第47話 作戦会議と潜入捜査
「それで、どうだったの?」
お母さんは、緊張しながら僕に聞いてきた。声も若干震えているように感じる。結果はやっぱり気になるよう。
……大事な人の生死がかかっているわけだから。
「その、蔵の中に、穴がありました」
「……穴?」
「はい。とても深く、底が見えないくらいの。あれは……人外な技です。この町の住人には………というか、とても僕には作れることができないような」
「……と、いうことは、そこに……」
「多分……いるでしょう」
「生きている可能性は……?」
「……正直に言えば、低いと思います」
「そんな……っ!」
「でも、生きている可能性は0ではありません。生きている可能性もあるということです。それに、僕は……頑張れば生き返らせることも可能かと」
「………え?」
……そう。僕は、前に見つけたのだ。僕のスキル、ネットショップで。そのレベルが上がって、最近買うことが可能となった薬。それは……
『蘇生薬』
でも……買えない。高すぎる。だけど……存在するとだけ言っておいたほうが、さらに希望を持つことができるはずだ。
「それでなんですけど……僕が、蔵の穴の中に行ってもいいですか?」
「でも……そしたらあなたが……」
「僕は大丈夫です。お父さんを助けなくていいんですか?」
「でも……」
「お願いします」
「……分かったわ。でも……必ず帰ってきてね」
「はい、もちろんです」
少しでも安心させようと、僕は笑顔を作る。正直言うと不安で、手は震えていたけど、それはお母さんに見えないよう、背中に隠した。
「……ねぇ、私も千尋くんと穴の中に一緒に行っていい?」
「……迷惑は、かけないのよ?」
「……うん!」
そして、その後もちょっとした作戦会議を楓さんとして、終わってから数分後に目的の場所へ向かった。
「それにしても……暗視を使ってもまるで底が見えない。すごい真っ暗だ」
「落ちても大丈夫なの?」
「うーん……そうだ、重量軽化を使うか。そうすれば、落ちるのがゆっくりになるし」
「そうだね、お願い」
「《重量軽化》………よしっ。せーのっ」
「「…………え?」」
僕は、楓さんと手を繋ぐと、スキルを使って穴の中へ飛び込んだ。
しかし……落ちなかった。
いや、落ちたは落ちたんだけど……ほとんど落ちてない。10メートルも落ちてない。
「えっ……ちょ……」
「……わたしたちって、今さっきなんのための覚悟を決めてたの?」
「……さぁ?」
僕は、どういうことか考えるために、上を向いてみると、驚きの光景が目に入った。上には、真っ暗な穴があったのだ。
「……どういうこと?」
「これは……幻術かなにかで、僕たちはすごい深い穴だと錯覚してしまっていた……っていうことか」
「っていうことはやっぱり……」
「うん、人為的なものだ。……しかも、ゴブリンなどの弱いモンスターとは違い、ワイバーンのように知性があるらしい……」
「そんな……」
「……ワイバーンより強くないといいんだけどな」
「ん……? どうかしたの?」
「……あっ、いやいや、なんでもないよ」
幻術を使うモンスター……か。
厄介だな。それに、知能まであるとすると、自分自身に幻術をかけられたりしたら……僕は、空間操作の空間探索でなんとかなるけど……楓さんは探索系スキルを持っていないし……。
そうだ、危険になったら、僕の《転移》で逃がすか。僕自身には使えないから、僕は頑張ってみるしかないけど。
「それにしても……この壁……」
「うん、ラノベで見た情報だから信じられるのかは分からないけど、ダンジョンっぽいね」
「ダンジョンかー……。緊張するなー……」
「まぁ、言ってみれば、この世界もダンジョンとあんまり変わらないんだし」
「それもそうだね。」
この世界もダンジョンとあまり変わらないんだし……か。
この世界は、ダンジョンなのだろうか?
まぁ、今はそんなことを考えても無駄なことだよね。今は、このダンジョンに集中しないと!
そして、歩いていると何か僕の探知に引っかかった。なにかしらのモンスターであることは間違いない。
「……あれは……ゾンビだ」
「じゃあ、楓さんは待ってて。僕が倒すから。《アイテムボックス》」
ドンッ、と音を立てながら、廃車をゾンビ目掛けて落とす。ゾンビは潰れて消えていった。
《経験値を獲得しました。》
ふむ、これならなんとかなりそうだ。アイテムボックスならマジックポイントも消費しないし、最後の知能を持っているモンスターまでに、使わずにでも立ち向かうことができそうだ。
「……は?」
なんて考えて油断していたせいだろう。僕は驚いて、思わず間抜けな声が出た。
死体は動くわけ無いと思いこんでいたから、動くとは思いもしなかった。
……そう、なぜか、消えたはずの死体がまた蘇り、動いていたのだ。
「ちょ…………えぇ?」
どういうこと、ナビゲーター? 僕、こんな現象は見たことないんだけど。
《それは、名前の通りのゾンビだからですよ。ゾンビというものは一度死んでいるんですから。もう一度死んだって変わりませんよ。》
なにそれ……。不死身じゃん……。
《いえ、不死身ではありませんよ。聖属性魔法を使えばいいんですから。》
そうかそうか……って、僕は持ってないよ? それに、今は魔力が0でスキルでしか魔法的なものも使えないし。
《スキルであるじゃないですか。チートなスキル 生活魔法が。生活魔法は、どんな属性の魔法でも弱体化しますけど、使えるんですから。》
「……え?」
生活魔法は、まぁ小さな火……と言えるのかは分からないけど、小さな火だったり、小さな水だったりだよね。でも、聖属性も使えるんだ……。
《生活魔法…………》
いや、ちょい待ち。どう使えばいいの? 聖属性って、思い浮かべることができないんだけど。
《うーん……聖属性っていうのは治癒魔法も含まれていて、だから、生を司る魔法って言えばいいんですかね? だから、生きているってことを想像?》
うーん……分かんねぇ……。まぁ、それを無理矢理にでも発動しないとこのゾンビには勝てないんだから、頑張ってみるか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます