第11話
「あ、由藍。俺先に帰るわ。」
ピーピー鳴る腕時計を見て慌てて服を着替える。
そろそろ帰らないと怪しまれる。
「おっけー。
あ、お姫様にいつかあわせてよー?」
「…考えとくわ。」
由藍に手を振り車に乗り込むと行きには居なかった聡が居た。
「藍、話は通しといたよ。
それと、顔に血ついてる」
「ん、サンキュ」
一応確認したけど、返り血がついていたようだ。
危ない危ない。
「あっちの言い値で払うって言ったら即了承取れたよ。誓約書も作ったし問題はない」
「やっぱりか。」
蘭の両親は、借金地獄に陥ってる。
まぁそうさせたのは俺でもあるけど、俺はこっちにも道はあるんだと教えてあげただけ。
崖を転がり落ちて行ったのはあいつらの意思だ。
ホス狂いにギャンブル依存症。
普通に働いて返せる金額など当の昔に終わっていた。
「念の為引っ越しもさせたし
接近禁止の念書もあるから出会う事はないとは思うよー」
「これで、遠慮なく蘭と暮らせる。」
あぁ、嬉しい。
本当に蘭が頼れるのは俺だけになった。
名実ともに俺のものになる日もそう遠くない。
「あ、そういえばそっちはどうだったの?」
「ん?蘭が受けた倍の苦痛味あわせて
時間になったから切り上げてきたけど
由藍が居るから…良くてお人形じゃない?」
由藍は趣味が悪いからなぁ。
人を壊すのが好きだし、人が苦しむのを見るのが好きだ。
その副作用なのかはわからないが由藍が壊した人間は、お人形の様に言いなり君になる奴が多い。
由藍の言う事は絶対。死ねと言われれば死に、殺せと言われれば殺す。
神でも崇めてんのかってぐらいの崇め方だ。
廃人かお人形。どっちが幸せなんかね?
家に着いてリビングに行くと蘭が本を読んでいた。
「あ、もう夕方か。
それじゃあ藍ちゃん。私帰るね。」
俺を見て、用意していたのか横に置いていた鞄を持って立ち上がる蘭。
帰る?どこへ?
「え?何で?」
「何でって……」
「蘭の家族にはちゃんと話をつけたよ?
荷物とかも明日届くし。
蘭は俺と一緒なの嫌?俺は蘭とずっと居たいよ?」
問題なんて何もない。なのにどうして帰ろうとするんだ?わからない。
わからない。
「嫌とか…じゃなくて…」
「ならいいじゃん。
蘭、蘭が好きな映画借りてきたんだ。
一緒に見よう?」
「う、うん…」
帰すわけない。もう離れるなんて耐えられない。
欲望は静かに大きく膨らんでいく。
「蘭、面白かったねこの映画。
続編あるみたいだし明日帰りに借りてこようか」
「う、うん。そうだね。」
ぎこちなく笑う蘭の頬にキスをして、俺は晩御飯の準備を始めた。
腑に落ちない顔でぼーっとする蘭を見て
もっと鳥籠の強化をするべきだなと思った。
最悪風切り羽を切ってしまってもいい。
俺の元に居てくれるなら。
その為なら俺は手段を選ばない。
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