第4章 聖女様と剣聖、そしてその仲間
第80話 みんなでピクニック
「えーっと、ナビゲーター。聖女……様は、どこにいるのか分かる?」
「はい、分かりますよ。大体の目安ですけどね。じゃあ、ちょっと地図広げますねー。よしっ、ここらへんです」
僕たちは今、もう聖女……様探しに出ていた。ちなみに、様をつけているのはあの青年に言われたからだ。
様をつける習慣がないと、聖女様を慕っている人に怒られて連れてくる可能性が低くなるからと、そう言われた。正直、なにか恥ずかしいけど地球を守るためだ。しょうがない。
っていうかそれよりも、慣れないことがある。例えば、天気を確認するために空を見ようとする。それができない。
うん、困った。
上が見えないんだよ? だって、なぜかナビゲーターは僕の真上に居座っているから。しかも、ナビゲーターはスカート。
うん、困った。
しかも、間違えて上を向いてしまったときに楓さんからちらっと睨まれる。じーって睨まれるよりも、ずっと怖い。
うん、困った。
僕に自由はないらしい。
「ここか……。結構遠いね。まぁ、全力で走っていけば2日くらいで着くけど」
「でも、その間に観光とかもしたいよね。モンスターと戦うっていうのも大事だけど、楽しむのも大事だから」
「そうだね。一応、制限時間はあるから少しだけだよ?」
「はーい」
「それで、そろそろ太陽も真上に上がってきてちょうど正午ですけど……あそこに公園もあるしピクニックとかどうです?」
「あぁ、それいいね」
「ナビゲーターさん、ナイス!」
「ありがとうございます」
今では、3人でコミュニケーションできるから、ナビゲーターと楓さんが話をできて、より楽しく過ごせそうだ。
「着いたー。じゃあ、《アイテムボックス》」
そして、下に敷くシートと、なんとなく作っておいたサンドウィッチを取り出す。
「おー、千尋くん、準備がいいね」
「まぁね」
「「「いただきまーす」」」
「美味しい……!」
「やっぱり、不思議な感覚です。食べるというのは。未だに慣れませんね……」
「あぁ、そういえば、ナビゲーターは今まで何も食べてこなかったもんね」
《はい、はじめての感覚です。これが、美味しいというものなんでしょうか?》
「そうだよ、多分」
その後も、いろんな話をした。せめて、この間だけでもモンスターのことは忘れていたかったから、結界を張ってモンスターの事についてじゃなくて、昔話をした。
モンスターを忘れて、こんな話ができたのは、本当に久しぶりですっごく楽しかった。
「「「ごちそうさまでしたー」」」
「……そうだ、じゃあナビゲーターと楓さんは女子会でもしておく? 僕は、することがあるから」
「んー? 私は手伝わないでいいの?……まぁ、分かったけど」
「私もですか?まぁ、楽しいのでいいですよ」
そして、僕は大型スーパーへ来た。
「……ふぅ」
僕は、まだまだ気楽にいてほしかった。だから、僕は食料集めと言って現実に戻すんじゃなくて、用事があると言って抜けてきた。
「じゃあ、集めるか」
自分たちの分だけならみんなにあげた分を除いても、あの人がくれたからなんとかなっている。けど、今から行くのは大勢の人が集まっているところだ。
聖女様を連れてくるには、なにかあっちの方にも利益がないと必ず認めてくれないだろう。だから、食料を集めないと……!
「……足りるかな。聖女様の人気、どれだけ高いんだろう? でも、治癒魔法っていうのはこの世界だし、需要あるよなー……」
それで、聖女様のおかげでどれだけ助かったのかは分からない。多分、子供の命も助けていることだろう。
そしたら、大人たちにとっては自分の命よりも大切なものを救った人がいることになる。つまり、食料なんで交渉はできないだろうな。
「……さーて、どうしようかなー……」
どうやって交渉を成功させるかは、なににかかっているんだろ。それを見つけない限り、先には進めないな。
「なにが、『鍵』だ?」
僕は、大型スーパーの食料を取り続けながらそんなことを考えていた。ちなみに、ここに隠れて住んでいる人はいるだろうから、食料はすべて取るような真似はやめることにした。
自分が食料を取られたって思うと、結構苛つくだろうからな。少しでも、嫌われないほうがいい。
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