第14話 ソーニャ、ツイッターで啓蒙する

 休日の自宅。

 ソーニャに、こんな事を言われた。

「大助、私、ツイッターを始めようと思うのデスが」

「ふうん。留学やホームステイについてツイートをするのか?」

 いえ、とソーニャは首を振り、

「『日本は肉便器育成国家』ということを、皆に伝え、対策をとってもらうためのツイートをしたいのデス」

 コイツは、今日も通常運転だな。

 ソーニャが、スマホのカメラを己に向けながら、

「ではプロフィール画像用の、写真を撮りマス」

「いや、顔出しはやめようよ」

 ソーニャみたいな超美人が『肉便器国家』とかいう妄言吐いてたら、絶対バズる。悪い意味で。

 ソーニャは「ふむ」と少し考えたあと、

「では大助、チ●ポを勃起させて出し、仁王立ちしてくれまセンか?」

「ん?」

 怪訝けげんに思ったものの、僕は立ち上がってズボンとパンツを脱ぎ、勃起させる(魅力的すぎるソーニャがいるので簡単だ)。

 そしてソーニャがピースして、僕の勃起チ●ポごしに、スマホで自撮りする。

 写真を見せてもらうと……

「どうデス? 目元がチ●ポで隠れてるから、私だとわからないでショウ?」

「確かに」

 僕は頷く。

「……って、これ『目隠し竿ざお』じゃねーか!!」

 多分、世界一下品なノリツッコミをする。

 慌ててチ●ポをしまう。くそ、包茎だから、手術するまでソーニャに見せたくなかったのに。

 ちなみに目隠し竿とは、勃起チ●ポで女性の両目を隠す事だ。『寝取られモノ』などで、散見さんけんされる表現である。

(僕としたことが)

 反省していると、ソーニャがスマホを素早く操作しはじめた。

 画面をのぞくと……

 さっきの『目隠し竿』がプロフィール画像の、ツイッターアカウントができている。

「おぉい!? その画像使ったの!?」

「ハイ……えへへ。大助と私の、ツーショットですネ」

 頬を染めるソーニャ。これってツーショットに含まれるのか?

(でもまあ、ハンドルネームは偽名だし、目隠し竿のおかげで、身バレする心配はなさそうだし……)

 少し、やりたいようにやらせてみるか。

 ソーニャは操作を再開した。

「ええと、とりあえず友達と繋がりマスか。まず剣崎さんをフォローしマス」

 剣崎さんは一コ上の、剣道部員だ。僕の幼なじみ、皇琴葉すめらぎことはの親友である。

 以前ソーニャが『剣崎さんは凌辱された時、おま●こに竹刀を挿入されるに違いない』と危惧し、竹刀を消毒した。それで剣崎さんと仲良くなったのである。人のえにしの不思議さを感じずにはいられない。

「あれっ」

 ソーニャが悲しげな声をあげ、

「剣崎さんをフォローしたら、速攻でブロックされまシタ」

「まあ、目隠し竿のヤツがフォローしてきたら、そうなるわ」

 しかもソーニャ、偽名を使ってるしな。

「でも大助……琴葉ことはをフォローしたらDMダイレクトメールがきて『貴方ソーニャでしょう? 大助君のチ●ポで目隠し竿しちゃダメでしょ!』と怒られまシタよ?」

「僕のチ●ポだとわかるのかよ!」

 さすが幼なじみだな。いや幼なじみだからという問題でもないが。

 ソーニャは張り切って、

「よーし、ではそろそろ、日本が肉便器育成国家であるという真実、そして凌辱対策を、伝えまショウ!」

 それから、妄言ツイートが始まった。


 日本が肉便器育成国家であること、

 凌辱に備えるべきであること、

 そのための練習に使う、疑似ザーメンのレシピなどが書かれる。


 ここまでは予想の範囲内だったが、僕にとって初見の情報が入ったツイートもある。


『鼻ザーに備えましょう

 鼻ザーとは、口に注がれたザーメンが鼻から漏れる事。飲みきれずにせた時、起こります

 以前、私は試しに、口に含んだ疑似ザーメンを鼻から出してみましたが、ツンとして凄く痛かった

 ですが、鼻うがいを日課にしてから、痛くなくなりました

 鼻ザーへの準備に、鼻うがい。おすすめです』


睡姦すいかんに備えるのです

 睡姦とは、眠ってる時に襲われることです

 凌辱するヤツは、こっちの反応はお構いなしなので、ろくに濡れてない間に挿入されます

 そのために、秘部にローションを塗ってから眠ることを習慣にしましょう

 睡姦されても、秘部のダメージを軽減できます」


 さすがのキ●ガイっぷりだ。

「フウ……ひとまず、こんな所でショウか。ちょっとお手洗いに行きマス」

 ソーニャがスマホを置いて、部屋を出て行った。

 画面を見てみると……

(うお、結構リツイートされてるな)

 ソーニャのツイートに、こんな書き込みもされている。


『肉便器育成国家という事実を知り、戦慄しています!』『これからは、アソコにローションつけて寝ます!』


(ノリがいい奴らがいるな。炎上するより、ずっとマシだけど)

 そんな事を思っていると……

 ソーニャが戻ってきた。書き込みを見て、涙ぐむ。

「あぁ……! 私の警告が皆に伝わっていマス! みんな是非ぜひ、凌辱された時に備えて、特訓してくだサイ!」

 何度も何度も思うが、そもそも凌辱自体されないようにしろよ。まあ、そういう天然な所も可愛いんだけど。

 喜びのあまり、踊りはじめるソーニャ。

 だが……

 急にピタッと動きを止め、顔面蒼白になって画面を見る。

「だ、大助、私のアカウントが凍結されまシタ!」

 あー、ツイッター社にBANバンされたな。

(まあ、あれ程、公序良俗に反したこと書いてれば……)

「くっ……凌辱大国ニッポンめ! 国を変えようとする私のこころざしを、潰そうとするのデスね!」

 国のせいにしちゃったかー。

「ううぅ、大助ぇ〜……」

 ソーニャが僕にすがり付いてきて、嗚咽する。

 キ●ガイに理屈を説いても仕方ないので、優しく背中を撫でた。

 しばらくそうしていると……ふとスマホ画面を見たソーニャが、

「だ、大助、見てくだサイ!」

「ん?」

「私のツイートがTogetterトゥギャッターに、まとめられてマス!」

 Togetterトゥギャッターは、ツイートをまとめるサービスだ。

 ソーニャのツイートが、あまりに常軌を逸していたので、面白がってまとめた人がいるのだろう。

 ソーニャは嬉し涙を流す。晴れ晴れした笑顔で、

「私の志は、潰されまシタ。でもこうして、語り継いでくれる人がいるのデスね……! 私のツイートは、無駄ではなかった!」

(いや、これ以上ないほど無駄だと思う)

 心の中で突っ込みつつも、ソーニャの笑顔がクソ可愛いので惚れ直すのだった。





後書き:モチベーションにつながるので、

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