VS冒険者ギルド
順調にジークフリードが冒険者を口説いていっているようだ。
その報告は定期的に届いていた。
あとはいつ冒険者ギルドを攻め落とすか……。
やはり問題となるのはSランク冒険者。
一人はジークフリードに相手にしてもらうし、もう一人はドラゴンたちが相手をしてくれる。残り二人を誰に割り振るか……。
「ブライト。お前、Sランク冒険者の相手はできるか?」
「無茶言うな。俺なんか瞬殺されるぞ」
やはり、ダメか……。
反乱軍や魔女の森の人たち、あとは冒険者達の全員で当たれば、一人は何とかなるだろうか?
やはりあと一人か……。
「ブライト一人じゃなくて、俺とルリカも合わせて三人ならどうだ?」
「いや、それでも瞬殺されるだろうな。奴らをまともな人間を思うな」
「つまり、対ドラゴン用の罠を準備しておけば俺たちだけでも相手にできる――ということだな」
有利な場所へと誘い込む。
それを行えばかろうじて何とかなるだろう。
「……しかし、そんな罠にかかる相手じゃないだろう?」
「餌があればどうだ?」
「餌?」
「あぁ、俺がいるだろう? 反乱軍リーダーがいると知れば、追ってくるんじゃないのか?」
「そんなことをしたらアインが危ないだろう?」
「その程度の危険は承知の上だ」
「……わかった。アインの罠を信じよう。ただ、失敗したら全滅するぞ。そこだけは重々承知しておいてくれ」
「もちろんだ。細心の注意を払っておく」
ギルド強襲をする日までに考えが纏まれば良いが――。
◇
ジークフリードがAランク以下の大半の冒険者を説得したという話を聞いた。
一部は残るんじゃないかと思っていたが、想像以上の成果を出してくれた。
さて、あとは俺の仕事だな。
ジークフリードには決行日だけ伝え、俺はブライト達と集まる。
「ついにこの日がやってきた。冒険者ギルドに巣くう悪の目を摘み取る!」
「おぉー!」
「よし、では行動開始だ!」
反乱軍総出で冒険者ギルドの本部へと攻め込んでいく。
ただ、こちらの情報は筒抜けになっているであろうことを想定して――。
その予想通りにギルド本部の前には冒険者達が立ち塞がっていた。
そして、恰幅の良い男が前へと出てくる。
「くくくっ、やはり動いたか。反乱軍め。この冒険者ギルドを襲うなど片腹痛いわ」
「黙れ! お前たちがしてきた悪行の数々。もう見過ごせん。覚悟しろ!」
男に対して指をさしながら声を出す。
すると、男は更に笑い声を上げる。
「くくくっ、その程度の戦力でギルドに太刀打ちできると思っているのか? このギルドにはS~Eランクまでの冒険者がいるんだぞ」
「なら、抗ってみるか? お前ができるなら……だがな」
「よし、いけ、お前たち!」
俺の挑発にそのまま乗ってくる男。
冒険者に指示しているところを見ると、この男が本部のギルドマスターなのだろうか?
ただ、その指示と同時に男はジークフリードに捕まっていた。
「ぐっ、ジーク、一体何を!?」
「黙れ! 私腹を肥やす悪人め! 俺たちはもうお前にはついて行けない。ギルドを抜けて反乱軍に加えてもらうことにした」
「くっ、まさか他の冒険者達も――」
「あぁ、大半は俺が説得した。後残っているのは――」
すでに捉えた男には興味がないようで、その視線は腕を組み、どちらに付くわけでもない四人の男達へと向けられていた。
「ジークフリード、相変わらずお前は甘いやつだな。このSランク冒険者の面汚しめ!」
「何とでも言うと良い。俺はお前たちみたいに金で何でもするような真似はできない」
「冒険者なんだからな。金をもらうことが全てだろう?」
「違う、冒険者とは困った人を助けるものだ!」
「……まぁ、お前とは昔から意見があったことがないからな。ただ、俺の敵になるなら容赦なく倒させてもらう」
Sランク冒険者の一人が威圧を放ちながら剣を抜く。
すると、ジークフリードも剣を抜き、その瞬間に二人の姿が消えていた。
目に見えないだけで、かなりの速度で斬り合っているようだ。
予定通り俺たちが相手にするのは残り三人だな――。
◇
倒すべきSランク冒険者だか、目の前にするとやはりその迫力は人一倍だった。
視線だけで相手を怯ませてしまうその眼力。
隠しきれずに溢れる魔力。
間合いに入った瞬間に斬り殺されそうな雰囲気。
対面するだけで圧倒的な実力差がわかってしまう。
しかし、それでもなんとかするしかない。
早くなる鼓動を落ち着かせ、腕を組み平然と思わせる態度を取る。
そして、指示を出していく。
「冒険者たちよ! お前たちはなんとか一人抑え込め! その間にジークフリードが戻ってくる。ドラゴンたちよ! あのSランク冒険者はお前たちの敵の一人だ! 思う存分闘うと良い!」
「お、おぉー」
少し緊張した様子でSランク冒険者にあたる冒険者たち。
当然ながら実力差があるので、あっという間に吹き飛ばされる。
ただ、それでも数の差は圧倒的で一人は封じ込めることに成功する。
一方のドラゴンの方もその圧倒的な能力でSランク冒険者を一人、留めてくれていた。
ただ、これも危ういバランスの元で成り立っている。一つでも狂うと一瞬で反乱軍は瓦解する。
なんとか持ち堪えないとな。
覚悟を決めた後、俺は残っている一人に視線を向ける。
「くくくっ、俺の相手はお前たち……ということで良いのか? 俺も舐められたものだな。その程度の数で勝てると思ってるのか?」
「……そうだな。お前ごとに三人もいらなかったんだけどな」
「くっ、舐めやがって!」
かなり自分の力に自信を持っているようで、簡単に挑発に乗ってくる。
さて、次の手は……。
この冒険者を罠に嵌めるために動こうとしたその瞬間に一気に距離を詰められて、斬られそうになる。
しかし、それをブライトが受け止めてくれる。
「油断するな! こいつらは人外と言っただろう!」
「いや、ここでお前が止めてくれることも予想通りだ。更に――」
ルリカが既に長い詠唱を終えている。
「いけー、
ルリカの杖から巨大な火の玉が飛び出すと、冒険者の近くで爆ぜていた。
もちろんこれも躱されることが前提の攻撃だ。
ただ、この威力の攻撃を受けて、前に突っ込んでくることはできずに後ろに後退するはず。
ただ冒険者はニヤリと微笑むとルリカの魔法が飛んでくる中、まっすぐ前に進んでくる。
「くくくっ、所詮は机上の策だな。まさかここで俺が突っ込んでくるとは予測してないだろう?」
「はぁ……、そうだな。できればその予測は外れて欲しかった。それが一番の愚策だからな……」
「あぁ? なにを――ぐおっ!?」
冒険者はルリカの魔法をまともに受けて、吹き飛ばされる。
この程度の魔法なら耐えられる……というくらいの威力を放った上で、全力の魔法を放たせる。
最初の魔法が目眩しになって、次の一発が見えなくなっていたのだ。
そして、その攻撃を受けたあとにブライトが首元に斧を突きつけていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます