第8話 私(俺)の初仕事

目が覚めると昨日と同じ、アルレットの姉さんの部屋のベットにいた。


「お目覚めですか?ショウタ様」


そう声をかけたのはベットの横の椅子に座っているアルレットだった、アルレットは心配そうに俺を見ていた。


「ここまで運んでくれてありがとな、後心配かけたみたいでゴメンな」


「いえいえ、起きてすぐで悪いのですがお父様がショウタ様に話があるようでして」


「分かった、どの部屋に向かえばいいの?」


「それでしたらシャッフ、ショウタ様をお父様の所へ案内して下さい」


「かしこまりましたお嬢様、それではショウタ様此方へ」


俺はシャッフさんに案内してもらい、アルレットの父さんである国王の元へと向かった。





「失礼します、メイドのシャッフです。ショウタ様を連れてまいりました、入ってもよろしいでしょうか

?」


「入れ」


中いるのはこの国の王様であるアルレットの父さんだけだった。

部屋は、流石王様の使う部屋だ他のどの部屋よりも豪華な作りだった。


「それでは私は晩食の準備がありますのでこれで失礼します」


シャッフさんが出ていき、この部屋に居るのは俺とアルレットの父さんだけになった。


「王様、話というのは」


「ショウタ殿は、昔アルレットに姉がいた事はご存知か?」


「・・・はい」


「その様子だとあの世に旅立っていった事もご存知のようだな・・。

今のアルレットからは想像も出来ないかもしれないが、姉を亡くしてからアイツはショウタ殿に出会うまで一度も笑わなかったんだ。」


「・・・え?」


「きっと自分と同じ背丈の女の子であるショウタ殿が迫りくるゴブリン達に立ち向かった姿を見て勇気を貰ったんだと私は思う。

ショウタ殿がよければこれからもアルレットをそなたの傍に居させてやってほしい、どうか頼む!」


「勿論です、アルレットは俺の大切な仲間ですからね、俺に任せて下さい!」


「有難う、本当に有難う・・。」


王様は涙ながらにお礼をした。アルレット、いいお父さんを持ってるな。


「それともう一つショウタ殿に頼みたいことがある。」


「はい、何でしょう?」


「今は使っていないアルレットの姉であるアリスの部屋を自室として使ってほしいのと出来れば晩食の時はこの城に帰ってきて一緒に食事を取ってもらいたい」


「むしろ俺としては得しかない話ですけど、何故です?」


「食事は大人数で取った方が美味しく感じるものだからな」


言わないだけでもっと細かい理由があるのだろうけど、触れないでおこう。


「分かりました、それではこれから色々お世話になります」


ドアをコンコンと叩く音が聞こえた。


「旦那様、晩食の準備が出来ました」


「連絡ご苦労、それではショウタ殿向かいましょう」


「はい!ごちそうになります」


大きく元気な声で返事して、王様の後を付くようにして晩食の部屋に向かった。


=======


「いやぁー昨日は食った、食った」


あの後、アルレットの母さんはどうやら不在らしく俺とアルレットと王様の3人で食事を取った。

久しぶりの味の濃い食事でついつい沢山たべてしまった、まぁあんだけ


「まさか私とあまり変わらない背丈なのに、私の3倍以上食されるとは・・。」


「まぁ勇者と決闘した後だったし、後俺成長期だから」


「ショウタ様は今日何かご予定はありますか?」


「いや、特にないけど」


「宜しければ冒険者ギルドにいってみませんか?ショウタ様程の実力があれば大金を稼ぐ事も夢じゃないです!」


冒険者ギルドねぇ、別に大金は無くても良さそうだけど働かざる者食うべからずと昔から言われてるし、一仕事いっちゃいますか!


「じゃあアルレット、ギルドの案内お願いできる?」


「なんなら一緒にクエスト受けません?」


「なら、そうしよっか」


「それじゃあ決まりですね!」



=======


「着きましたよショウタ様」


「此処が冒険者ギルド・・。」


アルレットに案内されたのは広い建物だった。


「ショウタ様、ギルドでクエストを受けるにはギルドカードを作る必要があります」


「そのギルドカードは何処でつくれるんだ?」


「そこで受付で言えば作っていただけます、私もお手伝い致しますので困った事があれば私にすぐ言って下さいね!」


「じゃあ行こうか」


「はい!」


 ====数十分後====



「こちらが貴方のギルドカードになります、今後クエストを受ける際に必要になりますので毎回持ってくるようにして下さい。」


「分かりました、ありがとうございます」


ギルドの手続きは思ったよりすぐに終わった、アルレットの手助けがあったのはもちろんだが書類に日本語の翻訳が書いてあった事がとても助かった。

神様に付与された力の影響なのか話す事は何の問題もなく出来るのだが、この国の言語の読み書きが全くできない。

なので書類系がしっかりと書けるか不安だったがまさか日本語で書いてもOKだったとは、もしかしたらこの世界にも日本語を使う国があるのかもしれない、もしあるのなら一度行ってみたいものだ。


「ショウタ様、一緒に受けるクエストこれにしません?」


そういって、アルレットが持ってきた紙には「最近、森を通りかかった人が大きな化け猫に襲われると多数報告されている。原因を突き止めて今後二度と被害が出ないよう対策をしてもらいたい」と書かれていた。

難易度と報酬額は何度も書き換えられた跡があり、難易度も報酬額も他のどのクエストよりも高く設定されていた。


「俺今日登録したばかりだよ、初日からこんな高い難易度のクエスト受けられるか?」


「ショウタ様の腕が確かなものだというのは既にギルド長も存知してますので、特例でショウタ様は既にほとんどのクエストを受ける事の出来るシルバーランクになってます」


だからか、ギルドに入った時からやたらと俺に目線が集まるのは・・。


「じゃあコレにしようか」


「では早速参りましょう!」


俺とアルレットは化け猫のいるという森へ向かった。


=======


「見つからねぇー!」


いざ森に来てみると出くわすのは普通の魔物ばかり、手こずる程ではないのだが沢山いすぎ・・。

アルレットと二人掛かりで倒していっても、倒した分どこからか別の魔物が現れるのでキリがない。

魔物が来なくなった頃には俺もアルレットもぐったりだ、コレではクエストの依頼内容を達成する前に体力の限界がきてしまう。


「ショウタ様、ちょっとよろしいですか?」


「アルレット、どうかしたの?」


「この足音、何かコッチに向かってきてませんか?」


俺も薄々さっきから聞こえていた、アルレット言うように足音が段々大きくなっているのだ。


「ま、まさかね・・・。」


音がする方へと視線を向けると此方を見てる森にそびえだっている木より遥かに大きい猫のような化け物がいた。


『我が聖域を汚す小娘どもよ、罪を犯した自身を憎んで死ぬとよい!』


化け猫は怒った表情でそう俺達に言い放ち、急接近してきた。


「ヤバイ、ひとまず逃げるぞアルレット!」


「ちょっ、ショウタ様?!」


俺はすぐさまアルレットを抱えてその場から逃げだした、思った以上に敵がでかすぎた。

アルレットをコイツとは戦わせるわけにはいかない、ひとまず安全な所にアルレットを連れて行かなければ!


逃げてる最中に小さい木の木陰を見つけた、化け猫が俺達を見失った瞬間に俺はそこに向かいアルレットを降ろして隠れる事にした。


『ちょこまかと逃げおって、我と正々堂々1対1で勝負しろ!!』


そのバカでかい体のアンタが言いますか、まぁ俺もアルレットが戦わずに済むなら好事項なのだが。


「じゃあちょっと行ってくるわ、アルレットはここで待ってて」


「ショウタ様、まさかあの化け物と本気で1人で戦うつもりですか?!」


「本気だ、お前を危ない目に合わせる訳にはいかないからな」


「・・でもぉ」


「大丈夫だ、俺を信じてくれ」


「・・分かりました、でも無茶しないでくださいね!」


「勿論、」


今回の敵は今までとは大きく異なる点がある、それは大きさだ。

こんなデカ物とどうやって戦えばいいのか分からない、けど俺は勝つ!


「そこの化け猫この俺、吹雪正太が相手だ!」


『良かろう、では!』


「危なっ!」


化け猫は虫を潰すかのように、何回も自分の手を俺目掛けて勢いよく降ろしてきた。

何が正々堂々だ!これじゃ避けるのに精いっぱいでまともに戦えやしねぇ!

