第82話 撤退と作戦

 なんとかあの聖女騒ぎの中心からは逃れて、とりあえずその騒ぎのない小さな小屋に隠れさせてもらった。


 ここは、モンスターも周りに存在しているし来る人なんていないだろうから。だから、多分この小屋に住んでいた人もあっちの方に避難しただろうし。


「……で、どうする?」


《さて、どうしましょうか? スキル使用を感知されるのはズル過ぎますね。これによって、あなたの存在ももしかしたらバレているでしょうし……》


「そうだよね」


 そうなのだ。スキルを使ったらなにかが潜伏していると聖女様たちは疑われている可能性が高い。だって、スキルを使っているといったときの周りの騒ぎようが……


 スキルを使う人=悪いやつ


 ……みたいな考え方を持っている人が叫んでいたようで。多分、住んでいた人たちはモンスターを殺さずにレベルという存在を知らない人たちなんだろう。


 門番は、多分モンスターを倒しているんだろうが。


「でも、本当にどうやったんだろう? まず、あの門番がスキルを感知するスキルを持っていたのかな? それとも、念話というスキルで誰かに伝えられた……とか?」


《分かりませんね。ただ、可能性が高いのは念話という方法でしょう。そんなスキルを持っていたのなら、この町の中でもかなりの上位の権力を持てると考えます。なのに、門番をしているとなると……》


「……なるほどね。普通、そんなスキルを持っていたら門番よりもっと上の職業になるはずなのにね」


 そういえばそうだ。それに、スキルを感知するスキルなんて、そうそう集まらないだろう。となると、そのスキルを持つやつはおそらく、一部分だけを守るためだけには使われないだろう。


 どこか高いところに立ってここ一体を確認し、気付いたら念話をするほうが随分効率がいい。


 ……はぁ。今だけわかった存在だけであっても、聖女様に、なにかモンスターが入ってこなくする何かを作るやつ、さらにはスキルの使用を感知できるやつ……か。


 どんだけいるんだよ。


「とりあえず、僕も楓さんもスキルを使えないとなるとまずいよね。そして、ナビゲーターも使えないだろうし。スキル無しでなんとかなると思う?」


「無理でしょ」


《なんとかなりませんね。》


「だよねー……」


 これは予想以上に厄介かも。スキルが使えないとなると今の基礎能力でなんとかしないといけないってことだよね。


「……制限時間もあるし、迷ってばかりじゃいけないよね。とりあえず、もう1回行こう。そして、バレたら感知されてもいいから本気でなんとかする。これでいい?」


「……なんか、適当だね」


《ですね。でも、なんの方法も思いつかないので、それで行きましょう。》


「うん。よしっ、じゃあまたまた敵地潜入だ!」


「「「おーー!」」」


 そして、今度は違うところから入った。あそこは、スキルを使って誰かがいるとバレてしまったところだ。そこからいくのはあまりにも無謀すぎるからね。


 あと、それ以外にも門番にはあのスキルを使った人が出てきたちょっと前に僕が入ってきていたのは分かっているから、多分犯人が僕らだということは予想がついているんだろう。


 だから、顔も必ず覚えられている。


 そんな理由があって、少しそこから離れたところから入ることにした。


「……大丈夫そうだね」


「そうだね、ここには門番はいないみたい」


「多分、ここにいたであろう門番は、僕たちがスキルを使ったあの場所に行ったんだろう」


 それにしても、あの場所に集まるなんて、ここに入ることを予想していなかったのかな? もう一回そこから入るとでも思ってたのかな?


 ………いや、待てよ?

 

「……っ!? 楓さん、右に避けて!」


「……っ、わかった!」


 突如、なにかがとんできた。僕と楓さんの心臓と脳の近くを飛んできていたことから、これは偶然なんかじゃない。


 これは……罠。


 僕をここに門番がいないと思わせて、普通に入らせるために。引っかかったわけだ、僕たちは。


「やっちゃったぁ……」


 後ろを見てみると、地面に手裏剣のようなものが刺さっていた。4つ。


《探知》《望遠》


 ……いた。あの人か。何か、忍者っぽい服装をしているから、多分職業も忍者なんだろうな。……ん? 女性? それなら忍者じゃなくて、くノ一かな?


 まぁ、そんなことはどうでもいい。


「……おっと」


 次は、どこから飛んできているのかが丸わかりなので普通に避けることができた。飛ばしてきている人はまだ見つかっていないと思っているらしい。


 だから、驚いていた。当たるって思っていたんだろう。でも、相手が悪い。もう種族的にも人間やめているからね。


 また逃げようかと思ったけど、手裏剣を飛ばしてきた人は僕が見る限りどうやらひとりだったし戻ってもどうせなにも変わらないので、あそこまで行ってみることにした。


「じゃあ、まずは楓さんから……」


《転移》


「あと、僕も……」


《俊足》


「なっ!」


 僕が、その手裏剣を飛ばしていた人のところへ向かってみると、急に僕らが現れたからか、驚いていた。


「あっ、どうも。勝手にすみません」


「ど、どうして……」


「あの手裏剣……あなたが投げたんですよね。ちょっと話をききたいんですけど?」


 ちょっぴり脅しのようになってしまったのは認めるけど、まぁ殺す気だったんだから別にいいよね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る