第4話

待ちに待った入学式。

遠目に見える蘭は可愛くて、久しぶりに会えた事が嬉しくて泣きそうになった。


「藍、顔怖いぞ」


「うるせぇ。何年待ったと思ってるんだ。」


この日をどれだけ待ったか。

入学式は移動や説明が多く話しかける事は出来なかった。

だけど、同じクラスでガッツポーズしたくなるくらい嬉しかった。

聡と深雪も一緒だったが余り興味ない。


「今日話しかけなくて良かったのか?」


「明日話しかける。」


三人で帰る帰り道聡が聞いてきた。


「そっか。深雪は馴染めそうか?」


「う、うん。大丈夫。

だけど、わ、私の経験上イジメは確実に起きると思うっよ…」


何故か俺の前ではいつも挙動不審な深雪は女子相手には普通らしくギャル軍団と仲良くなったようだ。


「そうなったらいち早く教えろ。」


「はっ、はひっ!」


「ちょっと藍、俺の可愛い彼女ビビらせないでよー」


「は?普通にしてんだろ。

興味ない女に優しくする程俺暇じゃない」


俺の優しさは全て蘭へ注がれてる。






次の日話しかけるタイミングを考えていた。

いきなり朝話しかけるのも変だろう。

そう思っていると蘭が立ち上がり何処かへ行こうとしていた。

蘭の習性的に図書室だろうか。

俺は先回りして偶然を装って蘭に話しかけた。


「蘭、久しぶり」


キョトンとした顔をして俺を見る蘭。

目をまんまるにして何度も瞬きをしていた


「藍ちゃん!?」


俺の予想より大きな声が聞こえ少しびっくりした。


「元気だった?」


「う、うん!勿論だよ

藍…ちゃんは?」


蘭は俺の体をチラッと見て眉を下げた。

まだ怪我をしてるか心配してくれてるんだろうか?


「俺も元気だよ。

今までの事話したいし今日一緒に帰ろ?」


「う、うん!」


クラスについてしまい担任の登場により会話は終わってしまった。

だけど、蘭は俺を覚えていた。その事実が俺の胸を温かくする。





「蘭、帰ろう」


鞄を持って蘭の元へ行くと


「う、うん。ちょっと待って」


バタバタと荷物を鞄に慌てて詰め始めた。


「お待たせ」


「待ってないから気にしないで」


蘭に待たされるならいつまでだって待てる。

俺はさりげなく蘭の可愛い手を握り花畑へと向かった。

俺達の思い出の場所。



「此処は変わらないね」


あの日以来此処には来なかった。

来るなら蘭と来たかったから。


「藍ちゃん。今は……元気にやってる?」


心配そうに俺を見上げる蘭。

あの頃はそんなに目線は変わらなかったのに

今はこんなにも差があるのか。


「あぁ、1から説明するね。

あの後あの家から出て本当の父親の所に引き取られたんだよ。

もう怪我はしてないよ。何なら体見る?」


制服を脱ごうとすると蘭は焦って俺の手を止めてきた。恥ずかしいのか何故か蘭が顔を真っ赤にしていた。


「それなら良かったよ。」


嬉しそうに静かに微笑む蘭。

俺の事をずっと心配してくれてたんだろうか?

それなら嬉しい。


「実は本当の父親からはだいぶ前から接触はあったんだ。

だけど、蘭と離れたくなかったからずっと断ってたんだ。

でも、蘭が約束してくれたから思い切って行った。

蘭は、俺の事覚えていてくれた?」


「覚えてたよ…?忘れる訳ないじゃんっ…」


ポロポロと涙を流す蘭はやっぱり綺麗で、俺は思わず蘭を抱き締めた。

覚えていた。忘れてなかった。その事が嬉しくて笑みが溢れる。


「なら良かった。

全く…蘭は本当に泣き虫だなぁ」


頭を撫でると更に泣き始める蘭。


「これからは毎日一緒だよ。

沢山遊ぼうね」


これからはもう離れる事はない。

ずっと…ずっと…一緒だ。


「ゔんっ…!ゔん!あぞぶよぉおおお」


何度も何度も頷く蘭。

あぁ、俺はやっとこの場所に帰ってこれた。






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