たしかに女子は複雑ふくざつだけど、 

 合理的な君には、

 女子の定理は当てはまらないように見えるけど」


『私は合理的よ。

 感情は一見不合理いっけんふごうりに見えるけど、

 それは未来への負債ふさいなのよ。

 家族を殺せばあなたを殺す。

 たしかに殺された後その人物を殺しても、

 警察に捕まるだけ。

 死んだ家族は戻らないし損しか残らない。

 不合理よ。

 でもその負債ふさいを先にしめす事によって

 殺人事態を未然みぜんに防げれば、それは合理的よ。


 感情をはいした最短距離を計算する合理家は、

 いっけん最短距離を目指めざしているようで、

 人間の感情につまずくわ。


 全ての人間が感情を無くしたロボットにならない

 かぎりは最短距離にはならないのよ。

 計算だけのロボットにはその未来が見えない。

 だから私は感情的だし、合理主義者よ 』


その論法ろんぽうがすでに、

感情をはいしたロボットみたいだと思うのは、

僕だけだろうか。


たしかに彼女は合理主義者だった。


わかった契約成立だ!

 君は契約以上の対価を支払う義務ぎむはないし、

 要求ようきゅうはしない」


要求はしないがお願いはするかもね。


「僕は感情で君と契約する。

 下心と言えば聞こえは悪いが、

 僕は君に死んでほしくないし、

 もっと仲良くなりたい。

 でも要求はしない 」


それが彼女が聞きたかった答えだろう。


感情と言う曖昧あいまいな約束で、

後で覚えの無い請求せいきゅうをされるのを、

けたいのだろう。


たとえばだが、後で僕が命がけで君を守ったのは、

君が僕を好きだと思ったからだ。


だから僕と付き合えとか言う事を。


『要求はしないけど期待きたいはするのね』


「男はどこまでいってもバカな生き物って事だよ」


曖昧あいまいね』


Iアイ mayマイ meミー(私は私かも知れません。)」


『期待はしないでね』


「契約成立と言うこと?」


『契約成立と言うこと』


どちらからでも無く二人は握手あくしゅしていた。



かさなるシルエット。



金色こんじき夕映ゆうばえの中、二人の影は溶けていった。


 

 

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