「完璧じゃないよ……丹澤さんに一度入られてるから、しかもここのこと上田さんも知ってる……」
忘れもしない丹澤の一件……あいつに入られただけじゃなくて竹内や上田にもここのこと言われたんだ……
「外から完全に隔離されてるって訳じゃないんですね……」
河合は察しがいい、というか頭がいいんだと思う。 1伝えただけで10とはいかなくても7か8は理解してくれる。
最初から河合がいてくれればもっと多くの人を助けてやれることはあったのかもしれない……
今のところマネージャーにはデバッグルームのことはバレていないはず……
上田にはバレているとしてもこの場所は見つけられてないと思う。
デバッグルーム内にいる俺と河合と中村さん以外の奴らはみんな誰かしら殺しているゲームの積極的な参加者だ……
もう気を抜くことはできない……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます