第72話 未来

「……そうだ、それでどうすれば阻止できるんですか?」


「あぁ、脱線していたね。ごめん。まぁ、分かったと思うけど僕はシステムエンジニアなんだ。しかも、最上位。だから、この世界に何個かユニークジョブという存在を作ったんだ」


「これを……あなたが?」


 ユニークジョブ……つまり、仕事を作るってことなんてできるのか? ここにあるオレンジジュースだって困難を極めるだろうに、それ以上のものとなったら簡単に作れるものではないだろう……。


「できるさ。レベルが200を超えていたらね。君もレベルが最上位になり、さらに200になれば、例えば世界をすべて夜にしたりできるよ」


 なに……それ……。地球の自転とか太陽の明かりとか、いろんな法則を無視しているじゃん……。


 それが……ユニークジョブの力……なのか。そして、そんな力を……僕が持っていたのか……。


「一応言っておくけど、異世界人みんながこういう訳じゃないよ。スキルの知識を多く持っているだけでレベルさえ上げれば誰でも追いつくことができるよ。さらに、君たちならもう1厘くらいは阻止できるくらいには強いね」


 1割が10%だってことは、1厘って0.1%くらいしか阻止できないってことじゃん……。まぁ、一人でそれ相手に戦うとなったらかなりの戦力になることはなるけど。


 ……でも、それなら、僕みたいな人が何人もいないと阻止することはできないってことでしょ? 自慢じゃないけど、そんな人を見たことがない。


「ん? ……って、もしかして……!」


「あぁ、それで合ってる。君みたいな人を集めるんだ。まぁ、1番強いのは君なんだけどね。君の成長にはさすがに驚いたよ。こんなに短期間にこんなになるなんてね」


「……まぁ、いいじゃないですか。でも、僕のようにユニークジョブを持っている人を集めれば、阻止できるんですか?」


「うーん……わからない。けど、人数やテクニックで劣っている今、強さでゴリ押しするくらいしか方法がないんだよ。だから、探してきてほしい」


「……分かりました」


「じゃあ……」


「………ん? じゃあって何ですか?」


「君と力比べといこう。強い人を見ると、やっぱり戦いたくなるもんだね。久しぶりに、ちょっとくらいは本気だせるかもしれないなぁ」


「あっ…………」


 忘れてたぁ……。あまりにも真面目な話をしていたから、この人がヤバそうなやつだってことを忘れてた。


《……とりあえず、頑張ってください。》


 それ、僕が生きる望みを諦めているよね? ね? 絶対にそうだよね?


「それ、絶対にですか……?」


「うん、絶対に」


「……はぁ、分かりましたよ」


「ありがとう」


 それにしても、戦闘系の職業なのかと思っていたけど、技術系の職業なのかよ……。それで、ドラゴンを素手でよく倒せたな……。


《一応、君も戦闘系の職業ではありませんけど、またひとりで倒したわけではありませんがドラゴンを倒していますよね。》


 うーん……でも、あの人が倒したのは僕が倒したやつの何倍も強いやつだよね? 古代種とかなんとかって言っていたよね……


「はぁ……」


 ……とりあえず、生きて帰ろう。


 僕と青年は、家の中の訓練所に向かった。


 戦闘なわけだし、家の外でやると思っていたので意外だったけど、確かに技術系とはいえレベルが200を超えていたら森とか壊してしまいそうだと、そう思うことで納得した。


 それに、納得した理由はもう一つ。


「すげー……。って、なんかおかしくないですか?一応、外から見ていましたが広いとはいえ、こんなに大きい訓練所が入るとは思えないんですけど」


 そう、訓練所が、あまりに広かったからだ。


「あ、あぁ。それは創造スキルでアイテムボックスを参考にした部屋を作ったんだ。少ない体積で大きな容量が入る部屋を」


「へ、へぇ……」


 さすがチート人間だ……


「じゃあ、あそこに立っていて。僕はあっち側にいるよ」


 指定されたところまで向かう。そして、向かい側にいる青年の方を向いた。


「じゃあ、始めるよ! よ〜い……」


 ……ふぅ……。よしっ。


「ドンッ!」


 そして、青年の掛け声とともに、死ぬかもしれない、洒落にならない戦闘が始まった。

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