第4話 職業が引きこもりになった日
うーん……、学者は、このステータスの数値の中に知能が入っていない今、上がるとは思えないし、上がる保証はない。だから、やめておこうかな。
それで、救命士……は、結構良さそうで迷うから置いておいて、次は料理人。料理人は、器用とかが上がりそうでしよ。それなら、確実に救命士のほうがいいよね。料理人も却下。
で、引きこもり。なんでだろう。なにか引っかかるんだよね。聞いていても、下がるばかりでいいことなさそうなんだけど……。でも、やっぱり防御手段も大事だからなのかな?
《へぇ……。でも、引きこもりがなにか引っかかるっていってもなにがかは分からないんですよね。》
「うーん……」
そして、僕は1時間……も考えていると、外が危険なので、10分ほど、考えに考えて、これに決めることにした。
「決めた、…………引きこもりにするよ。」
《へぇ……。でも、なんでですか? 私が選ぶとしても1番それはないんですけど。耐性スキルがあるとはいえ、攻撃スキルが無さすぎますから。》
「うーん……まぁ、僕が好きなラノベの1つに、みんなから無能と呼ばれている職業の人が、強くなっていく話とかあるんだよね。
《正気ですか?》
「それは冗談として……死んでしまっている人をみて思ったんだ。みんなの分まで生きたい……ってね? だから攻撃手段よりも防御手段を選ぶことにしたんだ」
《でも、そのとおりになるかはわからないんですよ。それに、防御手段だから、動きがおそくなってしまったりするんですよ? また、苦労するんですよ? だって、攻撃手段が存在しない限りモンスターを倒せないんですから。》
「うん。」
《じゃあ、職業を引きこもりにしますよ。後悔したと言われても、もう遅いですからね?》
《職業 引きこもりを選択します。その時に、ジョブポイントが1ポイント減りますが、よろしいですか?》
「はい。」
了承していて、ふと疑問を覚える。
あれ? さっきの声はナビゲーターの声とは違ったな。……あっ、そうか。僕もナビゲーターを取るまではこんな感じの声が流れていたっけ。
つまり、これはみんな用……っていうと変に解釈しちゃう人もいるだろうけど、まぁそういう声ってことだろうね。……それにしても、相変わらず脳内に声が流れるって不思議だ。
《職業が引きこもりになりました。》
《スキル 隠密を獲得しました。》
《スキル 孤独耐性を獲得しました。》
《スキル ストレス耐性を獲得しました。》
《スキル 恐怖耐性を獲得しました。》
《スキル 気配遮断を獲得しました。》
《スキル 鑑定妨害を獲得しました。》
《スキル 隠密と、スキル 気配遮断を統合させます。》
《スキル 隠密が消滅し、気配遮断がレベル2に上がりました。》
「おぉ、もうザ、引きこもりって感じのスキルだね。良さそうのもあるし……なんか良さそうじゃない?」
《え……。》
「なに……? なんか、変なところあったかな?」
《いや、これはすごいです。予想外でした。普通の職業だと、本当は、最大5個のはずなんですけどね……。どういうことでしょうか。》
「へぇ……。なら、この引きこもりっていう職業を選んで良かった……のかな?」
《分かりません。スキルの能力的な差もありますし。でも……もともと引きこもりなんて職業ありましたっけ……?》
さぁ……? もともとを知らないから分からない。でも、出てきているっていうことは多分あるんじゃないかな?
そうだ、とりあえず基礎能力の方も見てみたいから、ステータス画面を開こう。
「《ステータス》」
名前 青柳千尋
人間 LV1
HP 5/5
MP 10/10
力 1
耐久 2
敏捷 1
器用 2
魔力 0
SP 5
JP 4
職業
引きこもりLv1
ユニークスキル
ナビゲーター
スキル
孤独耐性Lv1ストレス耐性Lv1恐怖耐性Lv1気配遮断Lv2鑑定妨害Lv1
「うわぁー……やっぱり基礎能力が低下しちゃっているな。HPとMPとかは、2分の1じゃん。」
《……ふむ。これなら、引きこもりって感じですね!》
「おい、なんか基礎能力が下がっていることを喜んでいたりしない?」
《なんで、喜ぶんですか?》
「いや、ナビゲーターは、引きこもりはだめそうって言っていたでしょ。なのに、スキル量が多くて外れていて、それが悔しくて。」
《いやいや。》
「……まぁ、いいや。じゃあ、職業の次は、多分キラービーとかいう名前のモンスターを倒してゲットしたであろうポイントを使って、レベル上げだ」
《了解です。》
「で、ジョブポイントって、職業にしか使えないんだよね。なら、もう使えるだけ使うとするか。」
そして、ジョブポイントを見返す。…………。
「……一回しか上げられないけど」
《ジョブポイントを2ポイント使い、引きこもりを、レベル2に上げますか?》
「は、はい」
《引きこもりのレベルが2に上がりました。》
《職業レベルが一定に達しました。》
《スキル 孤独耐性のレベルが2に上がりました。》
《スキル ストレス耐性のレベルが2に上がりました。》
《スキル 恐怖耐性のレベルが2に上がりました。》
《スキル 鑑定妨害のレベルが2に上がりました。》
「えっ……まぁ、なにかいろいろと変な声が聞こえた気がするけど、とりあえずはちゃんとレベルが2まで上がっているか確認してみようかな?それに、あと、ついでに基礎能力の確認も。」
《そうですね。》
「《ステータス》」
名前 青柳千尋
人間 LV1
HP 5/5
MP 10/10
力 1
耐久 2→3
敏捷 1→2
器用 2
魔力 0
SP 5
JP 2
職業
引きこもりLv2
ユニークスキル
ナビゲーター
スキル
孤独耐性Lv2ストレス耐性Lv2恐怖耐性Lv2気配遮断Lv2鑑定妨害Lv2
「ふむ、ちゃんとレベルは上がっているな。でも、それにしても……基礎能力が、上がっているところがおかしいな。耐久とはいいんだけど、敏捷が上がっているのがちょっとね……」
《えーっと、分からないですね。でも、私の考えでは、引きこもりって、一人でいたいじゃないですか。》
「うん、でもまぁ何をするにしてもって言うわけではないけど、邪魔されたくはないから、そうだね。」
《そういうことですよ。もしだれかが自分の空間に入ってしまったら、すぐに逃げられるように、っていうことじゃないですかね?》
「あぁー……。でも、言われるとそんな感じがしてきた」
《ほらー、そうですよ、そうです。きっと……おそらくではありますが》
徐々に口が淀んでいく。あまり自信がないよう。
「うん。それにしてもなんだけど、、この数値が上がっているところを見ると、すごいワクワクするよね。めちゃくちゃ強くなってみたいよ」
《私もできるだけサポートしますから、頑張ってください。》
「うん、ありがとう」
応援されるって、ひとりで頑張っているより嬉しいものだな。
僕は、そんなことを考えながら、次のステージに進んだ。モンスターのせいで僕の家族や友達を悲しませたくない……そう、考えながら。
《引きこもり 裏》
勇者、魔王などと同じようにユニークジョブ。しかし、勇者や魔王などとは違い、もともと存在しない職業だったのだけど、例外により青柳千尋に与えられた。この職業を持つ者は、多くの試練がふりかかる。それらをすべてクリアしたその先には…………
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