第12話 ワイバーンに出会った日

「とりあえず、1日ぶりのステータスだね。」


《それって、別の方向から見てみると、いつも見ていると言っているようなものですが。》


「はは……。でも、この、モンスターが存在するようになって1日目は毎回レベルが上がったりするたびに見ていたからね」


《まぁ、そうですね。》


 じゃあ、早速、レベル3のときから見ていなかったけど、確認だ。


「《ステータス》」



名前 青柳千尋

人間 LV8

HP 7/7→12/12

MP 12/12→18/18

力  3→8

耐久 8→13

敏捷 7→12

器用 4→9

魔力 0

SP 25

JP 25


職業

引きこもりLv5


ユニークスキル

ナビゲーター


スキル

孤独耐性Lv5ストレス耐性Lv5恐怖耐性Lv5気配遮断Lv5鑑定妨害Lv5生活魔法Lv2肉体強化Lv1敵意感知Lv1危機感知Lv2麻痺耐性Lv1MP自動回復Lv2瞑想Lv1望遠Lv2聞き耳Lv1暗視Lv1



「えーっと……まずはジョブのレベルを上げるか。……おっ、25ポイントなら、レベルが8まで上げられるな。じゃあ、8まで」


《はーい。分かりましたー。》


《ジョブポイントを21ポイント使い、引きこもりを8まで上げますか?》


「はい」


《引きこもりのレベルが8に上がりました。》


《職業レベルが一定に達しました。》

《スキル 孤独耐性のレベルが8に上がりました。》

《スキル ストレス耐性のレベルが8に上がりました。》

《スキル 恐怖耐性のレベルが8に上がりました。》

《スキル 気配遮断のレベルが8に上がりました。》

《スキル 鑑定妨害のレベルが8に上がりました。》


「よしっ、これで職業の方は終わったな。それで、次はスキルポイント。獲得可能なスキルを出してほしい」


《はーい。》



・毒耐性・睡眠耐性・気絶耐性・火魔法耐性・水魔法耐性・風魔法耐性・土魔法耐性・雷魔法耐性・闇魔法耐性・光魔法耐性・氷魔法耐性・火属性魔法・集中・剣術。



「新しいのは、剣術のみか。……それって、清水さんのを見たからなのだろうか?」


《……そうなのでしょうね。まぁ、引きこもりって簡単に言うと無職っていうことでしょ? もちろん例外はありますが。それを置いておくと、つまり、何にでもなれるってことなんじゃないんですか?》


「はは。すごいな。まぁ、短距離戦闘をするつもりはさらさらない。剣術は別に今は使わないし、今あるスキルのレベルを上げるか」


 えーっと……今後必要となってきそうなスキルだろ。それを上げればなんとかなると思うから。そして、考えに考えて決めた。


 その結果がこれだ。 


「《ステータス》」



名前 青柳千尋

人間 LV8

HP 12/12

MP 18/18

力  8

耐久 13→16

敏捷 12→15

器用 9

魔力 0

SP 0

JP 4


職業

引きこもりLv8


ユニークスキル

ナビゲーター


スキル

孤独耐性Lv8ストレス耐性Lv8恐怖耐性Lv8気配遮断Lv8鑑定妨害Lv8生活魔法Lv4肉体強化Lv1敵意感知Lv1危機感知Lv2麻痺耐性Lv1MP自動回復Lv5瞑想Lv4望遠Lv2聞き耳Lv2暗視Lv1


 生活魔法Lv2→ Lv4

 MP自動回復Lv2→ Lv5

 瞑想Lv1→ Lv4

 聞き耳Lv1→Lv2



 まぁ、1番大事なのは、攻撃手段だろう。そのために、生活魔法のレベルを上げた。そして、それを使うためのMPを補うために、MP自動回復、瞑想のレベルを上げた。


 あと、ここに来ている人の行っていることを聞くことでなにか情報収集ができるんじゃないかということで、聞き耳のレベルも。


「こんな感じでいいだろう」


《そうですね。これで、また一歩チートの道へ進みましたね。》


「なにそれ……。まぁ、いいや。とりあえず試してみるか」


《はい。》


 そして、窓から景色……じゃなくて、死体の上を歩くモンスターを見る。相変わらず、何度見ても慣れないもので、少しきつく苦しい。


 よしっ。じゃあ、《生活魔法》。


 ボッ! ボッ! ボッ!


