可愛い妹が血管フェチでプニプニと腕を触ってきます

しゆの

第1話

「はあ~、そろそろ寝るか」


 時刻は二十二時、大久保颯大おおくぼそうたはリビングで盛大な欠伸をした。

 明日は学校があるため、眠いならそろそろ寝た方がいいだろう。


「兄さん、もう寝るのですか?」


 一つ下の妹である鈴音すずねもリビングにおり、先ほどまで一緒にテレビを観ていた。

 既にお風呂に入っているからワンピースタイプのパジャマを着ていて、ゴールデンウィークが終わって気温が高くなっているからか、丈は短いし胸元まで見えている。

 今年の四月から両親が長期出張で家にはいなく、見られる相手が颯大だけということで、こういった露出度の高いパジャマを着ているのだろう。

 家族相手なら気を使わなくて済むのだから。


「ああ。欠伸が止まらん」


 再び颯大は欠伸をする。


「鈴音も早く寝ろよ。夜更かしは美容の敵だろ」

「ちゃんとケアしてるから大丈夫ですよー」


 悪戯っぽい笑みを浮かべた鈴音は、べーっと舌を出した。

 実際にきちんと手入れはしているようで、鈴音はかなりの美少女だ。

 サラサラとした亜麻色の腰まで伸びた髪、パッチリとした藍色の大きな瞳、潤いのある桃色の唇、透き通るような白い肌は誰もが見惚れてしまうだろう。

 高校に入学して一ヶ月ほどしか立っていないが、鈴音は数人の男子から告白されたとのこと。全て断っていたが。


「前々から思ってましたが、兄さんの腕は血管が浮き出ますよね」

「ん? そうだな。あんまり気にしてないけど」


 昔からの体質らしく、颯大の腕は血管が浮き出る時がある。

 それに比べて鈴音の腕には血管が浮き出ることはなく、シミ一つない肌はとても綺麗だ。


「兄さんのはハンドベインと呼ばれるものです。本来は老化で起こったりしますが、兄さんのは遺伝ですね」


 初めて聞く言葉で、颯大はスマホを使って調べてみる。

 ハンドベインとは、手の甲や腕の血管が浮き出て、視覚的に目立つ状態のこと。

 老化、生活習慣、遺伝が原因で、高校生の颯大に老化は考えられないのでほぼ確実に遺伝だ。

 生活習慣に関しても鈴音が料理を作ってくれてちゃんとしてるため、それも考えにくい。

 遺伝が原因なのに何故鈴音にはなくて颯大だけに出ているのかというと、二人は血の繋がった兄妹ではないから。

 颯大が小学生の時に施設にいた鈴音が大久保家に養女としてやってきて、それから二人は義理の兄妹になった。

 ただ、義理というのがあるのか、鈴音はずっと丁寧な言葉遣いだ。

 他の人にもそうで、鈴音がタメ口で話すとこを見たことがない。

 昔はよそよそしかったが、今では慣れていて颯大には気さくに話しかけてくれる。


「それにしてもよくハンドベインなんて言葉知ってたな」


 普通の高校生はほとんど知らないことだろう。


「そ、それは、私が見た目に気を使っているからです。女の子が血管浮き出るなんて嫌でしょう」


 確かにそうだが、何やら言い訳のようにも聞こえる。

 少し頬を赤くしており、焦っているようにも感じてしまう。

 しかも視線が颯大の腕に集中している。


「まあ、何でもいいけど。俺は寝る。おやすみ」

「お、おやすみなさい」


 颯大は自室に行き、すぐに熟睡するのであった。


☆ ☆ ☆


「お邪魔しまーす」


 小声でそう呟きなが、颯大の部屋に入ってくる一人の少女。

 現在の時刻は二十三時で、ベッドには颯大が熟睡している。

 この部屋に入ってくるのは颯大以外には鈴音しかおらず、本人には内緒で入ってきた。

 妹が兄の部屋に入るのはあることだが、基本的に本人が寝てる時に入る人は少ないだろう。


「それじゃあ、始めますから、兄さんは起きないでくださいね」


 兄が起きないことを願いながら、鈴音はベッドの中に入っていく。

 そして鈴音は颯大が着ているパジャマの袖を捲り上げる。

 チラッと颯大のことを見てみるとまだ起きておらず、鈴音はホッと一安心。


「はあぁぁ……兄さんの血管……」


 頬を赤らめて少し息も荒くなり、鈴音は颯大の腕に浮き出た血管をプニプニと指で触っている。

 鈴音は重度の血管フェチで、ずっと颯大の血管を触りたいと思っていた。

 今までは我慢していたが、先ほど颯大の血管を見て無性に触りたくなってしまったのだ。

 ハンドベインという言葉を鈴音が知っていたのは、血管が好きだから。

 血管について色々調べ、鈴音は高校生ではあり得ないくらいに詳しくなった。


「兄さんが私にそんな腕を見れるのが悪いんですよ」


 もう鈴音理は理性という言葉を忘れ、己の欲望の限り颯大の腕にある血管を触っていく。

 颯大の血管はとても柔らかくて、鈴音には気持ち良さしかない。

 今の鈴音には颯大が起きるかもしれないと考えることもなくななっていた。


☆ ☆ ☆


(何が起こっているんだ?)