何とかしてコイツにダメージを与えられないもか・・・、そう思っているとバイクの走る音が聞こえてきた。

もしかして・・、そう思って音のする方を見るとバレット・ザ・バイクがこちらに向かって来ていた。


「バレット力を貸してくれ!」


俺の声が届いたのか、それに反応するようにクラクションを鳴らしながらさっきよりも速いスピードで俺の元へと向かってきた。

俺はバレットにまたがると腰に付けているホルダーの中からウエスタンチップを取り外してベルトのモダンチップと入れ替えて、取り出したキー・ウエポンを銃モードにしてモダンチップを差し込んだ。


「ステージチェンジ!」


『思いを貫け!己を貫け!Western・The・hero!!』


「バレット、俺が合図を出したら奴の頭上に飛んでくれ!」


バレットは俺の声に答えるようにクラクションを鳴らした。

俺は後ろから追いかけてきていた化け猫の目に狙いを定めて、トリガーを引いた。


「狙いはそこだ!」


『high speed・Shoot!』


俺の放った2発は見事に奴の目に命中した、威力は抑えてあるから失明はしないだろうけど少しの間は視界がぼやけて見えるだろう。


「今だ、頼んだぞ!バレット!!」


合図と共に進行方向を180度変えて、今度は奴に向かってゆく!


『視界を奪うとは、小賢しい真似を』


「そんな事言ってる場合か?」


俺を乗せたバレットはすでに奴の頭上に到達していた。

俺は空中でバレットから降りながら、キー・ウエポンを剣モードに変形させた。

そして決め台詞を決めながらトリガーを引いた。


「お前はコレでおしまい!」


『high speed・Slash!』


化け猫の背中をなぞるように切り裂いた、俺が地面に着地するのと同時に化け猫は前へと崩れ落ちた。


『ま、参りました・・。』


「もう悪さしないと約束してくれるなら見逃してやってもいいけど、どうする?」


俺だって降参してきた相手を無慈悲にあやめる程鬼ではない。

これに懲りて人間に危害を加えないというなら見逃してやってもいいクエスト内容はあくまでも被害が出ないよう対策してほしいという物であって討伐が目的じゃないのだ。

しかし返事は予想だにしないものだった。


『もしショウタ様が宜しければ私を貴方の眷属にして下さい!』


「はぇ?」


予想外の斜め上を答えられた、いや何でだよ!

とりあえずここはさり気なく断ろう。


「そんな体でかいと街中とか歩けないでしょ?だから申し訳ないけど・・。」


『それであれば・・。』


そうゆうと化け猫の体を包むように白く濃い霧が発生した。


「・・・・こんな感じで良ければ体を小さくする事も出来ます、これくらい小さければ騒ぎにはならないと思いますが・・。」


霧が晴れるとさっきまでバカでかい化け猫が居たはずの所にとても可愛らしい子猫が一匹ちょこんと座っていた。

ヤバい、可愛すぎて抱きしめてしまいたくなる。

お、抑えろ!抱きしめたくなる欲望を抑えるのだ自分!


「そ、そうだねでも・・・。」


「ショウタ様なんですかこの可愛らしい生物は?!」


いつの間にかアルレットが、小さい姿に変化した化け猫を抱きしめていた。


「アルレットいつの間に?」


「とても可愛らしい子猫ですね、せっかくだし私達で飼ってあげましょう!」


「え?」


「本当ですか?!」


勝手に話が進んでる・・・まぁいいか、アルレットも飼いたいって言ってるし。


「じゃあこれからよろしくね、・・・・えっと名前はなんて言うの?」


「私に名前はありません、出来る事なら名前をつけて頂けるとありがたいのですが」


「名前かぁ、アルレットなんかいい案ある?」


「ライニャー、なんてどうでしょうか?」


「それ良いかも!じゃあライニャー、改めてこれからよろしくな!」


「はい!このライニャー必ずや主様たちのお役に立ちます!」


こうして、頼れる子猫のライニャーが俺達の仲間に加わった。


=======


所変わって、とある教団の研究所


「で、出来たぞー!これこそがこの忌まわしき世界に終焉を告げる魔道具だー!」


「終焉を告げるとか訳分かんねぇけど、俺を裏切るつもりじゃないだろうな?」


「そう焦るな、これこそがお前に託す力なのだから」


「・・・・本当にこんなもんで俺は強くなれんのか?」


「まぁ、自分の身体でその魔道具の素晴らしさを実感してみるといい・・。」


白いフードの男は少し前まで勇者と呼ばれていた青年に何か手渡すと、施設中に響き渡るほどの大きな声で笑いだした。

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