第13話

苛々しながらコール音を聞く。

早く出ろよ、くそっ!


「おぉ、何だ。

お前から電話なんて珍しいなぁ」


「ふざけんな!お前のせいで蘭に逃げられた!!」


呑気な親父に腹が立つ


「はぁ?何の事だ?」


「お前の自称妻名乗ってる女!

彼奴がこっちにちょっかい掛けてきやがったんだ!!!」


「そういうの最近よく居るんだよなぁ

写真あるなら送ってくれ。見たら折り返す」


ブチッと電話を切って先程の写真を送る。

後ろでは少々喧嘩が起こってる。


「何で言わなかった?

何で何も言わずにこんな馬鹿な事をした!?」


「だ、だって聡君がっ……聡君がっ……」


「死ぬって?あの女にそんな事出来る訳ねぇだろ

深雪、前は俺が庇えたけど今回は庇いきれないぞ」


二人がボソボソ話すのを見ていると電話がかかってきた


「見た?」


「あぁ、昔咲夜にちょっかいかけてきてた女だわ

私の方がふさわしいーとかわけわかんない事言ってて会話にならなかったんだよなぁ」


「そんな事はどうでもいいし

親父が愛人を何人囲おうとどうでもいい!

問題は、その女が聡の女使って蘭にちょっかいかけたことだ!

どんだけ頑張って捕まえたと思ってるんだ!」


「今回は俺に非があるからなぁ……

この女は捕まえとくから処分はお前で決めろ。

後お前のお姫様も見つけてやる」


「当たり前だ!クソ親父!!!」


ブチッと電話を切って新しい煙草に火をつけた。


「ふぅー………それで?お前らどうする訳?」


何もせずに謝って終わりなんて許さない。




「藍、ごめん。少し深雪と二人で話がしたい。

こんなこと言える立場じゃないのはわかってるけど」


「わかった。だが逃げれると思うなよ」


俺は二人をリビングに置いて寝室へ入った。

寝室にあった蘭の小物も朝見た脱いだままのパジャマも何もない。

蘭が居ないその現実を実感すればする程が俺はどんどん追い詰められていく。

蘭が居ればそれだけでいい。

俺の隣に居ればそれだけでいい。

その為なら俺は何だってする。

何を捨てたっていい。ただあの時からずっと俺は蘭だけを求めてる。


それなのに蘭は俺の事など、気にもとめてない様にすぐに居なくなる。

執着してるのは俺だけでいつだって一方通行だ。

彼女にとって俺はその程度の存在でしかなかった。

嫌われたっていい。憎まれたっていい。


「………今度は絶対離さない」


君が俺から逃げると言うなら俺はどんな手段を使っても君を俺のそばに繋ぎ止める。


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