 熟睡していた颯大だが、違和感を感じて起きてみると、鈴音が腕を触っているのだ。

 まさかの行動に驚いてしまい、颯大はどうしていいかわからない。

 このまま寝たフリをしていればいいのか起きた方がいいのか迷う。

 しかも血管を触ることに集中しているらしく、鈴音は颯大とかなり密着している。

 それにより二つの柔らかい物が背中に当たり、いくら相手が妹でも颯大は理性を抑えるので精一杯だ。


「兄さんの血管好きです。もっと、もっと……」


 寝る前のこともあるし、この行動により鈴音が血管フェチだということを颯大は実感した。

 血管が好きというのはだいぶマニアックであるが、いたとしても不思議ではない。

 実際に鈴音がそうだし、他にも少なからずいるだろう。


 どうしようか考えていたことろ、鈴音は颯大の思ってもいなかった行動を起こした。

 何を思ってたのか、鈴音は颯大の服の中に手を入れて胸に手を当ててきたのだ。


「兄さんの心臓の鼓動が直接……ヤバいです」


 血管だけでは我慢出来なくなったようで、一番鼓動を感じられる胸を触ってきた。

 さらに密着する形になり、颯大の鼓動が大きくなってしまう。


「え? まさか……」


 流石に寝ている時に脈が早くなるのにおかしいと気づいたらしく、鈴音が反応した。


「何……やってんの?」


 流石にバレていると思い、起きたフリをするのを止めて鈴音に問いかける。


「あ、あ、あ……きゃああぁぁぁぁ」


 夜中に出すようなものではない大きな悲鳴を上げ、鈴音はその場から勢いよく離れた。

 悲鳴をあげたいのは颯大の方だが、今はそれどころではない。


「テンパってないで落ち着け」

「だって、だって……兄さんにバレて……あうぅぅ~……」


 鈴音は耳まで真っ赤に染め、相当恥ずかしいようだ。

 自分の性癖がバレてしまったのだし、恥ずかしがってもおかしくはないだろう。

 あたふたと鈴音は慌てており、しばらく落ち着きそうにない。


「だから落ち着け」

「あ……」


 このままじゃらちが明かないので、颯大は鈴音のことを抱き締める。

 それにより颯大の鼓動が感じられたのか、一瞬にして鈴音は落ち着きを取り戻す。

 鼓動をさらに感じたいらしく、鈴音は颯大の胸に自分の耳を当てる。


「落ち着いたか?」

「はい」


 返事をしたから離れようとした颯大であるが、鈴音がしっかりと抱きついてきて離れることが出来なかった。

 もっと感じていたいのだろう。


「このままでいいか。鈴音は血管フェチなのか?」

「そう……ですね」


 妹が血管フェチという珍しい性癖で、颯大に嫌われたと思ったのか、鈴音は悲しそうに頷く。


「あの……嫌ではないですか?」

「何で?」

「だって……妹が血管フェチなんですよ。しかも兄に求めてしまいました。嫌われても仕方ないです」


 綺麗な瞳から涙が溢れてくる。

 嫌われるのが嫌ならやらなければいいのだが、鈴音には我慢ならなかったようだ。

 それほどまでに颯大の血管は魅力的に映ったのだろう。


「嫌うわけないだろ。鈴音は俺の妹なんだから」


 家族をそう簡単に嫌うことは出来ない……ましては鈴音なら尚更だ。


「本当ですか?」

「もちろん。なんなら俺はシスコンと言ってもいいくらいに鈴音が好きだ」

「好っ──」


 いきなりの告白に、再度鈴音の頬が赤くなる。

 好きなんて言葉は鈴音にとって言われ慣れているはずだが、颯大から言ったのは初めてのこと。

 だから恥ずかしいのだろう。


「だから触りたくなったら好きなだけ触っていいから」

「兄さん、ありがとうございます。私も大好きですよ」


 完全に言葉足らずで、兄さんの血管が大好きという意味だろう。


「では早速……」


 鈴音は颯大の血管を触り始める。

 漫画だったら間違いなくプニプニという効果音が出てるだろう。

