番外編 ソーニャの過去(後編)

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 私は祖国に戻ってから、日本でできた友人――

 特にダイスケについて考える事が、多くなりました。

 私を遊びに誘ってくれた事、桜の木の下を歩いた事、そしてエロゲーのチラシを見ていたときの笑顔。かけがえのない思い出です。

 思いが募るあまり、私はパパに言いました。

「パパ、ワタシ、日本に留学したいデス」

「オー、バッド……!」

 パパは天を仰ぎました。

 金銭面では問題ないはずです。私の家は先祖からの遺産が結構ありますから。現にパパは無職になってから、毎日大麻を吸って書斎にこもってますし。

「一人暮らし寂しいデス……あと大麻の準備するの、めんどいデース……」

 パパが何かブツブツ行っていますが、よく聞こえません。

 そしてパパは、しばらく何かを考えたあと……

 書斎へ私を連れていきます。昼間ですが、カーテンを閉め切っているため暗いです。

「ソーニャ、これから貴方に、日本の真の姿を教えマース」

「真の姿? 観光した時は、街は綺麗で、人々も親切で……」

「それは偽りの姿デス。これを見なサイ」

 パパはPCを起動。

 そして『凌辱エロゲー』を立ち上げました。実際にプレイ画面を見るのは、始めてです。

 ――それは、狂気の世界でした。

 高校生くらいのアニメ絵の美少女たちが、服をひんむかれ、裸の男達に凄いことをされているのです。


「んほぉおおおおおおおおお!?」「イグウウウウウ!?」「おしり掘られてチンポみるく流しこまれるぅうううう!!」


 ガクガク震える私。

 パパは真剣きわまりない口調で、

「これは凌辱大国ニッポン――その真の姿をゲームで表した、ドキュメンタリーなのでーす」

「ええっ!」

「日本で訪れた『エロゲアイランド』は、それに反抗するレジスタンス。私は情報を受け取り、海外へ発信する協力者なのデース」

 なんと!!

 パパのことを、大麻吸ってひきこもる人間失格クソニートと思っていましたが、そんな崇高すうこうな使命があったとは。

 パパがディスプレイを指さし、

「いいですかソーニャ。この画面の子たちのように、性のけ口になる子を、肉便器といいマース」

「ニクベンキ」

「恐ろしいことに……日本の高校は全て、肉便器を育成するための機関なのでーす……!」

「神よ!!」

 私は戦慄し、膝をつきました。

 あの優しいコトネエも、もう少し成長したら肉便器となって「おしり掘られてチンポみるく流しこまれるぅうううう!!」とか白目をいて叫ぶのでしょうか。

(それに、私もダイスケを追って日本に行ったら、そんな風に……)

 恐怖に震えていると。

 PCの画面が「イクぅぅうううう!!」というボイスとともに白く輝きました。

 光がおさまると……画面の女の子の身体が、白濁した液体まみれになっています。

「パパ、いま画面が光りました! なぜデス?」

「人は射精すると、世界が光に包まれる。それを表現しているのデース」

「なんと!」

「学校では教えないが、昼間が明るいのは、世界中で誰かが交代交代で射精してるからなのデース」

 またしても、衝撃の事実。

 呆然と立ちつくす私の肩に、パパが手を置きます。そして優しく言いました。

「わかりましたか? ソーニャ、凌辱大国ニッポンに行くなど、肉便器になりにいくようなモノ。だから、やめ……」

 私は首を、横に振ります。

「いえ、私――射精の話を聞いて、決意が固まりまシタ」

「へ?」

「ダイスケと私は、遠く離ればなれと思ったケド……」

 カーテンをあけ、明るい空を見あげます。

「彼の射精が、毎日、遠い国にいる私を照らしてくれていたのデスね」

 今頃はコトネエに射精管理されているはずだから、一日三回。

 射精を通して――ダイスケと私は、遠い空の下で繋がっている。

「そう考えると、勇気が湧いてくるのデス」

「……あなた私に隠れて、大麻吸いまシタか?」

 パパはよくわからない事を言いました。



 それから私は、凌辱エロゲーを沢山しました。

 凌辱大国ニッポンの現実を知るため――

 そして凌辱対策を立てて、ダイスケのもとへ行くためです。凌辱に屈しないため、どうすればいいか……

 ある日、輪姦エロゲーをしているときに、ひらめきました。

(そうか! 凌辱を早く終わらせるため――両手で同時にチ●ポをしごけばいいんデス!)

