第7話 VS 勇者
城に戻るとアルレットのメイドさん2人待っていた。
「お嬢様、ご無事で何よりです~。」
「アンタはいつも心配し過ぎなのよ、少しはしっかりしなさい」
「でも~」
「お嬢様ひとつご連絡があります、ヤノ・シュラ様が城に来られています」
「そう・・・、伝えてくれてありがとう、」
「いえ、お嬢様に仕える者として当然の事をしたまでです」
「ショウタ様私は正装に着替えて来ますので、レックはショウタ様を何処か休める場所にご案内して下さい。シャッフは私に付いてきて下さい。」
「「かしこまりました」」
「それではショウタ様、お部屋にご案内致します」
お淑やかな方のメイドさんに案内されたのはアルレットの部屋と同じ作りの部屋だった。
メイドさんの話によるといまは亡きアルレットのお姉さんの部屋らしい。
あんなにまだ小さい女の子なのに命を狙われたりお姉さんがなくなったりと大変な思いをしているのにいつもあんなに笑顔なのは彼女が強いからかもしれない。
「ショウタ様、宜しければお茶をどうぞ」
「有難う御座います」
レックさんに出されたお茶を口にした俺は気になる事をメイドさんに聞いてみる事にした。
「そういえばさっき話してたヤノ・シュラって誰なんですか?」
「この世界を救うために異世界から召喚された勇者様であり、お嬢様の婚約者でもあります」
「アルレットの婚約者?!アルレットってもう婚約してたんですか?!」
「・・・本来ならばこんなに早く婚約する事はありません、」
「じゃあどうして・・。」
「ヤノ・シュラ様が世界を救う対価としてお嬢様との婚約を要求してきたのです」
「アルレットはその勇者との婚約を望んだんですか」
「・・いいえ、お嬢様は幼い頃から思いを寄せていた他国の王子がいたのですがその方とは縁を切ってヤノ・シュラ様と婚約をいたしました。」
「それじゃあ、あまりにもアルレットが可哀そうじゃないですか!」
「・・・・・・・、」
「すみません、貴方に言っても仕方ないですね・・。」
「・・・いえ、何もできなかった私にも非があります・・。」
二人きりの部屋に何とも言えない空気が漂い始めたその時、扉を開けたアルレットとアルレットに付き添ってたメイドのシャッフさんが部屋に入ってきた。
「お待たせしましたショウタ様、早速お父様の元へ向かいましょう」
「お、おう」
アルレットに何か悟られないよう作り笑顔で返事をして、アルレットと王室に向かった。
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王室に入ると派手な鎧を身にまとった4人組が王様と何やら話している最中だった。
「おおショウタ殿丁度いい所に、森の調査の方は終わったのか?」
「終わって帰ってきた所です。」
「本当は今すぐにでも報告をして欲しいのだが、ここにいる勇者様達がお主に用があるらしくてな。
報告はその後に頼む」
「お前がショウタって野郎か?」
いかにもチャラそうな見た目の奴が俺に話かけてきた。コイツがさっきアルレットが言ってた婚約者の勇者か。
一応女性の言葉遣いで対応しよう、素で話すと舐められたと思われてキレられそうだ。
「はい、私が吹雪正太ですけど何用ですか?」
「俺と勝負しろ!」
「・・・・は?」
いきなりの事で訳が分からなかった。
「私がですか?」
「そうだ!俺と1対1のタイマン勝負だ!」
「私と勝負する目的は何ですか?」
「俺より強い奴なんてこの世にいないと民衆の奴らに分からせてやる為さ!」
とても世界を救うために異世界から召喚された勇者とは思えない発言だ。普通ならこんな勝負したくないのだが・・。
「その勝負受けて立ちましょうただし、条件が一つあります」
「なんだその条件って?」
「私が勝ったらアルレットとの婚約を白紙にして下さい、それが条件です」
周りがざわついた、それもそうだ他人である俺が二人の婚約に口出しするのはおかしな話だ。だからといって口出ししないつもりも無かった。
「なんでテメェが俺らの婚約に口出しすんだよ」
「あら?もしかして貴方のような勇者様が、私のような小さき少女に負けてしまわれるんですか?」
「んな訳ねえだろ!」
