第6羽 生意気な鳥はただのカカポ3

 俺は今、オームと一緒にメラという村に向かっている。 

 道中、俺はオームになぜ俺を召喚したのかを尋ねた。

 高い知性が欲しいなら、人間であれば誰でもいいはずだ。


 「あれはまあ、一言で言うとミスだな」

 

 薄々そんな気はしていた。あの夜、俺がオームに接触したのは想定外だったのだろう。


 オームはあの夜、あの鳥籠のような建物の中で近くのボクシングジムに通うボクサーと会う予定をしていたと言った。

 確かに、どうせ契約を結ぶなら強い奴の方がいいからな。


 「でも、鳥のお前がどうやってそこにボクサーを呼んだんだ?」

 「そのボクサー、極度の女好きで知られてたから、『夜、ここに来てください。お待ちしております』って丸文字で書いた手紙をポストに投函してきた」

 「アホか! そんなので来るわけ無いだろ」

 「いや、実際来たっぽいよ」


 嘘だろ!? いくら女好きでも行くか普通? そのボクサーかなりの性獣とみた。


 しかし、俺が先に来てしまったので、そのボクサーは結局オームとは会えず、イタズラされたと勘違いして怒って帰って行ったそうだ。不憫な奴だな。まあ、そのボクサーに謝罪する気持ちはないがな。

 

 俺は他に、契約の仕方についてもオームに尋ねた

 契約というのは夢の中で行うものらしく、寝る前に結紐けっちゅうという紐をお互いに体内に取り込んでから寝る。そうすると、夢の中で契約ができるようになる。

 俺は、取り込んだ記憶はなかったが、結紐は見ると目からも吸収されるらしいので、いつの間にか取り込んでいたのだろう。


 「そういうことだったのか。ということはオームは、その結紐とやらであやとりしてたのか。罰当たりな奴だな」

 「あやとりじゃねえよ! あれはまあ、おまじないみたいなもんだな。契約がうまくいきますように的な」


 夢を見るだけではなく、夢の中で二つの世界の境界線を越えることで契約完了となる。だからもし俺があの時線を超えていなかったら、こうはなってはいなかっただろう。くそっ、ハムの野郎、最後の最後に飼い主に牙をむきやがって……。


 だいたいの疑問が解決したところで、周りの景色をに目をやる。


 生茂る緑の木々、美しい鳥の鳴き声、近くには川が流れているのだろうか、心地よい水の音がする。先に見えるメラも、遠くからでも風光明媚な村の様子が見てとれる。


 「綺麗だなー、余計な物が無いって感じがする」

 「この国——そういえばこの国の名前、まだ教えてなかったな。この国の名はジェーブジェス。ジェーブジェスはそっちの世界よりも工業とかは発達していないが、代わりに『能力』というものが文明を支えている。だから車や電車がない分、そっちの世界よりも空気が綺麗なんだろうね」


 ジェーブジェス……いい名前だ、かっこいい。しかも能力が使えるときたもんだ。

 退屈な日々から解放され、しかも能力! 興奮せずにはいられない。


 「そろそろ村に着くぞ」


 街の入り口にたどり着いた俺は息を呑んだ。 

 想像通り、いや、想像を遥かに終える美しい街並みだった。

 見たことのない通貨で買い物をしている女性。荷物を手で持たずに浮かして運んでいる男性。

 それにこの世のものとは思えない程の絶世のショートヘアー美女。

 俺は思わず叫んでいた。こんな世界見たことない。


 「どうだい? 異世界召喚も悪くはないだろう?」

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