 さっそく母が残していったピアノで、両手を器用に動かす練習を始めました。結果的に欧州一のピアニストになりましたが、ささいなことです。

 他にも沢山の凌辱対策をしました。

 フェ●チオの時に喋るため、腹話術を習得したり。

 大量の水溶き片栗粉で、ザーメンを飲む練習をしたり……くじけそうな時もありましたが、恋は乙女を強くするのデス。

 のちにダイスケから『そもそも凌辱されない特訓しろよ』と言われた時は、目からウロコが堕ちましたケド。私ったらドジ!

 あと、もちろん日本語の勉強もしました。そして――

 高一の春。ついに私は日本へ留学します。

 ホームステイ先がダイスケの家になったのにも理由があるのですが、話すのは、またの機会にしまショウ。

 身体の成長にしたがい、私は日光にも耐えられるようになり、フードなしで、ダイスケやコトネエと会えました。

 ですが二人は、私が『昔会った子』と気づきまセンでした。

 そういえば数年前、ソーニャという名前を教え忘れました。それに私は身長も胸も別人のように大きくなりましたし。いつか昔会った事を教えて、びっくりさせマス。

 そして、ホームステイを始めて三日目。

「ラララ、ラララ~」

 ダイスケの家で夕食を作る私。幸せすぎて歌ってしまいマス。まるで新妻のようではないデスか!

 食卓についたダイスケに、夕食を出します。

 メニューはご飯、そして……

「【オカズ】は、私の脱ぎたてパンツデス」

 ダイスケは「へ?」と目を丸くし、皿に丁寧に盛り付けたパンツを見ました。

「このパンツで、いくらでもご飯を食べてくだサイ」

「こんなもんで、メシ食えるかぁ!」

 オー! コレが亭主関白!

 でもダイスケに怒られるの、ゾクゾクします。恋は盲目!

 ……ところでダイスケは、私のパンツが【オカズ】ではダメなのでしょうか。おかしいですね。以前コトネエが『私のパンツを【オカズ】にして』と言っていたのに。

 むむむ。コトネエのは食べられて、私のはダメですか? ジェラシー!

 恋する乙女として、負けられまセン。

「わかりまシタ」

 私はシャツの中に手を突っ込み、ブラジャーを取ってパンツの横に添えました。

「これも【オカズ】にシマス」

「……」

 ダイスケは、一分ほど沈黙したあと……

「ちょっと、じっくりお話ししよう、ソーニャ?」

 オー! ダイスケとお話! 私は忠犬のごとく、彼の向かいに座ります。

「あのねソーニャ。そもそもパンツが食えるわけが……」

 ああ、ダイスケ素敵です。頭がぼーっとして、言葉が耳に入ってきまセン。

 私はあなたと結ばれるため、この狂気に満ちた国・凌辱大国ニッポンへやってきまシタ。

 どんなに凌辱されようと、肉便器にされようと、今まで磨いた凌辱対策のスキルで乗り切り……

 そしていつか、あなたとハッピーエンドを迎えてみせマス!








後書き:モチベーションにつながるので、

面白かったら作品の目次ページの、レビュー欄から

☆、レビュー等での評価お願いいたします


あと、ファミ通文庫から発売中のラノベ

『朝日奈さんクエスト〜センパイ、私を一つだけ褒めてみてください〜』

原作を担当した漫画

『香好さんはかぎまわる』

も、よろしくお願いします




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