第10話

目を覚ますと寝る前と同じ天井。

隣ではスヤスヤ眠る彼が居た。

体は怠いけど拭いてくれたのかお風呂に入れてくれたのかわからないけど、ベタベタはしてない。


どうして私達はこうなってしまったんだろう。

最初の私達は普通だった筈だった。

お互いただ好きで…それだけだった筈なのに

どうして、こんなにもすれ違ってしまったんだろう。


「んぅ……蘭…起きたの?」


「……………うん。」


返事をしないとすぐ不機嫌になる事を思い出して返事をすると

まだ寝ぼけているのか、そっかぁなんて言いながら私にすり寄ってきた。

こうしていると、まるで昔の彼みたいだ。


「おなかすいたぁ?

あのねぇ……蘭の好きな……りんごのうさぎ……」


りんごのうさぎ、何だろう?と思って周りを見るとベット横の棚にウサギに切られたリンゴが置いてあった


「ありがとう、寝ていいよ」


昔とは違う髪型。

前は爽やか王子だったのに、今は横を刈り上げていて少しワイルド王子みたいだ。


「そっかぁ………じゃあまだねよぉ」


今は何時?何日?何曜日?なんて聞かない。

そんなこと言えば自ら地雷にダイブする事になる。

私は彼が嫌いな訳じゃない。

ただ、昔みたいに戻りたかった。

ただそれだけだった。

だけど、出来なかった。私は私が思うより弱くて耐えられなかった。


それに、長年積み重なったコンプレックスが彼の横に立つ事を邪魔した。


「アンタなんてどうせすぐに飽きられる。」

「どうしてあんなブスが隣にいるのよ」

「あの服装似合うと思ってるのかな?変な服装〜」


長年言われてきた言葉。それは積み重なり私にのしかかっていた。

彼と居るだけでついてまわる言葉。

どれだけ努力したって……居なくなってくれない言葉。


何度も彼は言った。

そのままの蘭が好きだよ。蘭じゃなきゃ意味ないんだよって。

その言葉が信じきれなくなったのはいつだろう。

彼から他の女の香水がした時?

彼と他の女がキスしてる写真が送られてた時?

彼と他の女が手を繋いでる所を見た時?

それとも、同棲していた部屋で彼が裸で他の人としていた時?


今の私には何を信じたらいいのか

何を支えに生きていけばいいのかわからない。

このまま流されていたってきっと最後に傷つくのは私だ。

いつだって、私を一番傷つけるのは私を守ると言った彼だった。


気付けば私は自分の腕を果物ナイフで切っていた。


彼が好きで好きで…好きで堪らない。

私は彼の物なのに、彼はいつまでも私の物にはならなかった。

彼はずっと誰かの彼だった。

どうしてなんだろう。好きなだけじゃ…何で駄目なんだろう。



どうして………私の事が好きだなんて言ったの?…藍ちゃん。

どうして、私に拘るの……?





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