第11話 迷える少女と奪われた記憶

「チクショウ・・・。」


邪魔さえ入らなければアイツを始末出来たのに・・。

まさか純白の騎士みたいにマスクを被った騎士が他に存在してたなんてな。


部屋に入ると元勇者が椅子に座っていた。


「聞いたぞ、使徒を8体も使ったのにターゲットを仕留めきれなかったんだってな」


「うるさい」


一度の失敗が何だ、使徒なんていくらでも居るんだ。

まさか使徒を8体も倒されるなんて思いもしなかったから奴の記憶だけを何とか採取することが出来た、

この記憶を解析すればきっと今まで誰も作れなかったような最強の使徒が作れるんだ、もし最強の使徒を作れたら・・・俺はきっとこの世界で一番の存在になれるだろう。


不気味な笑みを浮かべた男は研究室と書かれた部屋に入っていった。




=======



気が付くと知らない部屋のベットの上にいた。


「此処は・・・何処?」


・・・思い出せない、自分が誰なのか、今まで何をしてきたのか、そして自分の帰るべき場所も・・。

とりあえず下を確認するためズボンの下を確認してみる・・・、どうやら俺?いや、私は女の子らしい。

すると突然誰かが部屋に入ってきた、慌ててズボンを履きなおした。


「良かった!気が付いたんだね」


そう言って何処か安心した様子を見せたのは、長い茶髪の綺麗なお姉さんだった。


「お姉さんは誰ですか?そしてここは何処ですか?」


「えっとね、じゃあまずは私の自己紹介から始めるね、私は氷見香子ひょうみ きょうこ、呼び方は何でも良いよ。そして私達が今いるこの場所は私と弟の秘密基地って感じかな」


秘密基地?


「でも何で私が香子姉さんたちの秘密基地にいるんですか?」


「あれ?覚えてない?貴方、怪人達を倒した後その場で倒れちゃったんだよ?」


怪人?しかも私がそれを倒しちゃったの?!ドユコト?!


「すみません、私・・・自分が何処の誰なのか、今まで何をしてきたのかも憶えてないんです・・。なので怪人とかの事も一体何のことかさっぱりで・・。」


「それってもしかして記憶喪失って事?!」


お姉さんはとても驚いた反応をした、まあ当然の反応だろう、記憶を失うなんてよっぽどの事が無ければならない物だろうから。


「はい・・・そうです、それでなんですけどお姉さんは私について何か知っている事はありませんか?」


「ごめんね、私も記憶ある時の貴方にも会ってはいるんだけど全然話していなかったから貴方の事をまだよく知らないの」


少しガッカリだ、俺はしょんぼりした顔をした。

お姉さんは俺がしょんぼりした顔を見て、俺を励ますようにこう言った。


「でもね、何も手がかりが無い訳じゃないの」


「え、本当ですか?!」


お姉さんがそう言って取り出したのはベルトが付いている何かの機械だった、多分男の子とかが使って遊んでそうないわゆるボーイズトイというやつだろう。

そして何故か私はその玩具に何かを感じた、それは私の無くした記憶と関係がありそうだと直感で感じた。

この玩具を調べて行けば何かを思い出せそうな気がする。


「何となくですけど、私もしかしたら昔この玩具持ってたのかもしれません」


「コレは貴方が怪人と戦ってた際に使ってたベルト、使い方は分かる?」


「・・・いえ、」


やっぱりダメだ、この見た目の物を持っていた事は何となく思い出せそうな気はするけど、使い方までは何も思い出せそうにない。


「そっか、それと貴方が持ってたカバン返しとくね、自分の物か憶えてないだろうけど」


そう言って香子姉さんから渡されたカバンには財布と何かのチップのような物と一冊の本が入っていた。


「これを私が持ってたんですか?」


「やっぱり何も思い出せない?」


「ゴメンなさい・・・。」


香子姉さんが私が記憶を思い出せるようにと色々してくれているのに何も思い出せない自分が情けない。


「別に謝る事無いんだよ?これから少しずつゆっくり思い出していこうね」


「・・・香子姉さん!」



========


私は今、香子姉さんと記憶を無くす前の私がいたという町に向かっている。

しかし本当に此処は何処なのだろうか?さっきからずっと歩いているのだが車やバイクを一台も見かけてないし、見かけるのは馬車ばかりだ。

そして香子姉さんを除く人達はおとぎ話に出てきてもおかしくないような外国の服を着た人ばかり、私がいた日本とは別の国なのかもしれない・・・。そう考えると段々怖くなってきて、足を止めその場で立ち止まってしまった。


「あれ?どうかしたの?」


「香子姉さん、ここって何処なんですか?」


「・・・?見ての通り山道だけど」


「そうじゃなくて、ここって日本じゃない国ですよね」


香子姉さんは少し考えたような表情を見せると直ぐにこう私に質問してきた。


「もしかして貴方、日本人なの?」


「はい、そうですけど」


「ごめんね、白い髪の色だったからすっかり現地の人だと思ってた」


・・・ん?白い髪の毛?私の髪の色は黒かった筈・・・?!


「髪の毛が白くなってる!?」


自分の髪の毛を見てみると確かに白かった、私は確か日本人だったはず、なんで髪の毛が白いんだ?!


「もしかして気づいてなかった感じ?てか髪の毛が黒かったって記憶はあるんだ」


「まぁ何となく」


そうだよなぁ、言われてみれば少し変な話だ。自分の髪色が黒だったという記憶はあるのに、名前とか全て憶えてないんだから。


「多分だけどこの髪色染めてるって感じじゃなくて元からこの色なんだと思う」


「でも髪の色が自然に変わるなんてありえますかね?」


「~~ん、あり得るとすれば一つは何らかの原因で髪の色が変わってしまった説、もう一つは別の誰かの体に貴方の魂的な何かが入ってしまった説、でも情報が少なすぎるせいでこの今言ったどちらかが真実なのかまたもや他の事が原因なのかも分かんないし、今は髪の色のことは一旦忘れよう」


ん~?忘れちゃったけど、何か香子姉さんに質問したけどそれに答えて貰ってないような気がする。

まぁ自分でも忘れるような事だし別にいいか。

そしてまた私は香子姉さんの後ろを着いて行くような形で町に向かって行った。

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