第15話 ソーニャ、万引きGメンにパクられる

 私は万引きGメン冴島さえじま。29歳。

 警備会社に勤め、今まで1000人以上の万引き犯を捕まえてきた。

万引きは卑劣な犯罪。それで潰れてしまう店もある。

 今日は万引き被害に悩む、このホームセンターに派遣された。

 店のため——そして愛する妻のため、今日も仕事を頑張ろう。 


 私は私服姿で、普通の客のフリをして、店内を巡回する。

 そして、挙動不審な客をマークする。

 客が商品をポケットなどに忍ばせ、未精算で外に出たら捕まえるのだ。

(むっ)

 外国人の女子高生に目をつける。制服姿で銀髪。天使のように美しいが……

 とにかく挙動が怪しいのだ。

 他の客と目が合うと、慌ててそらす。時折うつむいて、モジモジする。

 そして何故か——やたらと、調理器具売り場にある漏斗ろうと(※お椀型の容器の底の穴に、くだをつけたもの。ビンに液体を入れる時などに使う)を見ている。

(女子高生が、漏斗ろうとなんか買うだろうか?)

 これまでの経験では……興味がない商品を意味もなく見るのは、万引き犯がよくやるカムフラージュだ。警戒を強める。

(むっ)

 少女が、商品棚に手を伸ばしたあと——

 手を素早く服の中に入れ、ゴソゴソする。商品を入れたか!

 そして……少女は何も買うことなく、未精算で外に出た。

(確保する!)

 小走りになり、少女の前に立ち塞がる。

「私はこの店の者だ。ちょっと来てくれ」

「ハイ??」

 ホームセンターへ裏口から入り、誰も居ない事務室へ連れていく。

 少女をパイプ椅子に座らせ、告げた。

「私は、万引きGメンだ」

「万引きGメン! あの……!」

 少女は驚いた様子。

 そして……とても悲しげにうつむき、唇をかみしめる。万引きの疑いが一層強まる。

「何故ここに連れてこられたか、わかるね?」

「ハイ……」

「では中に入れたものを、出しなさい」

「い、いやデス! どうしてッ!」

 少女が、激しく首を横に振る。

(間違いない。絶対に万引きしている!)

 私は、脅すように告げた。

「君は制服を着ているな。留学生か? 滞在先の人に電話して、来てもらおうか?」

「だ——大助は呼ばないでくだサイ! お願いデスからッ!!」

 あおい瞳に涙を浮かべる少女。後悔するなら、万引きなどしなければいいのだ。

「わかりまシタ。出しマス……」

 少女は立ち上がり、パンツに手を突っ込む……パンツ?

 そしてピンク色の、小さな卵形の物体を取り出した。

 私はそれを、唖然あぜんとして見つめ、

「こ、これは一体……」

「おま●こに入れてた、ピンクローターです」

「はぁ!?」

 度肝を抜かれつつ、 

「こんなもん、商品にあったか!? 普通のホームセンターだぞ!?」

「いえ、これは私物デス」

「な!? では何故、私に見せる?」

 少女は首をかしげて、

「だって貴方『中に入れた物を出しなさい』と言ったので……私てっきり、『おま●この中に入れた物を出しなさい』という意味かと」

 普通、そう受け取るか?

 目眩めまいがしてきた。

「き、君は何故、そんなモノを入れてるんだ?」

「凌辱に備えた特訓デス。ピンクローターを挿入そうにゅうされたまま、日常生活を送らされるのは定番デスから」

(どういう事!?)

 百歩譲って『凌辱されてる』ならわかるが、『凌辱に備えた特訓』って何!?

