第3話 ナビゲーターの説明をきいた日

名前 青柳千尋

人間 LV1

HP 10/10

MP 20/20

力  2

耐久 2

敏捷 2

器用 2

魔力 0

SP 5

JP 5


職業

無し


ユニークスキル

ナビゲーター


スキル

無し



「で、まずはこのステータスについて、なんとかしないとね。ナビゲーター、教えてくれないかな?」


 ステータス画面を前にして、ナビゲーターにそう尋ねる。頭の中に話しかけるというのは初めてすることで、やっぱりちょっと慣れない。


《えー……あ、はい。じゃあ、まずは基礎能力についてですね。HP……つまり、ヒットポイントは、まぁ0になると死亡しますね。》

《で、これはダメージを受けると減ります。でも、時間が経てば回復するから大丈夫ですね。まずは、オーケーですか?》


「……分かってはいたけど、やっぱり死んでしまうか……。嫌だな。……あ、うん。大丈夫」


 やっぱり。ゲームのような制度があるといっても……これはきちんと存在している現実だ。死なないとかリスポーンできるとかなんて、そんな甘いものじゃないらしい。


《次は、MP……つまり、マジックポイント。魔法とかスキルとかを使うのに必要とされる力ですね。》

《こっちは、魔力がなくなっても死にはしないですよ。でも、気持ち悪くなったり鬱になったりしますね。》


「おぉ、それは良かったぁ……。魔法とか使えるようになったとき、魔法使いすぎて死んだとかなったら嫌だからね」


《……もういちいち詳しく説明するの疲れたので、ちょっと省略します。》

《力は攻撃ですね。》

《で、耐久は防御の強さを表しています。》

《で、敏捷は走る速さのことです。》

《で、器用はそのまま器用さですね。》

《魔力は、魔法とかの攻撃力ですね。》


「……ちょっと、さっきの説明に比べ適当すぎない? でもまぁ、何も知らないときと比べるとすっごいありがたいんだけど」


《なら、ちょっとだけ丁寧に言いますよ。とはいえ、ちょっとだけですからね。文句は言わないでください。》

《SPはスキルポイントって言ったスキルを習得したり、スキルのレベルを上げたりできます。》

《で、JPはジョブポイントって言って職業を選べたり、職業のレベルを上げたりできますね。》


「へぇー……。ん? スキルはラノベでみたから分かるんだけど、職業も選べるんだね。勝手に決められたりするわけではないんだ? 鑑定の儀をして、職業を得る……みたいな」


《はい。》


「あ、いま、職業を選ぶことってできる?」


《もちろんです、じゃあ選択肢出しますね。》


 ナビゲーターはそう言ったかと思うと、職業の欄に、いろんな職業の名前らしきものが出てきた。


・学生

・市民

・学者

・救命士

・冒険者

・料理人

・引きこもり


「わぉ……、コレのどれかを選べばいいってことかな?」


《うん、まぁそうですね。ちなみに、この職業たちは、君の生き方を表していますからね。》


「え……? そうなんだ」


 でも、改めて見ればそう見えなくもない。学生と市民は、まぁそのまますぎるから、何も考えなくてもわかるよね。


「でも、学者?」


 なんでこんなのがあるんだろう? 僕、頭どちらかといったら悪いほうなんだけど。学校で下の中くらいだし。


「学者って、どういうことなの?」


《すごく頭がいいか、それとも、すごく勉強したか、とかですか?》


 あー……、なるほど。分からなすぎて、長い時間勉強することになったからか。


 じゃあ、そういうふうに考えてみるか。次は、救命士。救命士っていうのは命を助けるっていうことだろ? ……あっ、そういえば小学生のころ、妹が川で溺れそうになったところを助けたから……かな?


 まぁ、それのせいで僕も溺れそうになったけどね。あまり泳げないのを忘れていたんだよね……。あまりにも必死で……。


 それにしても、家族は大丈夫かな……? そういえば、妹はもう中学3年なんだっけ。元気にしてるかなぁ。


 あ、あと、幼馴染の凛も、僕がこの高校に通うことになったときに、凛はそこに残ることになって、別れちゃったんだよな。


 実際のことを言うと、すごい離れるのが嫌だったよ。だって仲良かったし、生活も結構楽しかったからね。


 あー……久しぶりに会いたくなってきた。家族も最近会ってないし。


《はいはーい。後は自由にすればいいですが、今は勝手に妄想入らないでくださーい。》


「うわぁ!」


 恥ずかしい……。そういえば、考えていることがまる聞こえなんだっけ。むやみに変なことを考えないようにしよう。うん。


「で、次は冒険者」


 冒険者は……あっ、あれかなー。また戻っちゃうことになるけど、凛と一緒に近くの森によく遊びに行っていたからなぁ。


 あ、そういえ…………ゴホンゴホン。また、注意されてしまうところだった。はずかしめにあうところだった……。


《私をなにかに勘違いしていません? 例えばストーカーとかハッキングしている人とか、あと変態や犯罪者とかと。》


 ……いやいや、そんな事ないよ。


「で、次は料理人。」


 料理人はかんたんだな。一人暮らしになって、いろんな料理を作ったりしはじめたからね。……さほどって感じの出来ではあるけど。

 

「で、最後の職業は引きこもり。」


 これは、あれだな。学校とか、あと、最低限の食材をするとき以外は、宿題か料理かラノベなんだよね。つまり、あまり外に出なかったからこれがあるんだろうね。


 でも、引きこもりも職業って言えるんだね。……いや、言えないだろ。


「はたして、どれがいいんだろうか? どれを選択したらどんな感じになるとかわかる?」


《うーん……だいたいでもいいですか?》


「もちろん、だいたいでいいから。」


《まず、学生と市民、あと、冒険者は、全体的にステータスが少しずつ上がるんでしょうね。》


「まぁ、そんな感じだよね。」


《で、学者は器用とかが上がるんだと思います。いろんな知識がありますからね。それに、知能がステータスにないから、分からないけど、頭も良くなりそうですね。》


 そういえば、そうだね。なんで知能がここにはないんだろうか? あったなら、真っ先に上げたかったのに。


 ……いや、必要ないのか。


《救命士は、やっぱり素早さが肝心だったりするんですし、守るためには強くないといけないですから、力、耐久、敏捷とかが上がりそうですね。》


 ふむ、結構使えそうな感じだな。生きていくために必要そうな力が上がるのはありがたい。


《料理人は、料理とか作るんですし、器用さっていうのも必要ですし、なんか敏捷とかも上がりそうですし……、まぁ、そんな感じてしょうね。》


「で、最後は……?」


《引きこもりは……器用とか以外、全体的に下がりそうですね。でも、スキルとか、耐性系のものとかだと上がりそうです。だから、攻撃手段よりも防御手段がほしいならこれもいいかもですね。》


「うーん……それを踏まえて、どうするべきかな」


《で、今の選択肢はどんな感じなのです?》


「えー……っと、救命士か料理人、あと、学者、引きこもり、かな?」


《え……? なんか意外な感じですね。》


「うん、市民とか、学生とか、冒険者とか、みんなが普通に選びそうなやつは嫌なんだよね。ラノベみてたら、そんな思考になるよ。」


《は、はぁ……。》


 まぁ、個人差ありだけどね。


 でも、本当にどうしようか。未来、ずっとこんな感じの世界になっていくとして、ずっと生きていくためには何が必要なのだろうか。


 僕は、一生懸命考えた。志望している大学を選ぶよりも、結構楽しいかも。同じ未来のことを考えているのに。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る