第8話
それから俺は毎日登下校だけではなく居れる時間は全て蘭に使った。
計画の為とはいえ毎日傷ついていく蘭を見て平気な訳じゃなかった。
毎日報告される数々の暴行や嫌がらせ。
そのイライラを他人にぶつけ毎日拳や体をボロボロにしながら俺はその時を待った。
「藍、もう限界っぽいぞ。」
違う所から見張ってた聡の言葉に頷いて
蘭が居るトイレに行くとその場で蹲って泣く蘭。
もう嫌だと泣きながら叫ぶ蘭。
「蘭!!
何で泣いてんの?誰にやられた?」
誰にやられたかなんて知ってる。
何に苦しんでるのかも知ってる。
「っ……何でもないっ
目にゴミが入っただけっ……
藍ちゃんっ…此処女子トイレだよ…?男子は入っちゃいけないんだよ」
涙を止めようと目を擦ってぎこちなく笑う蘭。
「っ……蘭、俺には無理して笑わないでよ。
ごめん。俺が追い詰めたよね。」
俺は優しく蘭を抱きしめた。
「無理してなんかっ……ないよっ……」
「俺が全部どうにかするから。
絶対何とかするから。だからもう無理しなくていいよ。蘭は…絶対に俺が守るから。」
だから、俺の元まで堕ちてきてよ。
「何でもないってば……」
力なく俺の胸を叩く手。
「蘭、好きだよ。俺だけのモノになって?
絶対に蘭を守るから。お願い……俺だけの蘭になって?」
俺は少し蘭を離してポカンとする蘭の頬を撫でた
「…っ……告白するタイミング…絶対おかしいよっ……」
驚きで止まっていた涙がまたポロポロと溢れ始めた。
「うん、本当はもっと良いところで言うつもりだったけど
もう我慢できなかった。」
俺が笑うと、つられたのか蘭は泣きながら笑い始めた。
「……私も…藍ちゃんが好きだよ…」
今にも消えそうな声で聞こえた言葉。
それは俺がずっと聞きたくてずっと欲していたもの。
「絶対幸せにするから。」
俺は抱き締める力を強めた。
きっと俺の今の顔を見たら蘭が驚いてしまうから。
「…っ…もう幸せだよっ…」
やっと手に入れた。
やっと俺の所まで堕ちてきた。
もう、この手を離さない。
泣き疲れて眠ってしまった蘭のおでこにキスをした。
口は起きた時に取っておきたいからね。
「聡、いんだろ?」
「あは、やっぱりバレてたか。
車の準備出来てるよん」
「深雪は?」
「今居なくなると怪しまれるから学校終わってから来るよ。
あ、二人の鞄俺が持って来といた」
「さんきゅ。」
俺は蘭を子どもを抱くように抱っこして車へと向かった。
家へ着いて寝室へ蘭を寝かせた。
「藍、救急キットー」
「さんきゅ。お前見んなよ。」
「見ないって。隣の部屋居るから」
聡が出てったのを見てから蘭の制服を脱がして
痣や傷の手当てをして、いつかの為に買っておいた蘭の服を着せて布団をかけた。
「カメラの調子は?」
「大丈夫。音声もちゃんと入ってる。」
そろそろだとは思っていたから準備はしていた。
蘭の限界が来たらこうなる予定だったし
家中にカメラが仕掛けてある。
それに扉には内側からは俺の指紋と虹彩をスキャンしないと開かないようになってるし
ベランダの鍵も簡単には外れないよう工夫がしてある。
窓は簡単には割れないよう防弾仕様だ。
「やっとこの日が来た。」
タバコを吸いながら口角が上がるのを抑えられない。
ずっと待っていた。蘭が俺の手の中に入ってくるのを。
「長かったなぁ。
後は檻を頑丈にしないとねぇ」
「絶対逃さねぇ。」
「藍、目がこえーよ
てか、あの子ここで寝てるなら深雪此処に呼んだら不味くね?」
「学校が終わる頃に車で迎えに行って車内で今後の事は話す。」
「ん、おっけ。
一応格好変えてく?」
「当たり前」
優等生スタイルで車運転してたらすぐバレる
髪を後ろに流して耳にピアスをいくつか着け
指輪も少しつけてっと
「あ、話し終わったらジンちゃんはもう今日帰っていいの?」
「あー、いいよ。」
吾妻 陣
俺の下についている部下のひとり。主に運転手だけど。
顔が童顔で可愛い顔してるからかよくイジられてる。
「そろそろか。早めに行くか。」
グダグダと話してたらそろそろ学校が終わる時間だった。
「俺も準備オッケー!」
下に降りれば既に待機している陣。
「ジンちゃん、学校までおねがーい」
「了解です。」
煙草を吸いながら今後の事に口角が上がる。
焦るな。焦れば全てがパァだ。
少しずつ蘭を外界から遮断しなければいけない。
怪しまれてはいけない。
だけど、片時も離れたくない。
ずっと蘭の顔を見ていたい。触れていたい。
「着きました。」
「俺迎えに行ってくんねー」
窓を開けて外を見ると生徒がチラホラ出てきていた。
それにしても変装したけど、聡の格好逆に目立つ気がするが………まぁいいか。
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