第2話 変身!

どうゆうことだろうか?神様の話では女の子の運命は良い方向に向いた筈、だが鏡には助けた女の子と同じ姿になった自分が写っていた。


何故このようになったのか考えようとしたが、あまりに情報が少なすぎる。とりあえず今はこの異世界でしっかりとした生活が送れるようにする為、まず最初に人の町を見つける必要がありそうだ。

幸いなことにすぐそこにある一本道は人の手で整備されているようだったから、人がこの道を通るかもしれない、この小さな体で何処にあるのか分からない町を探すのは自殺行為に等しいだろう。ここは誰か通るまでこの場に居座るべきなのだろうか?異世界系をあまり読んでないからよく分からん。


とりあえず誰かここに来るまで、女神様に頼んで届けてもらった「PBT版」で遊んで時間を潰そう。

箱を開けると丁寧に入れられた ステージドライバーとキー・ウエポンと可愛い用紙に手書きで書かれた手紙が入っていた。


『この度は転生する事に承諾していただいた事、誠にありがとうございます。

ほんのお気持ちですが、正太様に頼まれていたこの玩具に少し私の力をいれてみました。

私も詳しくはわからないのですが、変身?ができる機能がついたようです。

多分異世界での生活で役に立ってくれると思います。』


変身ができるようになったの?!マジで?!女神様は変身が何なのか知らなさそうな感じだったけどもしかしてこのベルト、もはや玩具では無く本物と変わらないのでは?


「誰か、誰か助けてー!」


頭の中で変身して戦っているシーンを想像していると俺ではない女の子の悲鳴が聞こえた。とりあえず、悲鳴がした方に向かって走った。



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悲鳴がした所に着くと、2mくらいの大きさのゴブリンと5体の小さなゴブリンが居る事に気が付き、俺はとっさに近くの茂みに隠れた。するとさっきの悲鳴を上げたであろう女の子とでかいゴブリンの会話が耳に入ってきた。


「コンナトコロニヒトイナイ、サケンデモダレモコナイ」


「近寄らないで!」


「テイコウシテモムダ、オマエノナカマゼイインシンダ」


確かに良く見ると馬車の下には鎧をまとった人の死体が4~5人分転がっていた。初めて見る死体はとても見ていられるモノではなかった・・。

俺は生まれて初めて、死がすぐそこにある事を感じた。心臓の鼓動がどんどん速くなってゆくのを感じた。辛くなってここから逃げ去ろうとしたその時、


「・・誰か、・・たすけてよ・・・。」


あの女の子の小さな声が聞こえた、その弱々しい声が。

目の前に消えてしまいそうな命があるならば助けるのがヒーローなんじゃないか?自分はどうなってでも助けるのがヒーローなんじゃないか?

どうせ俺は1度死んだんだ、失うものも何も無い。やれる所までやってみようじゃないか!勇気を振り絞ってゴブリン共の前に出た。


「ナンダオマエ」


「今すぐ、ここから去れ!もちろんその女の子を置いてな。」


「ナマイキナメスダ、ナラオマエモツレテイッテヤル」


正直、ゴブリン達が怖くて震えそうだがヒーローがそんな怖がっている訳にはいかない、俺にしかこの子を救えないのなら、なってやるよこの子のヒーローに!


『set up!』


小さくなってしまった腰にステージベルトを装着して、目の前の恐怖に立ち向かう覚悟を決めて、ベルトにチップを差し込みながらこう叫んだ。


「変身‼」


『これからのストーリー! 俺のストーリー! Modern・The・hero!!』


そうして本当に俺は憧れのヒーローの姿、ストーリー モダンフォーム(基本フォーム)に変身した。

このフォームは現代のヒーローの力、現代の技術を駆使して戦う戦士。まあこの世界だと現代ではなく未来の力なのかもしれない。


「俺の名はストーリー、お前らの最後を語る者だ!」


「オモシロイ、デキルモノナラヤッテミロ」


とりあえずこの距離なら・・・、左手に持っていたキー・ウエポンを剣モードに変形させた。


「キー・ウエポン!mode sword!」


「オワリダ」


いきなり降りかかってきた金棒をとっさにキー・ウエポンで受け止め、ベルトに差し込んであるチップをキー・チップに差し替えた。


「ッチ、コレナラドウダ!」


大きいゴブリンが攻撃を受け止められて悔しかったのか、金棒を力一杯振る為に金棒を背中の後ろに構えた。俺はその一瞬を見逃さず、キー・ウエポンのトリガーを引いて必殺技を発動させた。


キー・ウエポンはチップを差す事により、そのチップに応じた必殺技を発動できる。

このチップを差し込んで発動できる必殺技は、発動から一定の時間内は目にも止まらない速さで移動や攻撃ができるようになるというモノ。


『high speed・Slash!』


目にも止まらぬ速さを手に入れた俺はまず最初に大きなゴブリンの背後に回り込んだ。

これ以上攻撃されるのは阻止しておきたいので、まずは両脚を切断する。


「・・・・!」


両脚を切断され耐性を崩して前に倒れる時、顔を俺に向けようとしていたがその時にはもう俺の剣がゴブリンの首元に触れていた。


「ぎゃーー!!」


さっきまで俺をなめていた奴は大きな悲鳴を上げながら、自分が舐めていた俺にあっさりと倒された。


「ボ、ボスガタオサレタ!」


そう言い残し小さいゴブリン達は何処かに逃げていった。

さっきの子は大丈夫だろうか?馬車の中に倒れている子がいた。

どうやら目立った怪我をしていないようで安心した。


「君、怪我はないか?」


「う、後ろ!」


背中ら辺に何か当たるような感覚があった、後ろを見ると1本の木の矢が落ちていた、まだゴブリン達の仲間が居たのだろう。


「それなら・・」


『キー・ウエポン!mode gun!』


キーウエポンを銃モードにして、相手がいつ攻撃してきても反撃できるよう態勢をとった。するとなんか飛んでくるような音がしたので、そちらの方向を向くと1本の矢とその奥にゴブリンを見つけた。すかさず銃の引き金を引いて、必殺技を放った。


「そこだ!」


『high speed・Shoot!』


銃から放たれたソレは飛んできた矢と矢を打ってきたであろうゴブリンを一瞬のうちに消しさった。

流石にオーバーキルだったかもしれない、そんなことより女の子の方が優先。

女の子の方に振り返るととても驚いたような顔で俺を見ていた。


「い、今のはなんですか?」


「まあ俺の使う魔法って、ところかな」


「そ、そうでしたか・・・。 」


「そういえば君名前は?」


「申し遅れました。私はコルマノン王国の第2王女のアルレット・オブ・ガンブランです。この度は助けていただき誠にありがとうございます。」


俺は腰につけてるステージドライバーを外し、変身を解除した。


「俺は吹雪正太、まあ通りすがりの旅人ってところだ」


こうして、俺の「ストーリー」としての物語は幕を開けた。

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