第5話

「どうしてだ?きちんと点検したのではないのか?」とコンクールに責任ある男が本部で部下らを並べて説教していた。頭ごなしに怒られ、不満げな部下ら。気概がある部下の一人が意見を言った。


 「ええ。ですが、人員不足です。そもそも、担当がまだ来ていないんです。僕らもその中で最善を尽くしたのですが見当たらないです。」


 「本来ならば始まる前に全て運ばれていなければいけないものを!!いつ気がついたんだ!?」と責任ある男が問いただす。


 「インターの高校が先陣を切るので英語を先に運びました。担当がいなく、皆それぞれの仕事で一杯でした。本部に戻ってきてまだ金庫が開けられていないのでまさかと思い、中をみるとびっしりつまったままでしたので、前半の歌う高校と課題を確認して運びました」青年係員のまっとうに仕事に向きあう姿勢に責任ある男もそれからは問いただす真似はしなかった。

青年は合鍵を使って金庫を開け運んだ。コンクールを始めるためにとった最善の行動。生徒らが舞台に立つ前にステージの所定の箇所に並べる。よって歌い手は発音し、エンジニアは音として聞き手に音の波として伝えることができる。英語26、かな文字50に同数のカタカナ文字に加え濁点二種類。本来の仕事を終え、運ばれていないのに気がついた係らが本部からステージへ一つ一つ運んだ。一番最初が英語26を利用するインターだったので先にアルファベット26個を運び、所定の位置へと並べる。


 一組目が歌っている最中にかな文字らをなんとか並べようとした。責任ある男は係らがきちんと運び、並べているのを確認し、あとは残らず同じ作業を繰り返すだけだったので、自分は運ぶ作業から抜けて全体の再確認に回っていた。ホウレンソウが行き届かなかったようだ。二組目の課題曲は日本語の合唱コンクールの定番ソングを見事な練習に練習を重ねたという出来栄え。三組目に馴染みある歌謡曲、観客の中にはもろに世代で、この曲と共に青春を過ごした人らはイントロを聞いて手を叩いて喜ぶ。

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