第81話 聖女様の住む村

「ここ……か?」


「そう、だと思う」


「ここ……なんでしょうね」


 僕らは、聖女様が住むところであろうところに来ていた。どうして教えられたのはあくまで目安なのに、どこに住んでいたのかわかったかって?


 ……見れば分かる。


 そこだけ、すごい活気があったのだ。みんなが普通に道を歩いていてモンスターは1体であろうと存在しない。


 みんなが普通に暮らしていたのだ。違うところがあるとすれば、ところどころに武装をした人がいるくらいで、多分門番だろう。


 門番がいるということは、モンスターはまだ少し入ってしまうということか? ゲーマーのセーフポイントのように制限みたいなのがある職業を持った人が村の中にいるということか?


「……もしかして、これも聖女様の力?」


「……いや、ないでしょうね。ありえません、こんなこと。聖女……様は治癒能力や解呪能力しか持ってないので。まぁ、それがすごいんですけど」


「……じゃあ、聖女様の他にもやばいやつがいるってことか。」


「……そういうことですね」


「ねぇねぇ、それって交渉がさらに難しくなるってこと、だよね?」


「うん、そういうことだろうね」


 僕は、暗い話題ではあるんだけど、それでも明るく接した。楓さんを悲しませたくないから。楓さんを笑わせてあげたいから。


「とりあえず、行こうか」


「うん、そうだね」


「……おい!」


 ふと、叫び声が聞こえた。僕は、気になってみてみると武装していた門番のようだ。顔から見るに、僕らのことを疑っている。


《念話…ナビゲーター》


 なぁ、やばいな。ナビゲーター、一旦僕の頭の中に隠れて。


 『あっ、念話ですか。急にはやめていただけると。急に頭の中に話しかけられるような感覚……ちょっと変な感じになるんですよ。……まぁ、はい』


 ……す、すまん。そして、次!


《念話…高木楓》


 か、楓さん!


 『うひゃあ、びっくりしたぁ。なにこれ?』


 念話だよ。スキルのね? それで、お願いがあるんだけど……


 『おおー、すごいね。で、なにかな? なんでもいいよ!』


 その、何があっても喋らないで。


 『なんで? ま、まぁ……分かったよ』


 ……と。よしっ。


「お前ら、何しに来たんだ?」


「あの、いろんなところにモンスターが現れたんで、ここに避難してきたんですよ。そしたら、こんな世の中なのにここまで賑わっていて驚いていただけですよ」


 これぞ、嘘の塊!


「本当か? まぁ、いい。ここで立ち止まるなよ。他の通行人の邪魔になることを忘れるな!」


「……あれ? ……あっ、分かりました。」


 あれ? 意外に軽いんだね。結構、苦労するんじゃないかと覚悟してたんだけど。


「意外に軽かったね」


「そうだね。それで、聖女様ってどこにいるんだろう?」


「うーん……分からないよね。よしっ、シラミつぶしにさがしていくか。楓さんはちょっと待ってて」


「う…うん……。分かった」


「《気配遮断》」


 そして、僕は聖女様を探すためにシラミつぶしに周ろうと決め、宛もなくとりあえず走ろうとしたその時のことだった。


「誰だ! スキルを使ったやつはどこにいる!」


「…………なっ!」


 先程の門番がそう叫んでいた。それに反応して、その付近にいた人たちも少しずつ騒ぎ始める。


 なんでばれたんだ? もしかして、門番たちはモンスターをここに入れないためじゃなくて、変な考えを持つ人間をここにこさせないためにいる……ということだったのか?


 じゃあ、モンスターを入らせないスキルを使っているだけじゃなくて、スキルを使ったことを知らせるスキルも使っているということか。


 厄介だ……! こうなったら。


《念話…高木楓》


「おいっ、誰だ!?」


 楓さんっ、逃げるぞ!


 『うっ、うん! 分かった!』



 そして、ぼくたちは一旦避難することにしたのだった。


 これは、予想以上に難しい……。スキルを使わずに聖女様を探して交渉して……すべてを行わないといけないというのことか。


 僕は、どうすればいいのかまったく検討さえ付かなかった。


 どうやら、モンスターと戦うことも大変ではあるけれど、それよりと知能が高い人間と戦う方が、予想以上に厳しいらしい。

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