第2章 運びの村ムーブ
第16羽 運ぶ鳥はただのカカポ
アナウンスと共にに浮舟が減速を始めた。ある程度速度が落ちたら減速をやめ、そのまま乗り場へと入っていく。
「よーこそお越しくださいました!」
突然外に鳴り響く男の声。乗客全員が窓の外へと目を向ける。
「歓迎いたしますぞ!」
男の声を合図に何やら音楽のような物がが始まりだす。
だんだんと大きくなっていく音。その音は一つだけではない、色々な種類の音がする。
外には、ピアノにバイオリン、トランペットにアコーディオン……大きな皿のような物に乗った人達が、色々な楽器を弾きながら浮舟と並走している。まるでオーケストラだ。
さらに、音楽にのせて歌も始まりだした。
「直接言えないあの思い、遠くへ伝えたいこの思い。
手紙で送れば伝わるさ! プレゼントすれば喜ぶさ!
この村に運べない物はない。だってここは運びの村!
『ようこそ! 運びの村ムーブへ!』」
軽く百人は超えているであろう村人が、音楽と歌で村へと訪れた人達を歓迎してくれた。
歌が終わってもまだ演奏は鳴りやまない。
「ようこそ!」
「浮舟降りたらすぐ右手にございますのはこの村一番の宝石屋! 買うもよし、売るもよし、見ていくだけでもぜひどうぞ! シュリッツ宝石店! ぜひお越しくださいませ!」
村の人達は各々、歓迎だったり、店の宣伝なんかをしている。なんて活気のある村なんだろうか。
隣の席のオームも 拍手しながら叫んで大興奮している。
首から下げている水筒といい、こいつまじで幼稚園児にしか見えないんだけど。
演奏が終わると浮舟は乗り場に停車した。
浮舟を降り、村の中へと続く道を歩く。他の乗客も、桁違いな歓迎をされた後で興奮を抑えきれていない。
道を抜け、視野が開けてムーブの村の景色が目に飛び込んでくる。
デカ! 広! 人多い! 休日のデパートかってくらい人いるぞ!
浮舟での歓迎といい、いきなり村の規模の違いを見せつけられた。メラとは比べ物にならない。
他の四人もその場で固まっている。
「なんじゃこりゃ……俺ここに住むわ」
「全てが桁違いですね……」
「見たことがない物ばっかね」
「おおー、これだけ人いれば擬人化仲間いそうだなー」
とりあえず宿を探そう。泊まるところがなければなにも始まらない。
五人で軽く村を散策しながら宿を探す。
「辛みとトカゲの尻尾はいかがですかーー? 旨味と辛味が強くてどんな料理にも合う万能調味料だよ! 変異体からしか取れない貴重な一品! 是非この機会にいかがですかーー?」
「おい、ちょっと待てや」
財布を手に持ち、こっそり買いに行こうとするアルカのフードをつかんで止める。
「なんでですか! 変異体からしか取れない貴重な一品ですよ! 買わない手は無いじゃないですか!」
「あほ! 何があるかわからないんだ。宿が見つかるまで無駄金を使うのはよせ」
「シュートの言う通りよ。宿に着くまでは買い物禁止」
うちのグループのお金を管理するセルシカに言われ、アルカは渋々財布をカバンにしまった。
それにしても、見たことない物ばかり売っている。水生大根、飛翔馬のもも肉、飛ばず鳥の睾丸…………飛ばず鳥の睾丸!?
「おいオーム、お前の金玉売ってるぞ」
「なんだ貴様。俺は玉無しってか? おい」
「ねえ、あれ宿じゃない?」
カシルが指差した方を見ると、『宿 極楽屋』と書いてある看板が目に入った。
宿へと入り受け付けに行くと、部屋に空きがあると言うので渡された紙を見て部屋を選ぶ。
『七人以上 十部屋
六人 三十部屋
五人 三十部屋
五人未満 三部屋 』
五人未満少な! 冒険者が多いから基本五人以上なのか。この国はぼっちには生きづらいな。
「じゃあ、五人部屋でお願いします」
セルシカが部屋を選ぶ。
誰もつっこまないけど、このグループのリーダーセルシカじゃねえか? オーム何もしてないぞ。
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