第15,5話 仮デート


「で、何買うか決めてるの?」

「いや、なんかいいのがあればいいなと思って」

「じゃあ時間かかりそうだね」

「……なんかすまん」

「いいのいいの。私も同じだし」


 和弥と美紅はファンシーな雰囲気を漂わせる女子向け雑貨店に入り、それぞれ目当てのものを探していた。

 少し店内を徘徊してみたがやはり何度見渡しても何がどこにあるのか把握が出来ない。

 可愛いキャラクターの文房具やバッグ、派手目なデザインの服などが店内にぎっしりと陣列しているので小物1つ選ぶにしても種類が膨大過ぎるのだ。


 店内を歩いていると女子向けの店ゆえ男子が来るのは珍しいのか店員や客からは何か物珍しそうなものを見るような視線を感じた。


「そういえば美紅は何買いに来たんだ?」

「……別に大したものじゃないよ」


 そういうと美紅は歩くペースを早め、和弥から少し距離を取った。

 ……何かまずいことでも聞いてしまったのかもしれない。


「そういう和弥は何買いに来たの?」

「友達の誕生日プレゼントだ」

「……へぇー」

「なんだよ」


 さすがに「心愛さんの誕生日プレゼントを買いに来た」と言えば自慢しているようでなんだか気恥しいし相手もあまりいい思いはしないだろう。

 だから心愛さんのことを「友達」とオブラートに包んで会話を成立させた。

 ……多分美紅にバレるとサプライズでお祝いをすることができなくなってしまうからだ。


 すると美紅は何か閃いた様子で無理やり和弥の肩を引っ張り耳に顔を近づけてきた。

 ……ちょちょ近い近い。


「その友達ってさ、こころんでしょ」

「っ!?」

「……やっぱり」


 その声にはからかうという感情より、どこか安堵しているような、そんな雰囲気があった。

 てかなんでバレたし。


「……なんでわかった?」

「私の知ってる人で5月誕生日なのこころんだけだもん」

「……左様ですか」

「大丈夫。別に言ったりしないから」

「言ったら恨む」

「そんなに1人でお祝いしたいんだぁ」

「……別にいいだろ」

「いや可愛いかよ」


 そんなことを話していると入店時から気になっていた視線がさらに集まっていた。


「あの2人付き合ってるのかな」

「絶対そうでしょ」

「だよね。しかも美男美女」

「男の方は微妙じゃない?」

「私には分かる。あれ本気出したら凄いやつ」


 別に聞こうとは思っていたのだが、あちらこちらでコソコソとそういったことを話している会話が聞こえた。

 微妙で悪かったな。


「ねぇ今聞いた? 私のこと美女って、あの人たち見る目あるねぇ」


 自慢げに胸を張った美紅だが、残念なことに心愛さんを見慣れている和弥にとってそれは大変控えめなものに見えた。

 視線のやり場に困らないほどに。


「……まぁ、いいと思うぞ」

「おい今どこ見て言った?」

「そんなことよりプレゼント探すぞ」

「……巨乳がお好みですか」

「……大きい方がいいだろ普通」

「全国の貧乳派に謝れ」


 実際改めて見てみると、男としては美紅はかなり可愛いと思う。

 すらっとした体つきにまるで透き通っているかのような白い肌、翡翠色の瞳も彼女の可愛さをより引き立てている。

 仮に心愛さんを子猫と例えるなら美紅は兎といった感じだろう。


 ……トゥルン


 ポケットの中のスマホから通知音が聞こえた。

 とりあえず取り出してメッセージアプリの通知を見てみると、「そろそろ晩御飯できるけどまだ帰り遅くなりそう?」と心愛さんから連絡がきていた。

 さすがにこれ以上帰りが遅くなるのはまずいな。


「誰から?」

「ご想像にお任せする」

「こころんから『まだ帰ってこないの?』って連絡きたんでしょ」

「……お前エスパーかよ」


 和弥がそういうと美紅は迫真のドヤ顔を披露してきた。

 ……殴りたい。この笑顔。


「じゃあ今日は解散にしよっか」

「付き合わせて悪かったな」

「だからお礼はいいって」

「感謝ぐらいさせてくれ」


 実際美紅がいなかったら店に入ろうとすらしなかったし、どんなものが置いてあるのか大方把握することが出来たのはありがたかった。

 心愛さんの好みそうなものもいくつか見つけることも出来たので、他にいいものが見つけられなかったらここに来ることも視野に入れておくことにしよう。


「美紅は何か買わなくてよかったのか」

「なんかいいの見つからなくてさ、私もまた今度にしようと思う」

「そっか。俺バスで帰るけど美紅はどうするんだ」

「私もバスだよ。そうだ! 今日付き合ってあげたんだからバス停まで話し相手になってよ」

「美紅がそれでいいなら」


 そうして和弥と美紅は店を後にし、互いに何気ない軽口を交わしながらバス停へと向かった。


 ふと思ってしまう。

 こんな何気ないことも、青春と呼べるのだろうか。

 黒がかった靄が徐々に消えていくように昔病んでたことが少しだけ心の中から消えていった気がした。



 ─────



〘あとがき〙

 ども、室園ともえです。

 最近期末テストのため5日以上更新できていなかったせいでPV数もランキング順位も減少傾向にあり、モチベがダダ下がっております。

 なかなかネタも思いつかず、オマケに語彙も表現力もストックがあるわけでもないので「なんだコイツ初心者かよ」と思われた方もいるかもしれませんね。

 まだまだ小説を書くにあたって足りない能力が多々ありますが、それでもここまで読んでくださった方、ありがとうございます。

 もしよかったらフォローや感想、★レビュー等お願いします。

 それでは、また。










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