 3発の火だけで、ゴブリンを討伐することができた。


「すごっ、毎回5発とか撃たないといけなかったのが、今は3発か」


《生活魔法3発だけでゴブリンを倒すって……。》


「は、はは……」


 ……って、ん?


「あれは、…………なんだろうか? なにか空を飛んでいるよね? 《望遠》」


 そして、その遠くにいてよく見えない小さいなにかの生き物を見てみる。遠くから見ていても、十分よく見えた。何か、羽のようなものをばたばたとはためかせている。


「あれは……ドラゴン!?」


《いや、おそらくワイバーンですね。まぁ君でもわかるように簡単に言うと、まぁドラゴンの退化版みたいな?》


 なんかよくわからないんだけど、馬鹿にされたような気がする……。いらっときたんだけど。


「……で、まぁドラゴンの退化版か。それでもすごい強そうだよね」


 それで、今ワイバーンはどこに向かっているんだろうか。向かった先は結構やば、そ……。


 ……え、えーっと……もしかしてだけどこれは、この町に向かって飛んでいるような気がしているんだけど……?


《いや、ほぼ確定であのワイバーンはこの町に向かって飛んできていますね。》


 …………。


「ギャァァァアアア!!」


「ひぇっ!?」


 僕は、このようにモンスターが存在するようになってから、初めて恐怖を覚えた。


 まぁ、いつもは遠距離からの攻撃だったために反撃されることが無かったからだろうが、さらにワイバーンの顔つきとかを付け加えると……。


 あれは、どう立ち向かおうとしても無理だ。足掻こうとしても、虚しくやられるだけだ。


 そんなふうに恐怖を勝手に覚えていても、時間は止まることなく、ワイバーンは僕を簡単に裏切るように向かってきている。


「ギャァァァアアア!!」


「……ッ!?」


 ワイバーンがそう叫んだ瞬間に、周りの建物が崩れ始めた。しかし、このアパートはまだ距離が離れているために崩れたりすることはなかったが迫力がとんでもない。


「あれは無しだろ……。……っ。」


 ワイバーンって……この町というより、ここに向かっている? 


「ギャァァァアアア!!」


 3度目の叫びはもうよほど近づいているのか、それともここがぼろ……古いからなのか、すごいガタガタいっている。


 そして、恐怖で自分の身体も。手なんて、痙攣レベルで震えていて、足も今にも崩れ落ちてしまいそうなほどだ。


「ハァ……ハァ……」


《スキル熟練度が一定に達しました。》

《スキル 恐怖耐性のレベルが9に上がりました。》


「きゃあああああ!」


 どこからか小さく横から女性の声が聞こえた気がした。おそらく、多分気のせいだろう。ナビゲーターという可能性も……?


 いや、違う……。もしかしたら隣の人が女性だって聞いたから、もしかしたら避難せずにここに留まっているのかも。


 でも、そんなことを考えていたのだけれど、そんな興味よりもワイバーンの恐怖のほうが何倍も強くて、一気にその恐怖で僕の頭でいっぱいになった。


 その後、くるまりながら隠れるように待っていると、ワイバーンは僕が住んでいるアパートの真上を通り過ぎ、どこかへ去っていった。


 違う目的だったよう。もうワイバーンは消えたけれど、でも、しばらくは恐怖が残ったままだった。


 そして、なぜか恐怖とはまた違う1つの思いを胸に抱いた。


『いつかは、あのワイバーンを討伐してみたい。一方的ではあるんだけど、僕を怖がらせたのだから、あのワイバーンも怖がらせてやろうか。』


 だなんて。不可能に近いことなのに。

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