第3話
私達の出会いは実は小学校だった。
小学校低学年の時に彼は転校してきた。
「御影 藍です。
好きな事はスポーツです。よろしくお願いします」
彼は転校してきて3日と経たずクラスの中心人物だった。
爽やかで優しくてスポーツ万能で頭も良い。
それにカッコよくて女子の間では噂の的だった。
バレンタインが来れば殆どの女子が彼にあげていた。
私は、どちらかといえばぼっちな小学生だった。
誰かと遊ぶより一人で気ままに散歩する方が好きだった。
かといって友達が全くいない訳じゃなくて学校の中で最低限付き合う人は居た。
彼と私は接点なんてまるで無かった。
このまま関わる事なんて無いと思ってた。
私と彼が関わる事になったのは、夏休みに私が散歩していたときの事。
あの日はいつもと違う道を通りたくて地図を見ながらトコトコ歩いてた。
あるアパートを横切ろうとした時だった。
「クソガキがっ!!さっさと出てけっ!」
辛うじて聞き取れた声。突然大きな声で沢山の罵声が聞こえて思わず足が止まった。
凄い勢いで少年を蹴り飛ばした。
少年を見る事も無く扉はバンッと閉まった。
少年の体には擦り傷や打撲痕が沢山あった。
思わず駆け寄らずには居られなかった。
「…大丈夫?私絆創膏持ってるからあげる。
君の方が必要そうだから」
かけていたポシェットから絆創膏と消毒液を出して少年の近くに置いて下がった。
本当は手当したかったけど、近寄った時にビクッと反応していたから私が近寄るのは良くないと思った。
少し離れて様子を見てたけど、ピクリとも動かない少年。
「い、生きてる……?」
ちょっとずつ近付いて顔を覗き込むとそこには思ってもいない顔があった。
傷だらけの少年は御影 藍だった。
死んだ様に真っ暗な目。
私は何も言わずに彼の怪我を手当てした。
手当てとはいっても小学生の出来る事なんて限られてたし消毒して絆創膏貼ったり大きな怪我の所にはガーゼと包帯でグチャグチャに巻いただけだ。
「…花田…蘭……さんだよね…?」
彼が私の名前を知っていた事が信じられなかった。
同じクラスではあったけど会話した事も無かったし、接点なんて一個も無かったからだ。
「う、うん。御影君大丈夫…?」
「大丈夫だよ。こんなの慣れっこだから」
そう言って全て諦めた顔をして笑う彼を見て何だかとても悲しくなった。
「変な所見せてごめんね。
この事他の人には内緒にしてくれるかな?」
クラスでいつも笑ってる笑顔で私に微笑む御影君。
その顔が本当に辛そうで、今にも泣きそうで
見てる私が泣いてしまいそうだった。
「言わない。
だから、だから私には無理して笑わなくていいよ
慣れっこっていうけど痛いよ…っ?こんなの…悲しいよっ…」
御影君の手を握って怪我もしてない私が何故か泣いていた。
御影君はそんな私をキョトンとした顔で見ていた。
静かに泣く私の手をひいて御影君は何処かへ歩いていった。
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