第39話 4人との会話

「え……えーっと……」


 あたふたと声を震わせる。


 どうしよう、なにも考えていないんだけど……。やっぱり楓さんは、勝手に名前とか出されるの嫌だよな。


 そして、僕はそんな予想外の自体に戸惑って考えがまとまらないでいると、誰かがまたまた予想外のことを言ってきた。


「ねぇ、私。この高木 楓っていう人を知っているんだけど……」


「えっ、そうなのか?」


「えぇ、入学式に出てた人は全校生徒の名前を覚えておいたの。たしか、1週間で不登校になった人だったわ」


「1週間で……」


「不登校……」


 なっ……考えてみればこのみんなはいわゆるエリートチームだ。みんなが、常に人の前に立つような人。生徒の名前を全員分覚えることくらい、容易いことなのかもしれない。……それにしても、全校生徒の名前を覚えるってさすがだな。


 やっぱり、人気者は違う……。


 でも、現実逃避している場合じゃない。果たして、どうすればいいんだ?


《……それなら、隣のアパートに住んでいる人って正直に言えば良いんじゃないんですか? こんな状況ですし、別にパーティ登録されていてもおかしくないと思うのでは?》


 ……あぁ、なるほど。ありがとう。


《ありがとうございます。なにか、ようやく役に立てた気分です。》


 ……あっ、なんか気まずい。


「実は、楓さんは僕と同じアパートで暮らしてて、それもとなりの部屋に住んでいるんだ。だから、それぞれの安全のために、パーティ登録をしているんだよ」


「へぇー、偶然だな」


「でもまぁ、それなら納得できるな」


 よし、なんとか納得してくれた。このままいけば、とりあえずはなんとかなりそうだ。


「じゃあ、その人は今、どこにいるんだ?」

 

「楓さんは、楓さんの親友に会いに行っているらしいです。ほら、みんながここに来る前、人がいたでしょ?」


「あっ、そういえば。あの人が高木さん、ね」


「それにしても、青柳のステータスは馬鹿に高いな。私の3倍くらいはあるんじゃないのか?」


「そういえばそうだな。高木ってやつを見ていて忘れてた。……ってか、なにこのスキルの多さ! やばっ!」


「本当じゃん!」


 みんなが目を丸くして驚いていた。えぇー……まだ結構下げたのに高いと呼ばれないといけないの?


 みんなには、ステータスがこうみえているはずだ。


名前 青柳千尋

人間 LV22(9)

HP 48/48(24)

MP 54/54(27)

力  44(22)

耐久 62(31)

敏捷 75(33)

器用 45(23)

魔力 0

SP 2

JP 6


職業

引きこもり((上位))Lv6

(運び屋Lv8)


(ユニークスキル

ナビゲーター、空間操作)


スキル

孤独耐性Lv10ストレス耐性Lv10恐怖耐性Lv10気配遮断Lv10鑑定妨害Lv10(生活魔法Lv6)肉体強化Lv3敵意感知Lv1危機感知Lv2麻痺耐性Lv1(MP自動回復Lv5)瞑想Lv4望遠Lv2聞き耳Lv2暗視Lv1潜伏Lv6(結界Lv6)(無音結界Lv6)(無臭結界Lv6)(HP自動回復Lv6)(ネットショップLv6)(逃げ足Lv8)(俊足Lv8)(幻術Lv8)(探知Lv8)(アイテムボックスLv10)熱耐性Lv1寒耐性Lv1物理耐性Lv1毒耐性Lv1


 みんなには、かっこの部分は消えてみえている。だから、例えば力だったら、カッコのなかの22の分だけ消えているということだから、44−22=22となり、力は22に見えているということだ。


 また、引きこもり上位の方は、上位がカッコで囲まれているから、ただの引きこもりに見えているということだ。


 本当にすごいよな。これ。


 それにしても、じゅう……何個かものスキルの量を減らしたのに、まだ多いって言われないといけないの。


 でも、かと言って今減らしたら疑われそうだから……。


 こうなったら……!


「え、えーっと、これは、いろんなことをしていたら、いろいろとスキルが習得できるようになっていたんだ」


 一応、ちゃんと事実だし問題は……ない……と、思われる。


 自分自身、あまりに無茶苦茶な言い分だなとは思う。けど、それしか思いつかなかったのだ。


「へぇー、そうなのか?」


「あっ、うん、ずっと心を静かに……っていうか、しずめていると、瞑想とか手に入ったし」


「ありがと、試してみるよ」


「私も、試してみようかしら」


 その後も、僕がナビゲーターで教えてもらったことを、少し誤魔化しながらも説明して感謝された。


 クラスの中心人物がお礼をしてくれることには違和感しかなくて、なぜだかむず痒い気持ちになった。



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