第91話 その後のみんな
この後、壊れてしまった物だとか、傷ついてしまった人たち……つまり、この出来事によって起こったその影響や物事を解決させ、一旦もとのマンションの屋上へ集まる事になった。
なにをするかとかは伝えられていないが、多分この後のこととかを伝えるのだろうということはなんとなく予想することができた。
コンコン……
片手を扉まで伸ばしてその扉を叩くと、その扉の中から見知った声が聞こえてきたので、僕はゆっくりと扉を開いた。
どうやら僕が集まる最後の一人だったようで、残りの聖女様やメイド、そしてくノ一や楓さんはもう集まっているようだった。
「あっ、無事でなによりです。それで、そのー……魔族はどうなったのでしょうか? あなたが生きてこれたということは、もしかして……?」
聖女様が僕の顔を見るとパァッと笑顔になり、そう聞いてきた。嘘のないその笑顔が、聖女様の純粋さを示しているようだった。
「……いえ、魔族は討伐することができませんでした。力不足でした……」
「……そうなんですね、でも、命は魔族を討伐すること以上に大切なことです。あと、私達ではあなたには敵いさせしないんですから。しょうがないことです」
「……ありがとうございます」
こういう時、聖女様は本当にすごいと僕は思う。期待が外れてしまったときだったりとか、そのときにがっかりすることは確実だろう。なのに、そんな素振りも見せずに、こんなにも人を安心させる力を持っているんだ……。
「それで、どうしましょうか? 一旦敵は退いたのです。となると、油断はできませんが明日に再び襲ってくる確率は低いはずです。……あっ、そうです、そういえばこの騒ぎが起こる前にあなたのお願いとかなんとか言っていましたよね?」
「あー……」
……そういえば、この聖女様……あと、今回の作戦にはなかったことだが剣聖の人も連れていかないといけないというのは、さすがに地球を守るためとはいえ、信じてくれそうになかったから先延ばしにしていたな……。
どうしたものかと、ため息をつく。
一旦魔族たちが退いたとはいえ、まだ生きているということは必ず戻ってくるはずだ。聖女様がなんども被害を受けているといっていることから、一度だけでなく襲ってきていたのがわかるから。
そのため、今言うのもなんだか無作法というか、お門違いな気がする。でも、僕の事情を知らないわけだから、無作法なものを話されるとは聖女様は思っていない。だから、話さないというのも少し変な気がする。
だから、僕はこういうことに決めた。
「……少し、考えさせてくれませんか?」
また、先延ばしにするという方法だ。こうすることで、また他の選択肢を考えることができるし、他にも気になることがあったから。
「……まぁ、ここまで先延ばしにしたいと言っているということは、なにか大きい事情があるようですし、……分かりました。待ちましょう。……ただ、待ったら教えて下さいね? できればその願いを叶えてあげたいですし」
「はい、分かりました」
さすが、聖女様だ。願いの内容を知ってしまったらさすがにそんなことは言えないだろうけど、それでも未知のお願いに「願いを叶えてあげたい」と言える勇気があるのがすごい。
「あっ、そうです。そういえばあなたがたは宿とかとっていたりしますか?」
そう言われて、さきほどの戦いによって泊まるとこを決めることを忘れていたことに気づいた。
「……あっ、そういえばとっていませんでした」
「じゃあ、この建物にはいくつか空きがありますので、そこをお使いください」
「え、いやいやそんな」
「私達はあなたがたにすごく助けられているのです。恩返しをしないわけにはいきませんから」
遠慮するのも大事だとは思うが、恩返しと言われれば、受け取らなければそれはそれで相手に失礼なのかもしれない。
そう考えた僕はその聖女様の提案にのることにした。
「分かりました。では、お言葉に甘えて」
「良かったです、では、部屋の案内をしますので、行きましょう!」
「え、別に言葉で言ってさえ頂ければ、ちゃんと一人でいけますから。そこまで苦労をかけ……」
「大丈夫ですから」
「……はい、分かりました……」
そして、聖女様直接の案内のもと、自分が今日住むための部屋へ到着した。その後、目の前にある扉に手をかけたのだった。
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