第27羽 見つける鳥はただのカカポ3

 一つ目の装置をしょーもない見つけ方をした日の次の日の朝。

 朝食を食べ終えた俺達は、今まさに、新しく見つけた装置の内容を聞こうとしていた。


 「ぞれじゃあいくぞ」


 装置に手をかけると、音声が流れ始めた。


 「この音声を聞いているということはルーカス大臣から話は聞いているのだろう。理解しているものとして話を進めさせてもらう。

 私が調べたのは王の『目的』についてだ。

 王の目的、それは復讐だ。

 王は復讐しようとしている。その復讐する相手は王やルーカス大臣が元いた世界の人間。

 王のはその世界の人間を滅ぼそうとしている。

 なぜ王がそんな復讐心を抱いているのかはわからない。でも一つだけ確かなことがある。王はこの世界の人間を使い、王やルーカス大臣が元いた世界に攻め込む気だ。

 王はそのために長い年月をかけて計画を立て、準備をした。その準備期間はこの国ができてから、今現在に至るまで。

 そう、この国の王は一度も代替わりをしていない。今も昔もただ一人、それが現国王。

 王が他の者に姿を見せない理由はそれだ。

 そして、王はその長い年月を利用し、一つの装置を作り上げた。人を異世界へと転送する装置だ。

 だが、この目で見たことがあるわけではないから、どこにあるのかはわからない。

 

 私が調べた情報はこれですべてだ。

 王の過去に何があったのか、それはわからないが、王は一人で人を異世界に転送させるような装置を作ってしまう人物だ。

 くれぐれも気を付けてほしい。健闘を祈る」


 ここで音声は終わった。

 

 「…………この部下すげーな、一人でこんなに調べたのか。さすが、優秀と言われるだけあるな。あ、やべ、野菜茹ですぎた」


 オームが、茹ですぎた野菜を箸で持ち上げ、残念そうな顔をする。


 こいつには緊張感というものはないのか……? なんで野菜茹でてんだよ。さっき朝食、食っただろうが。


 茹ですぎた野菜をアルカに押し付けようとしているオームに、俺はあきれながら質問をする。


 「この音声の中で出てきた『人を異世界に転送させる装置』って俺たちが契約してた時にに使った『結紐』とかいう名前の紐と同じやつか?」

 「わかんね」


 うん。やっぱりこいつ使えねえ。


 安定にオームは使えないので自分で考える。


 この音声は異世界に転送させる装置と言っていたな。でも俺とオームは結紐を転送だけでなく契約するのにも使ったよな。ということは別物か?


 「結紐は装置と一緒にあの袋の中に入っていたのか?」

 「そうそう。説明書と一緒にね」

 

 そう言うとオームは、リュックからくしゃくしゃになった紙を取りだした。


 説明書? なんだそれは、そんな話聞いたことないぞ。 


 「なくしたと思ってたら、チェスのボードの間に挟まってたんだよね」

 「なんでそんな重要そうな手がかりなくすんだよ。それに見つけたならすぐ言えよ! お前、絶対忘れてただろ」

 「その通りです。普通に忘れてました、すんません」

 

 こいつ。使えないだけでなく、ただでさえ少ない重要な手がかりを忘れていただと? やっぱり焼き鳥にしていいか?


 俺は、苛立ちながらオームから説明書を奪い、目を通す。

 説明書には結紐の使い方、そしてオームの言っていた、どうみてもあやとりにしか見えないおまじないについても記されていた。

 しかし、記されているのはすべて結紐に関するもので、ルーカスの部下が言っていた、人を異世界へ転送させる装置については記されていなかった。それに、オームに急に知性が宿った事については未だに謎のままだ。


 「王の過去に何があったんでしょうか……」

 「滅ぼしたい、ってぐらいだから余程ひどいことされたのかな?」

 「人を転送させて別世界に攻め込もうとするくらいだからね……」


 女子三人は、各々考えたことを口に出しているが、いまいちピンときていないようだ。


 新しい装置を見つけた事によって、王の目的が明らかになった。

 しかし、依然、俺たちの目的が装置を見つける事であるに変わりはない。

 王が動き出す前に何とかして残りの装置を見つけて、王を止めなくては。


 そう決意し、ついでに、次は努力に見合った見つけ方ができるように神に祈り、俺達は洞窟を後にした。

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