第18話 丹澤さんゴーイングマイウェイ
デバッグルーム内に第2チームの丹澤がいる。
「な、な、な、な、なんでここが?」
何故だ何故だ何故だ何故だァァァァァァぁぁァァァ!???
意味がわからない、訳がわからないぞ、どうして入ってきてるんだよ……よりによって丹澤が。
「やっぱり箕輪さんだ、よかったぁ」
よかったぁじゃないだろ! 俺の質問に応えろよ!
どうしてデバッグルームに入ってこれるんだよぉぉぉぉ!!
「ここは箕輪さんのスキルでできた場所なのかな?」
「え……っと、そ、そうですけど……丹澤さんは何でここに?」
「よかったぁ、そうだと思ったんだよね! みんなね箕輪さんのこと心配してたんだよ、元気そうでよかった」
「アハハハハ……心配なんて………」
してないだろ! お前らのやりとりは見えてるんだよ!
「でもすごいね、こんな空間が作れちゃうなんて、なんて言うスキルなの?」
「デバッグルームっていうスキルです、丹澤さんは何でここがわかったんですか?」
「何それぇ、デバッグルーム? 品質評価チームの人達のことをデバッガーって言うけどそのデバッグのことなのかな?」
「いや、俺もスキルを受け取った時に名前を言われただけなんで、具体的なことまでは……それで、なんでここに入ってこれたんですか?」
「そっかぁ、でもこんな別空間が作れるんだからいいスキルだよね」
おい! こいつさっきから俺の質問無視してるだろ!?
こいつ一番苦手だ……
いつも自分の事ばかりで今みたいに人の話なんて全然聞こうとしない、困ったらキャーキャー騒ぎ立てて周りをかき回す癖に自分は何もせずに見ているだけの奴だ。
女なのに金子からもあまり誘われることがない、相性もあるんだろうけど同性からもそこまでよく思われてはないんだと思う。
あぁぁ、こんな奴早くここから出て行ってくれないかな……
「でもほんとよかったぁ、スーパーに来たら影にこの入口が見えたから怖いけど覗いてみたの、なんとなく箕輪さんがいるような気はしてたんだけど、ほっとしたよぉ」
俺は確かにこのデバッグルームにスーパーの物陰から入った
……
俺が出入りする時に別空間の入口が開閉はするけど、外から出入口が見えてしまうなんて考えてもなかった……
いや、でもちょっと待てよ……俺がこの部屋に入った物陰ってのは男子トイレの側の用具入れだぞ、何でそこに丹澤が来たんだ?
こいつのスキルは確か感知力、そのスキルを使って俺の居場所を探し当てた……のか?
感知力スキルを手にする以前から丹澤は妙に察しがいいことがあって苦手だった、クソ……しかしなんでこんな奴にバレてしまうんだ。
「すごーい、ここで料理してるんだね! いいなぁ、箕輪さんマメだもんね」
置いてある食材を目にして話し出した。
こいつまだここにいるつもりなのか!?
頼む……さっさと帰ってくれぇぇ!
「いや、えぇっと、コンビニとかの出来合いのものは食べる気にならないんで」
「えぇぇぇすごぉ〜い、和牛なんてあるんだ、こんなの食べてたの? 私昨日から食欲なくてジュースしか飲んでないよ」
「スーパーにいい肉が置いてあったんで……」
「もう、お風呂にも入れないしさぁ……早くここから出たいよね……」
やっぱりこいつとは会話をしている気がしない……
会話って言葉と言葉のキャッチボールだよな?
こいつは一方的に言葉を投げつけてきてるだけで会話になってない……さっきから1つも噛み合ってないぞ!
「ところで箕輪さんは他の人達がどうなってるのか知ってるの?」
「え……っ!?」
全部知ってる訳じゃないけど……
こいつに外の映像が観れることがバレたら面倒だ、絶対に伝えたくない。
「ずっとここにいたんで外のことはあまり……」
「昨日ね料亭で火事があったの。竹内さんと上田さんがそこを調べにいったら小島さんと山田さんが亡くなってたんだって……」
「えっ……そうなんですか!?」
ちゃんとビックリしてる演技できてるよな?
昨日の若井の一件だ、思い出したくもないけど……
竹内達、確認に行ってたのか。
「竹内さんはね、これは若井さんがやったんじゃないかって言うんだけど、私には信じられなくて……」
「若井さん会議室でも変だったからなぁ」
「はぁぁぁあ、どうなっちゃうんだろうねほんとに、みんなの中から人殺しが出てくるなんて怖いよね」
「ほんとどうなっちゃうんですかね、せめて外の世界に出られればいいんですけどね」
「外の世界?」
はっ! しまった……
「ここが途中までしか進めない区切られてる空間だって知ってるってこと? この部屋にしかいなかったって言ってたのに?」
俺の質問を全然聞いてなかったくせに、何でこんな嫌なところはしっかり突いてくるんだよ……
「あっ、いや……えーっと、ほらファントムがこのゲームがなんちゃらって言ってたからそういう意味で……」
ダメだダメだ……自分でも何言ってるのかわからない……
「そっか、そういうことね」
白々しい返事で返された……絶対こいつ納得してないだろ……
おいおい、なんかデバッグルーム内をキョロキョロと見渡し出したぞ……本当にもう勘弁してくれぇ……
丹澤は映像を映し出している壁の前に立ってあたりを眺め出した。
もうこいつなんなんだよ……まさか感知力スキルでここで映像が観れることがわかったのか?
こいつのスキルそんなことまでできるのか……?
「何でここの壁のあたりだけ物が置かれてないんだろう?」
あっ……
デバッグルーム内に収納なんてないから、ものは床に直置きしている、ただ映像が観れる壁のあたりは見えずらくなるから意識している訳じゃないけど何も置いてない、そこが気になったのか……
「全然意識してなかったですけど……そこだけ空いちゃってますね……」
なんだかベテラン刑事に取り調べでも受けてるみたいな気分だ、胃がキリキリしてきた。
「なんか大型のテレビでも置いてあったようなスペースだね」
丹澤はそういいながら映像が見えるあたりの壁に手を広げてサイズを測るように確認しだした。
こいつ、実はもう俺の能力のこと知ってるんじゃないか……?
なんだこの察しの良さは。
このままだと、俺がデバッグルームでひっそりと過ごしていることや、みんなの動きを映像で隠れ観ていることがバレてしまう……
万が一そんなそとになったら、俺はきっと狙われてしまうよな。
そしたらこいつはここから帰らせないほうがいいのか?
でも一緒に過ごしてなんていたら胃に穴があきそうだ……
どうする……
このままこいつを野放しにしてるのは絶対にまずい……
殺す?
殺してしまえば、誰にもバレることはないぞ……
でもそんなこと、俺が丹澤の事を殺せるのか……?
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