 ひたすら血管をプニプニプニプニ触り、いつまでたっても止める気配がない。


「俺はそろそろ寝たいんだけど……」

「ダメです。好きなだけ触っていいと言ったのですから、朝まで触り続けます」

「マジか……」


 こう言った以上、鈴音は絶対に朝まで触っているだろう。


「じゃあ、俺は膝枕を所望する」

「膝枕……ですか?」


 また漫画に出てきそうな効果音……カァッと鈴音の頬が紅潮していく。


「ワンピースの丈短いですし」


 膝枕をしたら服が捲れて中が見えてしまう恐れがある。


「鈴音は俺の胸を触ったし」

「それはそうですが……」

「決定事項だからやる」


 ここに座れと颯大が手招きすると、観念したのか鈴音は大人しくベッドに座った。

 そして颯大は太ももにあるワンピースの丈をめくり、そのまま頭を乗せる。


「な、何で捲り上げるんですか?」

「だって生足がいいし」


 シミ一つないし、細くても柔らかい太もも……病みつきになってしまいそうだ。

 恥ずかしくて顔を真っ赤にさせている鈴音であるが、それでも血管を触るのを止めることはない。


「好きな時に触らせてあげるんだし、これくらいは我慢しろ」

「うう~……わかりましたよ」


 もう諦めたらしく、鈴音は大人しくこのまま膝枕をされるのだった。

 恥ずかしくても血管を触り続けていたいようだ。


「てか、何で血管フェチになったの?」


 こうなったのには何か理由があるだろう。


「それは……前に採血してもらった時があったんですけど、その時に看護師さんが私の血管をプニプニしてまして……」


 採血の時は看護師は血管を探すために腕を触る。


「何か変な感じがして私も触ったんですが、気持ちよくて血管フェチになっちゃいました」

「そうなのか?」

「はい。今まで沢山の人の腕を見てきましたが、兄さんのは特に良いです」


 だから寝ている颯大のとこに忍びこんで血管を触りに来たのだろう。


「だからって他の人のは触ったりしてませんよ。触ったのは兄さんのが初めてです」

「そうか」

「あ……」


 触れていない方の手で、颯大は鈴音の手を握る。

 自然と指が絡み合うように手を繋ぎ、まるで恋人同士がイチャイチャしているようだ。

 だけど、この時間が嬉しく、颯大は自然と笑みがこぼれてしまう。


「私……兄さんのことが大好きです」

「……え?」


 突然の告白に、颯大は目を見開いて驚く。

 でも、鈴音はそんなこと気にせずに言葉を続ける。


「最初は兄さんの血管良いなあって思っていただけなんですけど、ずっと見ている内に兄さんのことが好きになっちゃいました」

「鈴音……」

「義理とはいえ兄妹なのに変ですよね……でも、兄さんの血管を触っている内に告白したい衝動に駆られてしまいました」


 どう見ても冗談で言っているようには思えない。

 真剣な瞳を颯大に向け、鈴音は本気だと言うことをアピールする。


「鈴音……兄妹でも義理だったら結婚出来るんだよ」

「兄さん、それって……」

「俺も鈴音のことが好きだ」


 こんな可愛い妹が出来て意識しないのは無理な話で、颯大は鈴音のことを好きになっていた。

 女の子から告白させたのはなさけないが、それでも颯大の気持ちが変わることはない。


「だから俺の彼女になってくれ」

「はい。なります」


 最愛の兄と恋人になりて嬉しいのか、鈴音はこれ以上ないくらいの笑みを浮かべる。

 とても可愛く、自然と颯大も笑顔に。


「兄さん……」


 何かを期待するかのように、鈴音の瞳が閉じられた。

 もちろん何をすればいいか颯大はわかり、起き上がってゆっくりと鈴音の顔に自身の顔を近づけていく。


「んん……」


 お互いの唇が触れ合い、二人は産まれて初めてのキスをしたのだった。

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