第二段 小島
白糸を少し下ると、すぐに小島という地区に入る。
この名前から察するに、この地の近くには昔、多くの小島があったのではないかと考えられる。
小島氏の一族が住んでいたという説もあるが、丘に登ればそのような考えは一切、吹き飛んでしまう。
それほどまでに、この地は海に近しく、しかし、高いのである。
さて、前段でもそうであったが、私にとっての小島は行政区分とは異なる。
むしろ、それよりもはるかに広い。
少なくとも、正覚寺の電停の辺りより山側は、白糸まで「小島」と考えている。
無論、その道路沿いに小島と名の付くバス停が続くことも理由の一つであるが、それ以上に、母校二つがそびえていることが大きい。
二つの山を見上げる小学校と、丘の上からそれを見下ろす中学校が、まるで二体の仁王像のように存在するのである。
そうなれば自然、私が外で過ごした期間の半分近くがこの周辺ということとなる。
ゆえに、私の「小島」は雄大なのである。
とはいえ、この地区は決して平らかな場所ではない。斜面都市長崎の土地として、階段と坂道によって覆われている。
そのため、この辺りには安い家賃の家が多く、慎ましやかな生活を送る人も多く住む。
これでは、雄大と言うことなどできないではないかと、怒られるかもしれない。
だが、長崎港から浜町を通って南へと行く場合、平地と市街の喧騒の後に押し寄せる、山と斜面の沈黙に圧倒させられる。
そう考えれば、この「雄大」という言葉もあながち間違いではないだろう。
この土地を 小島と呼ばん 然れども 長崎たらん 志士の高鳴り
ちなみにではあるが、私の天邪鬼たる気運は恐らくここで生まれている。
思えば、四変人を抱えた中学時代であったが、そのひと時が自我を確立させたのである。
こうした意味でも、私にとっては「個性」の林立する「小島」なのである。
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