第26羽 見つける鳥はただのカカポ2
激しい揺れとともに上から石が降ってくる。
「あああああああっ! なんか天井にヒビはいってんですけど! これ以上でかい石降ってきたら絶対骨折れるんですけど!」
オームの絶叫に上を見上げると、俺達のいる巨大な空間の天井にヒビが入っている。さらに、収まる気配のない揺れとともに徐々にそのヒビが大きくなっていく。
あれはやばい。この洞窟が崩れでもしたら骨折どころの騒ぎではない、確実に死ぬ! 生き埋めとか絶対いやなんですけど!
だが、絶望的な状況に置かれていることがわかっていても俺なんかじゃどうにもならない。
なにもできない俺は、その場で頭を手で守りながらうずくまる。
「いやだあああああああああああ!」
全く収まる気配のない揺れ。
「あああああああああああ!」
今にも崩れそうな洞窟の天井。
「あああああああああああ————ん?」
急に収まる揺れ。
音もしなくなり、上から降ってくる石もなくなった。
このパターンは…………。
恐る恐る顔を上げると目の前には巨大なバケモノが————いない。
…………おかしい、ここで巨大なバケモノが登場すると思ったんだが。まあ、登場しないに越したことはないんだけど……。
俺は安堵しながら、立ち上がって辺りを見渡す。
他のみんなも荷物もすべて無事だ。揺れの前と後で変わったところと言えば、周りに石が増えた事ぐらいだ。
今の揺れはなんだったんだ?
「なあ、あんなのあったか?」
謎の揺れに全員が困惑していると、リュックの中でいつの間にか防災頭巾を被ったオームがなにかを見つけた。
オームの視線の先を見ると、そこには先程まではなかった縦長の台のような物があり、その上に青い光を放つ何か黒っぽい物体が乗っている。
その物体を確認しようと台の前に行くと。
「……これ装置じゃね?」
「…………俺にもそう見える」
どう見ても装置にしか見えない物体を前に固まる一同。
確認のため、台の上にある物体に手を伸ばし触れると。
「この音声を——」
どこかで聞いたことのあるような語り出しで、装置から音声が流れる。
「「「「「………………え?」」」」」
まさか、おい、嘘だろ?
信じきれずに俺は、もう一度装置に手を触れた。
「この音声を聞い——」
…………これは……あの…………装置ですか? ルーカスの部下が命がけで調べた情報が記されているという、あの装置ですか? なぜですか、なんでこんな急に出てきたんですか? これ本当に装置ですか? 偽物ですか? フェイクですか?
信じがたい状況に疑問ばかりが思い浮かぶ。
でも、俺が触ると音声が流れ出す球状の黒い物体。そんなの装置でしかない、装置以外には考えられない。
いや、こんなにさらっと見つかっていいのか? ルーカスの部下が命がけで隠したんじゃないのか? よくわかんないけど、軽く地面掘ったら出てきたんだけど!?
確認のためもう一度手を触れてみる。
「この音声を聞いている——」
いやもうこれ絶対装置じゃん。この始まり方前にも聞いたことあるもん。どこぞのルーカスとおんなじだもん。
なにこれ? 俺達は、宝探しゲームでもしてたのか? わりと本気で世界を救おうとしていた自分が恥ずかしいわ。
「み、見つかりましたね」
「それにしてもなんでこんな急に……」
「私が頑張って掘ったからかな……」
ここまで結構頑張ってきたのに、こんな見つけ方をしてしまったせいで、感動もくそもない。
微妙な雰囲気の中、その場から動かない一同。
そんな俺達の様子はお構いなしに、青く輝き続ける装置を見て、全員で苦笑いをする。
「…………一応、ルーカスのと比べてみようか……」
見た感じ、色も大きさも、ルーカスの装置と全く一緒だが、一応比べてみようと思いルーカスの装置を置いておいた場所に取りに行くが装置が無い。
「誰か、ここに置いてあった装置知らないか?」
女子三人が知らないと首を横にふる。
「あー、俺がどっかに転がしちゃった」
オームが頭をかきながら辺りを見渡す。
「いや、扱い雑すぎるだろ。転がすって。結構大切な装置なんだぞ」
「悪い悪い。疲れたから装置の上に腰かけたらバランス崩して転んじゃったんだよね。で、そのあと地震がきて…………どこ転がったっけ?」
こいつは……ルーカスの魂のメッセージが詰まった装置ををバランスボールみたいな感じで使ったのか……。
ルーカスさん、うちの鳥がすいません。
「あ! あったあった」
そう言うとオームは、新しく見つけた装置が乗った台のすぐ後ろからルーカスの装置を持ってきた。
「…………ものすごい光ってんだけど……」
オームから受け取った装置は、今までみたことのない、青色の光を放っていた。
…………青色って…………。
「なにかに反応してるみたいな光かたしてるね」
…………反応? 待てよ。
オームは誤って装置をここに転がした。その直後に巨大な揺れがきて、揺れが収まったと思ったら、装置が転がった先にもうひとつの装置が出てきた。そして二つともなにかに反応しているかのような光かたをしている……。なおかつ全く同じ青色で…………。
それじゃね? 穴掘ったの関係なくね?
俺は、ルーカスの装置をもって台から離れた。
すると、すさまじい揺れと共に台が地面の中へと消えていった。
近づくと、これまたすさまじい揺れと共に台が出現する。
再度その場でフリーズする一同。
「これだあああああああああああ!」
俺は思わず叫んでしまった、叫ばずにはいられなかった。
カシルが穴掘ったの関係ねえ! これオームのおかげだわ。オームがたまたま転がした先の地面の中にあった装置が、ルーカスの装置と反応したんだわ。
くそっ! もし俺がこの装置を持ってこの場所に来ていたら、もっとましな見つけ方だったろうに……。
よりによってオームかよ。大切な装置にバランスボール感覚で座ろうとしたオームかよ!
「オーム、よくわからんがナイスだ」
「いやー、人生何あるかわかんないね! まさかおれが見つけちゃうなんて!」
後頭部に手をあて、顔を赤くしてあからさまに照れるオーム。
なに照れてんのこいつ!? ただの運じゃん! それにお前は人生って言葉つかえないからっ!
あまりにもしょうもない見つけ方をしたせいで理解が追い付いていないのだろう、女子三人がボケーっとしている。さっきから動く気配がない。
「さ、音声聞いてみようぜ。俺が見つけた装置でさ!」
うぜぇ……。なんでよりによってこいつなんだよ。一番何にもしてないやつだよ、こいつ。
「音声聞くのは後にしよう。たぶん今聞いても女子三人が理解できないだろうからな」
「えー気になるんですけどー」
オームが不満そうにほっぺたを膨らませる。
もちろん俺も気になるが、できれば装置の内容は全員で理解しておきたい。たぶん、今聞いたところで、女子三人は右の耳から左の耳へ通り抜けるだけだろうからな。
それに女子三人の気持ちがわからないわけでわない。
これだけ頑張ってこんな終わり方かよ、ってことだろう? わかるぞ、その気持ち。
装置の内容は明日は明日聞くことにして、ハイテンションな鳥一羽とローテンションな人間四人で夕食を食べ、眠る用意をした。
寝る直前、オームが一言。
「はぁー、これが冒険か。へへっ」
こいつだけ明日の夕飯の肉減らそう。
そう決意し俺は眠りについた。
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