第3,5話① 和弥の過去

 新学期が始まる前夜、俺はまだ寝れずにいた。


 葉賀先輩と一緒に生活する中で中々訪れない、一人になる時間。

 この時間はやけに悪い方に思考が働いてしまう。


 今、リビングには心愛先輩が寝ている。

 寝ているかどうかは分からないが、もう十二時を過ぎる頃なので、おそらく寝ていると思う。


 寝ようとしてもなかなか眠れる気配がしなかったので、今日のことを色々と思い出してみることにした。


 葉賀先輩は……恐らく俺を信頼してくれていると思う。


 まだ出会って間もないが、一緒に過ごして、気を使われていると感じないからだ。

 でも、俺は先輩をまだ心から信用出来ない。


 少し緊張を解いただけで利用されてるかもしれない、本心では遊んでいるだけなのかもしれない、と黒くてモヤっとした何かに心を支配されてしまうのだ。


「もう、思い出したくもないな……」


 中学の頃の出来事が頭をよぎった。


 ─────


「───あんたなんて別に遊びだから」


 やめろ……


「───ガチ惚れしてた? マジウケる」


 黙れ……


「───もう近寄らないで、負け犬」


 ─────


 ……っっ!!


 ……別にいいじゃないか。

 話しかけてきてくれて嬉しかったんだ。

 気づいたら、好きになってたんだ。

 ただ、それだけだったのに……


 他の人からしたらちっぽけなことに見えるかもしれないが、俺にとっては高校の進学先を自分の知人が誰も行かないような所に変えなければいけないと思うほど深刻で、それほど心に深い傷つけた出来事だった。


 私情を挟んで申し訳ないとは思っている。

 だけど俺は先輩の事情が何らかの形で解決したら、もしくはするような変化があれば、関係を絶つつもりだ。


 卑怯かもしれない。

 でも、バカにされたり誹謗中傷の的にされたりするのはもうごめんだ。

 あんな思いはもうしたくない。



 ───もう、人を好きにはならない。

 恋なんて言うのは、人をむしばむ毒だ。


 窓から冷たい風が入り込む。

 さすがに体が冷えてきたので、足元の毛布に手をかけ、頭まで潜り込んだ。


 ……余計なことを考えたせいでやけに瞼が重かった。

 無理に起きておく必要もないので眠気に身を任せ、そのまま寝ることにした。


 ─────


 暗い感情を表に出してはいけないことはわかっているが、それでも気づいたら出てしまう。

 もし先輩が今の自分を見てしまっても、今まで通りの笑顔ができるのだろうか。


 きっと気を使わせてしまうだろう。




 こんな自分なんて……大嫌いだ。






《あとがき》

 ども、室園ともえです。

 自分でも自覚している程のグダグダ展開ですが、ここまで読んで下さっている人には感謝しかないです。

 たまに自分でも読み返して、あれ?と感じるところをちょくちょく修正しているので、気が向いたら読み返してみてください。

 よかったら感想やレビュー等お願いしますm(__)m

 それでは、また(。・ω・)ノ


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