第12話 怪しい教団と旅経つ姫様

「ショウタ様は一体何処に行ってしまったのでしょう・・・。」


怪人に襲撃されてから数日が経ちました。

私とライニャーは街の人をこの城に避難させてからしばらく経ってもショウタ様が帰って来ないので心配になり、ライニャーと一緒にショウタ様の安否を確認する為、町に戻ったのですが怪人達の姿も無ければ、ショウタ様の姿もありませんでした。

残されたのはショウタ様が部屋に置いて行かれたチップと町なかに落ちていたショウタ様の武器だけでした。


この国を出ていくおつもりならば、使いであるライニャーや戦闘時に使っていた色々なチップを置いていくとわ思えません。

きっとショウタ様の身に何かあったに違いありません。

そう思い、シャッフにある事を調べて貰っています。


『コンコンッ』


「お嬢様、シャッフです。頼まれていた件についてご報告しにまいりました。」


おっ、どうやら丁度来たみたいです。


「どうぞ、入って下さい」


「では、失礼します」


部屋に入ると、ベットの上に座っている私の前に座り、私が頼んでいた件について報告し始めた。

因みに調べさせていたのは怪人達が共通して持っていた装飾品や武器についていた何かのマークのような物、そのマークは一体何のマークでどのような人物が使用してたのか調べて貰っていました。


「それで調べてきたことについてお願いします」


「かしこまりました、お嬢様のご命令通りにあのシンボルマークを使う組織がいないか調べているとある教団がヒットしました。」


「ひ、ヒット?」


「あぁすみません、当てはまったという意味です」


ショウタ様ともこのようなやり取りを良くしてましたね、ショウタ様が知らない言葉を使うたび私がよくその言葉の意味を質問して、ショウタ様がその言葉に意味を説明し終わる頃には何の話題を話していたのかお互い忘れてしまうって事をよくやってましたっけ。


「お嬢様?」


「あぁすみません、話を続けてください。」


「はい、それでその教団の名前はアダム教団というらしくここ数か月で急激に信者の数が増えているようで、少し前まで30人しかいなかったのに今では2千万人にも及んでいるようです」


「に、2千万人もですか?!」


「はい、はっきり言ってこの増え方は異常です」


数か月で二億人って絶対裏に何かあるようにしか思えません。


「シャッフ、他にその教団について何か情報はありませんか?」


「噂ですので確証はありませんが、何やらその教団に入った信者が行方不明になるといった事があるようです」


行方不明?・・・まさか!


「シャッフ、その噂について詳しく調べてくる事は出来ますか?!」


「勿論です、お嬢様のご命令ですから」


行方不明者と怪人と急激に信者が増加した宗教、何処かで接点があるように思えます。


「それでは頼みます」


「かしこまりました、それでは私はコレで失礼します」


そう言ってシャッフは部屋から退出していきました。

今回ばかりはお父様が何か行動するまで待っていられないのです。


私は引き出しの奥から昔使ってた小さめのカバンを取り出しました。いつも魔物の討伐する際に使っているこれよりも一回り大きいカバンもあるのですが、私の私物とショウタ様の道具がゴチャになってはいけないので今取り出した小さいカバンの方にショウタ様のチップと剣を入れて持っていく事にしました。

本当ならカバンに剣を入れるというのはカバンが傷づいてしまうのでやらないんですが、ショウタ様の剣は特殊な造りのようで剣の刃の部分が柔らかくしかも折りたたむ事が出来るので小さいカバンでもすんなり入りました。ほんとに不思議な剣です、いったい何処で手に入れたんでしょうか?


「ショウタ様・・・・。」


後ろを振り向いても勿論ショウタ様の姿はありませんでした。さっきからショウタ様が何処かに行ってしまったと言ってるのに、出会ってからほぼ毎日私の傍いてくれたのに・・。一体何処に行ってしまったんですかショウタ様・・・、何処かで元気に過ごしているのならたった一度でもいいので私の傍でいつもみたいに真っ直ぐな、私の憧れる英雄の笑顔を私に見せてください・・。


私は心を落ち着かせてから、誰にもバレないように周りを警戒しながら城を出て行った。

=======


~ライニャーの目線~


主様が居なくなる前の日の夜の事、アルレット様はベットの上でぐっすり眠っていて、主様は必死になりながらレポートを書いていた。私は主様の手伝いをしていました。


「こんなに夜遅くまで起きて何かやっているのは前世ぶりだわ」


「主様、前々から一つ気になってる事があるのですが聞いても良いですか?」


「ん、何?」


「何故主様は何かといつもアルレット様の傍にいるんですか?」


「その言い方だと俺がまるでストーカーみたいになってるけど、まぁいいや。アルレットといつも一緒にいる理由だろ?」


「主様の仰っている、すとーかー?という言葉の意味は存知ないのですが、聞きたいのはアルレット様といつも一緒にいる理由です」


主様は立ち上がって窓の外を眺めながらこう言った。


「コレがその答えになるか分からないけど、俺が今こうやってストーリーって言う英雄で居られるのはアルレットのお蔭でもあるからな。多分アルレットに出会わなかったら今頃、俺は英雄なんて呼ばれるような人にはなってない。身の丈に合わない力で好き勝手してたと思う、まぁ今も結構好き勝手やってるけどな」


「アルレット様にはそれを抑える特別な力があるのですか?」


「・・・そうかもな」


主様の答えは曖昧な物だったのに顔の表情はとても爽やかだった。


「そうだ、ライニャーに一つ言っておきたい事がある」


「何でしょうか主様」


「もし俺が居なくなるような事があれば、その時はお前がアルレットを守ってくれ」


主様は笑顔で私にそう言った、それも何か私に悟られないよう嘘の笑顔で。

居なくなる?・・・主様が?? 理由をお聞きしたいけど、やめておく事にした。


「承知しました、この身を賭けてでもアルレット様をお守りすることを此処に約束します。」


~現在~


主様は何故私達の傍からいなくなってしまったんでしょうか?

・・・いや分からない事を考えても仕方ありません。

今アルレット様を守れるのは私だけなんですから。


一人で城を飛び出したアルレット様を探しに人気のない森の中を探していると、周りを警戒しながらそそくさ歩いているアルレット様を見つけました。


「アルレット様、此処で何されてるんですか?」


「ら、ライニャーが何故此処に?!」


「アルレット様が突然居なくなったので探しに来たんですよ、お城の方達も心配してましたよ速くお戻りになった方がよろしいかと」


「・・・いえ、今はまだ城には戻りません」


「はい?」


「ショウタ様を見つけるまでは城には戻らないと言っているのです!」


やけにアルレット様がいつもより荷物を多く持っていると思ったらそうゆう事ですか。


「何子供みたいな事を言ってるんですか、いいからお城の方に戻りましょうよ」


「ライニャーは何とも思わないんですか?自分の主であるショウタ様が行方不明である現状に」


「・・・何も思わない訳ないじゃないですか!でもだからってアルレット様が危険な目に合わせる訳にはいかないんでs・・・。」


いきなり何者かが走ってきてる音がした。すぐさま音のする方に視線を変えると、全身が鉄で覆われたようなゴーレムのような者が近づいてきてた。


「ターゲットロックオン!、直ちに始末する」


何者かは分かりませんが、とりあえず敵である事は確かのようです。


「とりあえず逃げますよ、アルレット様!」


「・・・え?わ、分かりました」


アルレット様の腕を引っ張って人気のないを駆けはじめました。

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