エピローグ
俺はルリカと共に辺境の周りに何もないところで暮らしていた。
ただ、襲われないように情報だけはしっかり仕入れるようにしていた。
俺の予想通り、国に関わった人物達はそのことごとくが処刑された。
それならば当然、俺も処刑されてもおかしくない。
だからこうして身を隠していたのだが――。
「なんで、お前がここにいる……。ブライト」
「いいだろ。お前が俺に指揮を押しつけたせいでこっちはいい迷惑を被っているのだから――」
俺の向かいに座っていたのはこの国のリーダーとなったブライトだった。
命を狙われている俺と席を同じくしていい人物では決してなかった。
しかも、堂々とくつろいでいる様子だった。
「元々こうするつもりだったからな。これなら俺の命も助かって、国も救われる。しかも、忙しい仕事を押しつけられて一石三丁だ」
「……なるほどな。ただ一つ間違っていることがあるぞ?」
「……ほう、どこが間違っているんだ?」
ブライトが不敵な笑みを浮かべてくる。
もしかして、今この場で俺の命を取るつもりなのだろうか?
懐にひそませている巻物にそっと手を掛ける。
すると、ブライトも同じように懐から一枚の紙を取り出してくる。
そして、それをそのまま俺へと差し出してくる。
「なんだ、これは?」
「読んでくれ――」
俺は出された手紙をそのまま読んでいく。
『クロウリッシュ・フォン・ヴァンダイム
先の大戦の功績をたたえ、執政官の地位を授ける。
ブライト』
それを見た瞬間に俺の動きは固まり、ゆっくりとブライトの顔を見る。
「おい、これはいったいどういうことだ?」
「どういうこともなにもそういうことだ。お前から誘ってきたのに、一人で勝手に辞めさせるとでも思ったのか?」
「しかし、俺は元貴族だぞ?」
「でも、息子だろう? 処刑したのは貴族たち本人だけだ。一族皆殺しにする理由なんてないからな」
「くっ……、し、しかし、元貴族がそんな権力のある地位につくなんて――」
「あぁ、皆を説得するのに時間がかかった。ただ、もうそれも終わった。あとはお前が戻ってくるだけだ――」
久々にブライトの笑みを見た気がする。
そして、俺の隣ではルリカが少しそわそわした様子を見せていた。
何か言いたそうだな……。
「ルリカはどう思う?」
「わ、私はぜひクロウリッシュ様には表舞台に戻っていただきたいな、と思います」
目を輝かせながらいってくるルリカを見て、俺は額に手を当ててため息を吐く。
ゆっくりした生活はしばらくあとになるか……。
「……わかった。その代わり、以前同様こき使うからな。覚悟しておけよ」
「おう、もちろんだ!」
「はい、よろしくおねがいします」
微笑む二人と共に俺はマントを羽織り、家の外へと出て行った――。
暗躍貴族の保身的救済 ~死にたくないので救国します!〜 空野進 @ikadamo
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