第3話 君達は殺し合わなければならない
ようこそ? ゲームに選ばれた?
突然現れた男は意味不明なことを言い始めた。
不審さ満点だ、ここが拳銃社会なら即発砲しても文句はないくらい奇妙な奴だ。
竹内が席を立ち、男に詰め寄る。
「おい、アンタどこから入ってきた? 今は会議中なんだ、出て行ってくれないか?」
「どこから来たって? 僕はずっとここにいたぞ、君達が気付くことができなかったんだ、ちなみに君達がこちらに来た側だ、僕が出て行けと言われる筋合いはない、そして君達はもう帰ることはできない」
「すまないが、もう少しわかりやすく言ってくれないか? アンタの言っていることが全く理解できない、そもそもアンタ何者なんだ?」
「分かりづらいか、フフフ…… じゃあこう言おう、君達は我々の世界に招待されたんだよ、選ばれたと言うのはそう言うことだ、僕は君達にこのゲームの手ほどきをする案内人だ、ファントムとでも呼んでくれ、フフフ……」
「招待された? ここはうちの会社の会議室で見ての通り仕事中なんだ、ゲームなんてやってる暇はない冷やかしはやめて早くでていってくれ、警察を呼ぶぞ」
「フフフ……おかしなことがいくつか起きているのに、まだここが現実だと思っているのか、違うな、薄々気付いてるんだろ? すでにゲームは始まっているぞ」
気味の悪い奴だ、竹内が詰め寄っているのにも関わらずまるで動じることもなく、それこそ冷やかしているかのように訳のわからないことを言ってきている。
「携帯の電波が入らない、クソッ……なんだって言うんだ!」
小島がさっきから携帯をしきりに操作している、110番でもしてるんだろう。
俺もスマホを取り出してみたが確かに電波が繋がらない、職場で繋がらなかったことなんてないのに……
竹内は少し距離を取り、大きくため息をついた。
「わかった。 で、案内人さん、ここが元いた場所じゃないんならどうすれば戻れるのか教えてくれないかい?」
強引に押しかけるのはやめ、諭すような話し方に変えたみたいだ。
ファントムは勝ち誇ったように口元がつり上がった。
「フフフ……君達がやる事は簡単だ、僕の座っている席にいた者はどこに居ると思う?」
井上マネージャー! いなくなったのにはこいつが関わっていたのか。
会議室に緊張感が走った、これはただの冷やかしじゃないのかもしれない。
「マネージャーをどこへ連れて行った? 目的は金か?」
「ズレてるなフフフ……通貨なんてここでは何の意味も持たない、君達がやることはそのマネージャーと呼ぶ人物を見つけるということだ」
「マネージャーを見つければ戻れるんだな?」
「フフフ……それじゃ簡単すぎる、このゲームをクリアすることに必要なのはターゲットであるマネージャーとやらを殺すことだ」
殺す……?
やっぱり馬鹿げてる、こんな狂った奴相手にしても無駄か……
「アンタさっきから何ふざけたこといってんの!」
甲高く気合の入ったでかい声がファントムに浴びせられた、確認するまでもない、金子の声だ……
ファントムは面食らったように金子に顔を向ける。
「アンタと違ってうちには家族がいるの! 大事な旦那と息子が待ってるの! ふざけた遊びに付き合ってらんないのよ!」
出た、いつもの金子節、何かと旦那と小さい子供の話を出してマウントを取ろうとする金子の得意技だ。
そんな金子の言葉を聞いてもファントムは何食わぬ顔で返事した。
「大切な者が待っているならなおさら頑張らないとな、ターゲットを殺せなければ永遠にここから出ることはできないぞ」
「そんなこと誰もやらないわよ! バカじゃないの? アンタそれなりの年齢なんでしょ? こんなことやってないで普通に働いたら? 周りから笑われるわよ」
ファントムは困ったように息を吐きだした。
「えっ!?」
急に体が重くなった、地面に吸い寄せられているような感覚だ、俺だけじゃなくみんな同じ症状が起きているようだ……金子が身動きが取れなくなるほどの体の重みに思わず声を上げた。
立っていた竹内も床に膝をついている。
「こうすればわかってもらえるかな?」
まさか、ファントムがこれを?
ファントムの突然の実力行使に誰も口を出せなくなった。
「信じる信じないは君達次第だと言いたいところだがこれでもこちらも本気なんだ。 本当は手荒なことはしたくないが、理解してもらうためには仕方ない、大事なことだからしっかり覚えといてくれ。 ターゲットにはこちらで強力なスキルを与えてある、今のままの君達で殺すことは不可能だ」
これがファントムのスキル? スキルってこんなこともできるのか……
「じゃ、じゃあどうしろっていうんだ?」
竹内がひざまずきながらもファントムに尋ねる。
ファントムは嬉しそうにニヤケながら両腕を広げた。
「そう、そこでだ! スキルを手に入れる方法はもう一つある、それはここにいる者を殺すことだ! 要は君達はここで殺し合わなければ、ターゲットを殺すこともできないし、ましてやゲームクリアなんてできないんだ!」
興奮するように話していたファントムは落ち着きを取り戻し、会議室の出口に向かい進み出した。
「僕が言いたいことはそれだけだ、質問はあるだろうが、答えられることは今伝えたこと以外にない、どうやってもこのルールは覆らない、早く気付いて必死に参加することだ」
そういい残してファントムは会議室から立ち去った。
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