第27話 死を拒み続けた男


ふぁぁぁ……


夜が明けてきた……殺し合いが始まって3日目……


丹澤のせいで外からデバッグルームに入ってくる者がいることもわかってしまい初日ほど安心して休めなかった。

なんか寝不足だ、ここらでの生活なんて楽なもんじゃないな……


一緒に働いてた仲間たちがどんどん殺しあっていく、しかもこのゲームはルール的に積極的に殺していったほうが有利、やる気満々の若井はかなり脅威だ……



そして俺的に何より問題なのは、この部屋にある食料が尽きてしまったことだ……


かなり溜め込んでいたはずなのに、まさか2日で食べてしまうとは……

そういえば体が重くなってきた気がするんだよな、この部屋の中でやれることなんて食うことくらいしかないからついつい食べてしまう……


摂生したほうがいいんだろうけど、このまま何もしない訳にもいかないしなぁ……

スーパーに行くのは危ない、けどいかなきゃ食い物がないんだよな……


どうしようかな……







「ふぁぁぁぁ」


杉原も朝を迎え気だるそうにあくびをしていた。

初日の小島と山田が殺されてしまった件があまりにも衝撃で何も行動する気が無くなってしまった。


あれから再度小学校の屋上に戻り、不審者が近づいてこないかを念入りに調べていた。

杉原に争う気はなかった、ただ近づく者がいれば逃げ、なんとか生き延びようと考えた結果元の場所に戻ったのだった。


誰も信用できない、とにかく死にたくない気持ちのみで必死だった。


学校は校庭側に全ての出入口があるためそこを入念に見ておけば誰にも侵入されることはない、簡単なことではあるが、ひとりで常に監視してなければならないため、杉原はこのゲームが始まってからほぼ無休で監視を続けていた。


体力はもうすでに限界を超えていた。


だが寝たら自分が危険になる、死と隣り合わせの精神状態でなんとか今の状態を乗り越えていた。


しかし、命を削りながら監視し続ける杉原は重大なミスをしていることに気付いていなかった。


学校の出入口さえ監視すれば問題ないと考えていたが、壁を登ることができるスキルを持つ者がいればその対策は破綻する、そしてすでにそれを実行し背後に近づく者がいることに……


「杉原!」


誰かが名を呼んだ。

杉原はとっさに校庭の警戒をやめ屋上を見渡す。


「だ……誰だ……? なんでここに入ってこれるんだよ……」


ここまで必死に警戒を続けてきた、命懸けで見てきた校庭に抜かりはないつもりだった。


「急いでここを出て行け!」


聞き覚えのある声だが、頭がしっかり働かない杉原には誰の声なのかわからなかった。


敵か味方かもわからない、わかっていることは学校に侵入してきている者がいるということだけ。



屋上からは建物内の通常の階段と非常用階段があり、逃げるならどちらかを使わなくてはならない。



杉原は自分の目を信じ、外までの道が見える非常用階段を使って逃げることにした。


「死んで、死んでたまるか!」



必死に階段を降りていく杉原だったが、疲れと興奮のしすぎです足がもつれ、階段の手すりに引っかかり、倒れてしまった。


その時だった……杉原の目の前の階段部が大きな音を立て、つぶされ崩れていった。


鉄で作られた非常階段が一瞬でスクラップにされ、地面まで落ちていった。


「あ……ああぁ、」



つまずかなければ、自分がスクラップの一部になっていた。

むしろ今のは自分を狙った攻撃。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」



階段の先は破壊され進むことができない、戻ることなんてできる訳がない。


杉原のいる場所は階にして4階くらいの位置ではあったが杉原は地面に飛び降りた。



ドスンと音が鳴り響いた。



杉原は右足が逆を向いている、痛みで足を抑えてはいるが、なんとか命に別状はなかったようだ。


痛みをこらえながら片足で立ち上がり、進み出した。



「ハァ、ハァッ!……ううぅ…………死にたくない……」


血のあとを地面に残しながら杉原は学校から出て行こうとする。


「もうやめてくれ! こんなことしたくない!」



声がまた聴こえてきた、杉原を読んでいるわけではなく、誰かと争っているような話ぶりだ。



杉原は立ち止まる。


「もしかしてマネージャー?」



そう呟いた直後、杉原の頭上から巨大な物体が現れ杉原を押しつぶした。


潰された後の肉片は杉原の面影は残らないほど粉々になっていた。



「逃げてくれ……みんな、頼むから俺の前からいなくなってくれ……」


井上が潰された杉原を見て悲痛の表情を浮かべる。


肉片に手を差し伸べようとするが何かに引っ張られるように杉原から距離が離されそのまま姿をくらました。



「あれがマネージャー……」


「思ったよりも強烈ですね……」


物陰から竹内と上田が姿を現した、2人も学校に侵入し、様子を伺っていたようだ。


「クソ……杉原さんを助けてやれなかった……」


「仕方ないですよ、あそこで助けに出たら俺達まで殺されてます、そのかわりマネージャーの能力をこうやって見ることができた、かなりの成果ですよ」


「犠牲があっての成果なんて喜べないだろ」


「まあ……そうですけど、少なくともこの情報は無駄じゃないです」


「……そうかもな……」


竹内は杉原の肉片を悲しい顔で見つける。


上田は井上がいなくなったあとを目で追っていた。


「マネージャーは杉原さんを殺した時、悲しんでた……自分で殺したはずなのに……」



死亡者

杉原 輝樹

圧殺(井上 洋一)


残り11名

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