「それなら、何の問題もありませんよね?」
「・・・ッチ、いいだろうもしお前が勝てたのなら婚約を無かったことにしてやる。その代わり俺が勝ったらお前も俺の女になれ」
「いいでしょう」
「ちょっと、ショウタ様?!」
「それじゃあ明日の昼頃、闘技場でお待ちしております。それじゃあまた明日」
「ぜってえ後悔させてやるからな覚悟してろ」
そういって勇者は王室から出ていった。
後ろにいたアルレットが小走りで俺の元へと来た。
「負けたら婚約するってどうゆう事ですかショウタ様!?」
「あんな自分勝手な奴にお前を結婚させられる訳ないだろ?心配しなくても必ず勝って見せるから見守っといてくれ」
「・・・分かりました、ショウタ様を信じて客席で応援してます」
「そんな心配しなくても大丈夫だから」
そうは言っているが実際俺も本当に勝てるのか心配なところがある、でもアルレットをあんな奴と結婚させないためにも俺は絶対に勝たなくちゃいけない。
王室にきた本来の目的である調査の報告を無事終えた後、明日の勝負の準備を始めた。
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今、俺は闘技場の控室でアルレットのメイドさんであるシャッフさんとレックさんに身だしなみを整えてもらっている最中だ。
別に整える必要はないとアルレットに言ったのだが「いいから」と返されて、大人しく身をゆだねる事にした。
「ショウタ様、昨日仕立てて貰った服とても似合っております!」
「今から決闘なんだけど」
「女の子は可愛くてなんぼですよ、ショウタ様」
さっきからアルレットの俺を見る目がまるで妹を見るような目なのは気のせいだろうか。
俺はカバンからベルトとチップそれから昨日レックさんに密かに頼んで作って貰ったチップホルダーを取り出した。
戦闘時は激しく体を動かすのでカバンだと邪魔になってしまう事が多かった、そこでベルトに掛ける事が出来るチップホルダーを作って貰うことにした。
まさか一晩で作ってしまうとわ思いもしなかったけど、この世界の人達はなんでこんなにも速く物が作れてしまうのだろうか?
ベルトにホルダーを取り付けてそこにチップを差し込んだら準備完了、俺は試合の会場へと向かい始めた。
今回の試合のルールはとてもシンプル!闘技場の床に刻まれている円の中で戦う事、円から出てしまった方の負け。使用禁止されている物は一切ない。
会場に着くと観客席には多くの人で溢れており、勇者の姿は既にあった。
「どうやら覚悟は出来てるみたいだな」
「勿論」
「両者構えて!」
『set up!』
俺が指定された位置に付いたのを確認した審判は構えの合図を出した。
その合図で手に持っていたベルトを腰に巻いた。
「始め!」
審判の合図で試合が始まった。
始まった瞬間、手に持っていたモダン・チップをベルトに差し込んだ。
「変身!」
『これからのストーリー! 俺のストーリー! Modern・The・hero!!』
相手の勇者は変身した俺を驚いたような目で見ていた、まあ驚くのも無理はないだろう。
しかし今は戦いの最中、隙を見せたらそこを突くのは当然の事。俺はキー・ウエポンを片手に勇者の方へと走った。
しかし俺が近づいた時、勇者の顔は笑っていた。
「変身ねぇ、コレは面白い戦いになりそうだ。俺も本気出しちゃいますか、力を貸せ『技の剣 疾風』!」
次の瞬間、目の前にいた筈の勇者が姿を消した。大体バトルもので姿を消すと相手の視覚の外に移動してるものだ、俺は即座にベルトに差し込んでいたモダン・チップをキー・ウエポンに差し替えてトリガーを引いた。
『high speed・Slash!』
必殺技を発動させるとさっきまで速すぎて見えなかった勇者の姿が確認できた。
勇者は剣を構えていた、咄嗟に俺は片手で持っていたキー・ウエポンで勇者の剣を受け止めた。
「オメェこの速さに着いてこれんのか、・・でもコレならどうだ!」
そういうと勇者は剣を連続で振りはじめた、最初の内は俺もなんとか受け止め切れていたけど剣の威力が増していくごとに俺は体制を崩してしまった。その隙を勇者に突かれてしまい、手に持っていたキー・ウエポンを範囲外へはじかれてしまった。
