第10話
というわけで、残りはあと三人。
「イリー様の『前世の記憶』に出てくるのは、私以外はどなたですか?」
「えっと……ルータスの次は、セロ王子かな……」
「セロ王子殿下。なるほど……隣国ムーオの第二王子ですね」
「うん」
褐色の肌に銀色の髪と赤い瞳をもつ、隣国の第二王子だ。
異国情緒のある素敵なイケメンだった。
「セロ王子殿下は、現在はこの国にいないはずですが」
「うん。でも、もうすこししたら、この国に留学に来るみたいなの」
「それは……そうですね。ありえる話です」
「それで、セロ王子と出会って、私は親交を深めるみたい」
隣国ムーオから留学にきた第二王子。
同年代の私と自然と交流を深めていくのだろう。
「成人の儀に来てくれるんだと思う」
「そうですか。……もしかしたら、陛下に謁見した際、そのことを伝えられる可能性がありますね」
ルータスが私の言葉を聞き、ふむと考えこむ。
これから私は国王と会うわけだが、そのときにセロ王子のことを教えられるかもしれない。
「イリー様が隣国の王子であるセロ王子と交友を持つことはいいことかもしれません。【春の力】を持つ王女として、隣国と良い関係を築くことは、国内にも国外にもイリー様の印象をつけることができます」
「うん。これまでは、離宮に引きこもってたけど、これからは外に出ないといけないもんね」
離宮の引きこもり王女は終了である。
成人し、王女としての責務も、【春の力】をもつ者としての活動もしていかねばならない。
「それでね……あの、怒らないで、聞いてほしいんだけど」
おずおずと切り出す。
……これから伝えることは、きっとルータスにとってはいやなことだろうから。
でも、それを隠して、最終的にもつれてしまうのは避けたい。
なので、言うしか……ないのだ……!
「わ、私とセロ王子はね、その、あのね……っ」
頬に熱が集まってくる。
これは恥ずかしさだ。
ルータスは急かしたり、止めることはなく、私が言い出すのを待ってくれている。
……言うぞ!
「――恋に落ちるみたい!」
ひゃーっと頬に手を当てて、言い切る。
恥ずかしい。恥ずかしいけれど、ちゃんと伝えないといけない。
私がルータスに殺されるのを回避するには、ルータスにしっかりと話をすることが大切だと思うのだ。
だから、恥ずかしいことも、言いにくいことも全部伝える。
すると、ルータスは、にっこりと笑った。
「殺しましょう」
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