 私はピンクローターをゆびさし、

「これは、もういい。しまいなさい……いや、また挿入しろと言うのではなく……」

 パンツに手を突っ込む少女を、慌てて止める。

 激しく混乱してきた。だが……

(怪しい挙動をしていたのは、間違いないのだ。落ち着いて質問しよう)

 ふう、と深呼吸したあと、尋ねる。

「君は、万引きしたのだろう?」

「してまセン」

 少女はキッパリ言う。

 そして、睨みつけてきた。

「ですが……貴方にとっては、私が万引きをしたかどうかは、どうでもいいのでショウ?」

(? 妙なことを言うな)

 戸惑う私。

 だがこれまで、幾多の万引き犯と対話してきた。

 言い訳も、逆ギレもされた……その全てを論破してきたのだ。

 こんな少女に、言い負かされるはずはない。

「どういう意味だね? 『したかどうかは、どうでもいい』とは」

「万引きの証拠をでっちあげられ、私を犯人にされたら終わりという事デス」

「ふっ、そんな事をして、私に何のメリットがあるというのだね」

 鼻で笑う私に、少女は言った。

「私を脅迫し……肉便器にするコトです」

「は!?」

 現実で、始めて聞く単語だ。

 絶句していると、少女が更に奇怪きかいな事を言う。

「凌辱大国ニッポン。その真の姿を描いたドキュメンタリー、エロゲー。そこでは『万引きの疑いをかけられたヒロインは、Gメンにレイプされる』とありまシタから」

 エロゲーは、むかし何本かしたことある。

 そういうシチュも確かにあるけど……なぜエロゲーがドキュメンタリーなのだ? 凌辱大国ニッポンってなんだ?

 私は、頭の中をグルグルさせながら、

「そ、そういえば……君はさっき『大助』という人を呼ぶのを強く拒否したな。なぜだ?」

「貴方の肉便器にちた姿を、愛する人に見せたくないからデス」

「だから、そんな事せんわ!!」

 まるで怪物と会話しているようだ。

(だめだ。完全にペースを乱されている)

 何度も深呼吸する。

(ここは、いったん……万引きと関係ない会話をしてみよう)

 相手がボロを出して、ペースを取り戻せる事がよくあるのだ。

 私は懸命に笑顔を作り、

「どころで君、店内で、熱心に漏斗ろうとを見ていたね。なぜだい?」

「購入を検討していまシタ。『ロート精液』された時の練習のために」

「ロ……ロート精液??」

 ペースを戻すどころか、さらに乱された。

 少女は「知らないのデスか?」と首をかしげ、

「まんぐり返しの状態で、膣内ちつないに漏斗を挿入され、それを利用して多人数から精液を流しこまれる事に決まってるでショウ?」

「一般常識みたく言うなよ!?」

 私は顔を覆い、うずくまった。

 この子は……一体なんだ!?

(理解の範疇はんちゅうを超えている!! あとマジで『された時の練習』って何だ!?)

 万引きGメンとしての自信が、ガラガラと崩れていく。 

 だがこのままでは、ラチがあかない。

 私はホームセンターの女性従業員を呼び、この子のボディチェックをしてもらうことにした。


 そして……

 事務室の外で、待つこと10分。

 少女のボディチェックを終えた女性従業員が、出てきた。

「どうだ、服の中に何かあっただろう」

「はい」

 おお! と勢いづく私に、女性従業員は死んだ目で、

「ブ、ブラの中に、両乳首へ接着したピンクローターが……彼女いわく『凌辱に備えた練習で、付けてマス。店内では、蒸れてムズムズしたのできまシタ」とのことです」

 私は、くずおれた。 



 私は少女に土下座した。

「濡れぎぬを着せて、たいへん申し訳ない!!」

 いま考えると……店での挙動不審さは全て、乳首と膣内ちつないのピンクローターのせいだったのだろう。

「いえ、私もまぎらわしい動きをしまシタ。だから、お気になさらず」

 そう言いながら、帰る準備をしている。

 本当に気にしていないようだ……奇怪きかいすぎる性格だが、優しい子なのだろう。

「ですが、これからは気をつけてくだサイ」

「え?」

「他のお客さんにも、私のように凌辱に備えて、ピンクローターを胸やおま●こに付ける人がいるかも知れまセン」

「なるほど……! 勉強になったよ!!」

 苦い失敗をしたが、万引きGメンとして成長できた。

 これからは店内で怪しい女性客がいても『胸やおま●こにピンクローターを付けてるかもしれない』と思うことにしよう。

 



後書き:モチベーションにつながるので、

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