「しまっ・・・。」
「何処見てる!」
俺がキーウエポンが飛ばされた方角を向いていると勇者が俺を蹴飛ばしてきた。
飛ばされた俺は範囲ギリギリでなんとか持ちこたえられたがピンチであることは変わっていない。
いったいどうする俺、奴と同じスピードで戦えるのは長くて10秒ぐらいだろう。ウエスタンフォームはキー・ウエポンがない今は何もすることが出来ないし、エスパーフォームは奴のスピードが速すぎて念じる事も出来ない。一体どうやって奴の速さに追いつく・・、いや『アノ』チップならもしかして・・・。
考えてる時間もないし、やってみるしかないか。
「ステージチェンジ!」
俺はまだ使った事が無いチップをホルダーから取り外してベルトに差し込んだ。
『語るぜ拳で!激烈アタック! Fighting・the・hero!!』
そうして俺はストーリー ファイティングフォームにフォームチェンジした。
「姿を変えられるのか・・、だが俺の速さにはおいつけまい」
「それはどうかな?」
勇者がどや顔で俺に降ってきた剣を俺は手で受け止めて見せた。
このフォームは人間離れした格闘家のデータで作られたフォーム、このフォームに変身している間なら俺も人間離れした技を繰り出す事が出来る。
「ど、どうして 俺の速さを凌駕したとでもいうのか?!」
「そんなもん根性でどうにでもなる!」
俺は力をふり絞おしてって勇者を押し返した。
「なっ・・・、」
奴は体制を崩して隙を見せた、俺は奴の手元に狙いを定めて自分でも見えない速さで何回も拳を振るった。
すると剣を握っていた手が一瞬ゆるくなりそのまま剣が床に落ちた、俺はすぐに剣を範囲外に蹴った。
「俺の剣が!」
奴がよそ見をしている間にベルトのボタンを押して必殺技を発動させた。
「お前はコレでおしまい!」
『Continuous・kick』
俺は10秒間ひたすら奴に何百回と蹴り続け、最後に強めの蹴りをお見舞いしてやった。
強めの蹴りを見事にくらった奴の身体は範囲外へと綺麗に吹っ飛んだ。
その光景を目の当たりにした審判は少しの間硬直していたが、すぐに切り替えて審判を下した。
「この勝負、フブキ ショウタの勝利!」
結果を聞いてホッとした俺はベルトを外して変身解除すると、倒れるようにその場で背中を地面につけた。
さっき手足を無理に動かしてたみたいで力を入れてもびくとも動かない、とりあえず勝てて良かった。
眠気と疲れがどっときて、寝そうになった時俺に近づいてくる足音がした。
「ショウタ様、激戦でお疲れなのは分かりますがこんな所で寝ないでください」
「アルレット・・手足がびくとも動かない・・、助けて・・。」
俺がそう伝えると、アルレットはため息をつきながら俺の体をしょってくれた。
「私がベットまで連れて行きますので、ショウタ様はそのままお休み下さい」
「ありがとう・・・。」
俺はアルレットの背中でぐっすりと眠り始めた。
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「クソッ、クッソー!」
夜の闘技場に一人の男が床を踏みつけながら何やら悔しがっていた。
どうやら彼は異世界から召喚された勇者らしいのだが、今日の昼頃にここで10歳ぐらいの少女と1体1で戦って見事に負けたらしい。
彼の悔しがって姿は、まるで怒りに満ちた魔物のようだった。
そんな彼にフードを被った男が近づいていた。
「青年よ力を欲するか?」
「何だテメェ、おちょくってんのか?!」
彼は近づいてきたフードの男に向かって剣を振るった、しかしフードの男は素手でその剣を受け止めてから床に弾き飛ばした。
「貴方は自分の力の引き出し方を知らない、もし貴方が私達に強力してくれるのなら世界をも破壊しうる力の引き出し方をお教えしましょう」
「そ、それは本当か!?」
「どうしますか?」
「協力する!」
「それでは私たちの城へとご案内しましょう」
そう言うとフードの男と彼は何処かへと姿を消した。
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