第14話 聡side

泣く深雪を見ても何も思わない自分はつくづく冷めてると思う。

別に俺はそこまで深雪を大事にしてる訳ではない。

相手なんて誰でも良かった。操作者すれば誰でも。

藍の傍に居る為にはこうするしかなかった。


初めて藍を見た瞬間目が奪われた。

コイツの隣に立っていたいと思った。

別に恋愛感情で好きな訳じゃない。

ただ、死ぬならコイツの為に死にたいと思ったんだ。

幸い友達は多かったからまずは情報を集めた。

藍がどういう奴なのか。

でも出てくるのは薄っぺらいものばかり。

その中にひとつだけ、気になるものがあった。

藍にはずっと思っている子が居る事。

それもその子の事を少しでも貶せばブチ切れるらしい。


あぁ、コレだと思った。

ここから攻めていけば間違いないとその時俺は思った。


「やっ!俺は聡!一緒に昼飯くわね?」


「は?嫌だ」


怪しまれない様に少しずつ少しずつ距離を近付けた。

その為に深雪と付き合ったし、深雪を溺愛してるように見せた。

俺が無害だと言う事をアピールする為に。

時間はかかったけど、少しずつ藍も心を開いてくれた。


なのに、これだ。

俺の所にもあの女から脅迫まがいの頼みをされた。

姫様と藍を離さなきゃ深雪を殺すって言われた。

だけど、俺にとっての最優先事項は藍な訳で。

そんな事無視してたらコレですよ。

せっかく此処まで距離を近付けたのにこれじゃあ意味がない。

こう考えると泣く深雪に対して怒りが湧いてくる。


「深雪、お前俺の為なら何処までしてくれる?」


「な、何でもするっ!だ、だからお願い!捨てないで!お願い!聡君!私を捨てないでっ!!」


俺にしがみつく深雪が不快でしょうがない。


「それじゃあ、俺の為に死んで?」


もうこうなってしまった以上生半可な事で藍は許してくれない。

だって被害を受けたのは姫様で、それを原因に姫様は藍の元から去った。

藍にとって万死に値する行動なんだ。


「………え?」


「藍は、お前がいる限り俺を許してくれない。

藍にとって姫様は誰よりも優先して誰よりも尊いものだから。

お前が傷つけたのはそういう子だよ。

この世で一番傷つけるべきじゃなかった子だ。」


「さ、聡くん……う、嘘だよね?ね、嘘って言って……そのナイフおろして……?」


ナイフを持つ俺から少しずつ後ずさる深雪。

涙でグチャグチャな顔で必死に笑う姿は醜くてしょうがない。


「嘘?そんなわけ無い。

お前がこんな事しなければ可愛がってやれたのに。

しょうがないよね?お前が自分で選んだ道なんだから」


俺に何も言わずに姫様を犠牲にする道を選んだのはコイツだ。

散々言ったのになぁ。姫様には関わるなって…さ。


俺は最後にニコっと笑ってナイフを振り下ろした。


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