第6話

「………夢か」


随分懐かしい夢を見た。

まだ…藍ちゃんが普通だった頃。

私達が幸せだった頃。


見知らぬベッドから出ようとした時耳に聞きなれない音が聞こえた。

音がした足の方を見るとそこには足枷がついていて鎖でベッドの足の部分と繋がっていた。


「な…にこれ……」


ベッドに繋がれている鎖は二本あった。

もう一本を追えば繋がれているのは私の首だった。

首輪のような物と繋がっていた。


ガラッ


「あ、起きたんだ。おはよう。

朝ご飯作ったけど食べる?」


何でもない事の様に話す藍ちゃん。


「こ……れ……何……?」


「ん?鎖だよ?

ほら、蘭は目を離すとすぐ居なくなるからさ

それなら鎖で繋いでおかなきゃだろ?」


チャラっと鎖を触って微笑む藍ちゃんの笑顔は昔とは違う。


「……な、何で…?」


「何で……?

ねぇ、それを蘭が俺に聞くの?」


あぁ、地雷を踏んだ。

一瞬で変わる雰囲気。


「ヒィッ……ご、ごめっ……んなさいっ」


怖くて怖くて後ろに後ずさるけどすぐに壁にぶつかる。


「そんなに俺が怖い?

ねぇ、誰がこんな風にしたの?

俺はちゃんと蘭に選択肢をあげたよ?

この道を選んだのは……蘭でしょ?」


選択肢?

藍ちゃんが変わってから藍ちゃんがくれる選択肢は選択肢なんかじゃなかった。

答えはyesかはいのみ。

否定なんてすれば如何なるかなんて簡単に想像がついた。

少しでも間違った答えを言えばお仕置きだと色んな事をされた。

だから、藍ちゃんと話すのが怖かった。

何が地雷になるかわからなくて裸で地雷源を歩いてるようだったから。


「ちがっ……」


「違くないよ。

俺は何度も言ってきたはずだよ?

俺からは逃げられないよって。

逃げるならそれなりの覚悟を持ってねって言ったよね?」


確かに言われた。

だけど、逃げないわけにはいかなかった。

あのまま居れば私が保たなかった。もう限界だった。


「ど……して………どうしてっ私なの……っ」


可愛い訳でも頭がいい訳でもない。

ドシでデブスな私に彼は拘り続ける。

藍ちゃんに似合う可愛い子は幾らだっているのにどうして私なのか


「何度も言ってるでしょ?

蘭以外あり得ないって

俺にとって蘭だけが特別なの。蘭だけが俺の光で俺の空気なの。

蘭が居なきゃ……俺は生きていけないよ」


そう言って笑う笑顔が昔の藍ちゃんの笑顔と一瞬重なった。

深い闇に囚われた目。ドロドロと濁った目。


「さて、蘭。

俺から逃げたお仕置きの時間だよ」


ニタァと笑う藍ちゃんから逃げたくても

藍ちゃんの手には私の首と繋がる鎖が握られていた。


どうしてこうなったのか。

いつから、いつから私達はこんなにも離れてしまったんだろう

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