第15話
リビングに戻ると聡と深雪はまだ話していた。
仕方ないから扉の前にもたれるように座る。
「さ、聡くん……う、嘘だよね?ね、嘘って言って……そのナイフおろして……?」
ナイフ?まさか……
頭で考えるより先に体が動いていた。
ガチャっと扉を開けるとナイフを持って深雪に向かって歩いていく聡が居た。
「嘘?そんなわけ無い。
お前がこんな事しなければ可愛がってやれたのに。
しょうがないよね?お前が自分で選んだ道なんだから」
ニコっとゾクゾクする笑顔で笑う聡の手を思わず掴んだ。
「藍………
何で止めるの?これが俺なりのケジメだよ?」
「そんな簡単に楽にさせるのがケジメ?笑わせんな。
お前が玩具を早く処分したいだけだろ」
俺は知ってた。
聡にとって深雪は、俺にとっての蘭とは何処か違う事。
それは付き合いが長くなればなる程分かるようになった。
「っ……だって、コイツが居たらもう藍は俺をそばには置いてくれないだろ!?
俺は藍のそばに居たいんだ!藍の為ならこんな命惜しくもないっ!」
知ってた。執着の対象が俺の事も。
じゃなきゃ、ただの友情で全てを捨てて俺と共に手を汚す訳ない。
元々聡は普通に生きていたんだから。
「手放すとは言ってない。
ただ、この事態の責任を誰が取るのかと聞いたんだ。俺の籠から蘭が逃げた。
俺にとってはそれが一番大事なんだ。
蘭をまた籠に入れる為にはまだ聡の手がいる。
だから手放す気など最初からない。」
使えない男ならば当の昔に捨てていた。
俺のそばに居る為に聡が得た知識や技術はやすやすと捨てるには勿体なさすぎる。
「深雪はお前の玩具だ。所有者はお前だ。
そして今回の事をしでかしたのは深雪だ。
所有者のお前が今回の事の責任をどう取らせるかは知らんが、楽に殺すのだけは許さねぇ。」
俺だけが苦しむなんてそんなのおかしいだろ?
それなら俺を苦しめた奴はその倍苦しめばいい。
「わかった。
それじゃあ、俺は藍の為に何をすればいい?」
「蘭の事は、親父が見つけてくれる。
親父の力が使えるなら見つかるのは早いだろう。
聡は鳥籠の強化と玩具の処分をしろ。」
「わかった。」
そう言って泣き叫ぶ深雪を連れ聡は部屋から居なくなった。
書き置きを見る度夢じゃない事を実感する。
この手紙に涙の跡でもあれば、まだ俺はこんなにも怒りに支配されることも無かったかもしれない。
そんな跡もない。躊躇ったあともない。
その事実が俺の頭を更に狂わせる。
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