第83話 新しい敵

「ど、どうして……」


「あの手裏剣…あなたが投げたんですよね。ちょっと話をききたいんですけど」


 ちょっぴり脅しのようになってしまったのは認めるけど、まぁ殺す気だったんだから別にいいよね。


「な、なんで……。お前、聖女様は殺させない!」


「…………え?」


 いや、別に僕はなにも聖女様を殺そうとはしていないんだけど、なにか勘違いをしているよね?


「いや、別に殺そうとは考えてないですけど?」


「嘘つけ! 私が……聖女様直属である私が投げた手裏剣が当たらないってことは、あいつらの一員くらい強くないとあり得ないことだ!」


 あいつら……ね。


 僕とは違った理由ではあるけれど、同じく聖女様のことを求めている(変な意味じゃないよ)人がいるらしい。あいつらと言っていることからそれも複数だと分かる。


 大変なんだな、聖女様も。前に立っていう人は。


「いや、別にあいつらっていうのは知らないですけど、あなたの手裏剣を避けられたのはあなたが手裏剣を投げるところを見ていたからですよ? 見ていたら、避けられますよね」


 まぁ、半分は嘘なんだけどね。一回目のときは見てなかったし、それにあの手裏剣は結構速かったから見ていても普通の人だったら避けられるかは微妙なところだし。


「……見ていた、だと?」


 何か、疑問そう? 変態だとか、そういうことを言うのを迷っているとか? いや、別に僕はそういう意味で見たわけじゃないんだけどな。


「いや、まぁ…そうですけど?」


「……なんでだ? きちんと《隠密》を使っていたはずなのに……」


 ん? 隠密? 今、このひと隠密って言った?


 ……またやっちゃったぁ……


 普通に見えてしまうから、思わず……スキルって格上の相手には薄れてしまうらしいから、見えてしまったんだろうな。


 でも、確かに。結構注意しておるつもりだったけど、手裏剣を投げられるまでは存在に気づかなかった。


 よしっ、聞こえないふりをしよ……っと。


「ん? なんて言ったんですか?」


「いや、なんでもない。……お前らは本当にあいつらとは違うんだな? 聖女様を殺しに来たんじゃないんだな?」


「もちろんですよ。それで、聞きたいことなんですけどあいつらって誰なんですか?」


「んー……よしっ、じゃああそこで話そう。付いてこい。お前らは結構強かったから、あいつらに対抗できるかもしれんし」


 そのくノ一が指差していたところはでかいマンションだった。あそこの屋上に聖女様がいたりして。


 それにしても、なんか勝手にあいつらって誰かは分からないけどその人たちと戦うってことになってるじゃん。


 まぁ、そうすれば聖女様を連れて行くのに役立つかもしれない。乗ってやるか。


「分かりました」


 僕は、そう言うとこのみんなでマンションの方へ向かった。








 マンションのある一室に入らせてもらった。何も家具とかが置かれていないことから、取締室みたいな、そんな印象を受ける。


「それで、あいつらの話なんだが、そいつらはまず言っておくが人間だ」


 人間……か。モンスターが存在するようになったというのに、それでも人間同士の争いは耐えないのか。


「そして、その下っ端はなんとかなるんだが、問題はリーダーだ。そいつだけなぜか段違いに強いんだ。前にそいつの弱点を見つけようとして監視していたんだが……モンスターに襲われていなかった。近くにモンスターが通り過ぎても……モンスターはなんの反応もしないんだ」


 ……は? モンスターが反応しない? それはさすがにおかしいだろ。あの青年から聞いたんだけどモンスターは僕らを殺すためにきたやつら。だから、殺しに行こうとしない自体おかしすぎる。


《それ、もしかしたらなにか分かるかもですよ?》


 え? 知っているの?


《はい、魔族というやつらの可能性が高いです。悪魔とは違った種族でして、人間の姿をしているんですけど、どちらかといったらモンスターの方に近いですね。そのため、モンスターに襲われません。》


 魔族? 魔族って、ラノベ調べだと魔王の配下で街一つぶっ壊して地球ぶっ壊して……


《ん? 地球をぶっ壊すってなんですか? それはさすがにおかしいですよ。どんなおかしいラノベと言うやつを見たんですか? 地球壊れたら終わりじゃないですか。》


 いや、さすがに言い過ぎた。うん。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る