第2話 女神様、我が家へ


 先輩を家に案内しようと思い、合流した後お互いくだらない日常談をしながら向かうことにした。


「そういえば先輩、服とか日用品とかどうするんですか」

「うーん。和弥の家がわかったら一度そこから家に帰って必要なものを持ってくるつもりだよ」

「分かりました。よかったら手伝いますよ?」

「お、気が利くねー。ぜひお願いするよ」

「了解です。あ、ならこのまま先輩の家に向かった方が早いと思いますけど」

「確かに。……なんかコンビニでの和弥とは大違いだな」

「……余計なお世話です」


 今さりげなく酷いこと言われた。

 いや、素の俺を褒められたと考えよう。

 ポジティブ思考最高。


 そうしてしばらく歩くと葉賀先輩の家に着いた。

 こういうと失礼かもしれないが、先輩の家が並々のレベルではない豪邸だという事実に俺は少し腰を抜かしていた。

 こんなのはアニメやドラマだけのものだと思っていたからだ。


 レンガ造りの西洋風の家はまるで一つの文化財のような存在感を放ち、白と基調としたそのずっしりとしたたたずまいは周辺の住宅街の中でもいい意味で異様と言っていいほど目立っていた。

 庭に生え揃う草木や花々、噴水はまるで遊園地の一角を担っていても違和感がないほど手入れが施され、なおかつ幻想的だ。


「すげぇ……」


 無意識に言葉に出てしまうほどその景色は素晴らしかった。


 しかしその瞬間、先輩のまとっている雰囲気が急に冷たくなったような気がした。

 背筋に鳥肌が立ってきているのが分かる。

 顔を見るのが少し怖くなってしまい、横目で先輩の方を見るとその表情は今まで1度も見たことがない、まるで腐ったものを見るような……どこか寂しそうなものだった。


 俺の家に急に泊めてくれと言った理由は一応考えてみてはいたのだが、大方確信がついた。

 おそらく家庭事情だろう。


 今、迂闊うかつに話しかけるとあやうく地雷を踏んでしまうかもしれない。とりあえず何か別の話題を……


「先輩、とりあえず荷物を取りに……」

「月島、私少し遅れるかも」

「え?」

「ごめん。そっちも準備とかあるでしょ。あと私、地味に潔癖だから掃除とかしてくれると助かる」


 先輩のその言葉には遠回しに早く帰ってくれと言われているような気がした。


「わ、わかりました。それじゃまた」

「ありがとね。後で連絡するから」

「し、失礼します」


 急に苗字で呼ばれたのも相まってか先輩から今までからは考えられないほどの威圧感を感じた。

 まだ春だと言うのに体の節々が冷たく感じる程に。


 一刻も早くその場を立ち去りたかったがために上司にこうべを垂れる部下のような態度を取ってしまったが今はそんなことを気にする余裕はない。


 言葉では言い表わせないほど、強い恐怖を感じた。


 できるだけ早歩きで家に戻り、目の前の曲がり角進んで先輩から死角になった瞬間全速力で走り出した。

 今の先輩はまるで別人のようで一刻も早くこの場を逃げ出したくなってしまったからだ。


 ……頭から血の気が引いていくのだわかった。


 俺はどうしてこんな時に気の利いた一言が言えないのだろうか。

 見る限り明らかに先輩にとって家庭事情の云々はタブーだったはずだ。

 コンビニで話した時も軽く探りを入れても全部断られてしまっていたじゃないか。


 そこから推測することは出来たはずだ。


 これ以上は踏み込まないでと線引きしてくれていたのにそれズカズカと入り込んでしまったことを後悔……やっぱと何も変わってねぇじゃねぇか。


「あぁもう……クソっ!」



 どこにもやり場のない怒りを全身に込めてただただ走り続けた。


 ─────


 ……いつの間にか家に着いていた。

 周りの街灯が少ないせいか、やけに辺りが暗く感じる。


 モヤモヤした気持ちを抱えながら、家に帰ってすぐに片付けを始めた。

今は気を少しでも紛らわしたい。

リビングだけでも済ませてしまおう。


 俺の住んでいるマンションは1DK。

 1LDKほどは広くはないが、高校生の一人暮らしには十分すぎるほど広い。


 そのリビングの広さは八帖ほどで、引っ越してきて整理する間もなく放置されているダンボールが散乱している状態である。


「ひとまず、これを何とかしないとな」


 先輩が来るのだから恐らくリビングに泊めることになるだろう。

そのためにもはや遺跡と化したこのダンボールの山々を片付けなければならない。


 今は先輩からいつ連絡が来るか分からない。

万が一早い可能性もあるのでできる限り早く終わる方法を模索しよう。

 時間がかからず、なおリビングを整理できる方法…。


 ……一旦使わないものを一旦自室に全部ぶち込めばどうにかなるだろうか。


 仕方なく最低限使いそうな家具やスリッパなどの日用品を出して残り全部のダンボールをまとめて自室に入れた。


 自室に足の踏み場が無くなってしまったがこれは必要な犠牲。やむを得ない。


 先輩には倉庫だと伝えよう。余計な気を使わせてしまうかもしれないからだ。

 一応スマホのメッセージアプリの通知欄を確認したが、まだ連絡は来ていない。


 とりあえず、夕飯の用意だけは軽く済ませておこう。先輩も食べるかもだから少し多めに。

 ひとまず冷蔵庫の中身を確認して今日作れそうなものを思い浮かべる。


「ふぅ。これでよし……」


 と粗方下準備を済ませたところで丁度先輩から連絡がきた。


『さっきはごめんね!m(。>__<。)m』

『今準備終わったとこ(b・ω・)b』

『あと片付けどれぐらいかかりそう?』


さっきまでの雰囲気とはとって変わって可愛らしい顔文字を添えたメッセージが送られてきていた。

テレビでよく見るキャラクターのスタンプもいくつかあった。

……変に気を使わせてしまったのだろうか。


つい先程俺が先輩のことを内心怖がっていたことを見抜いて、少しでも気を紛らしてほしいと思っているのかもしれない。


 とりあえずポジティブに考えるのだ。

そうでも無いと足がすくみそうだ。

またあの冷酷な表情をされてしまえば、今度は逃げ出すことは出来ない。


『こっちも今終わりました』

『今から行きますね』


簡潔に準備が終わったことを伝え、俺は家を出た。

黒がかった雲が覆いかぶさり消えかかりそうな星空に、わずかな期待を込めて。


 ─────


「おーい! かずくーん」


 恐怖を心の中に押し殺して先輩の家へ向かった和弥だったが、その緊張はものの数秒でほぐれてしまった。


 さっきまでの威圧感はまるで無かったかのように消え、目には冷酷な雰囲気はなく、これまでのように琥珀色の宝石のような輝きを放っていた。


 それよりも先輩が両手に抱えている巨大な荷物に目が引かれた。


「先輩……それうちに持ってくるんですか」


 葉賀先輩のもつ荷物の量は半年は帰って来なさそうなバックパッカーのようなリュックサックと一体何を入れたらそんなに膨らむんだと言うぐらいパンパンな袋がいくつか両手にさがっていた。


「うん。あ、もしかして入らない?」


 先輩は残念そうに肩をしぼめた。

そりゃ普通はそんなに豪邸じゃないですから入りませんよ。

一般市民ナメないでください。


 その姿はまるでおもちゃを買ってもらえなかった子供のようで、男ながらに母性をくすぐられてしまう。

 全国の母親はこの眼差しに耐えねばならないのか。辛い、辛すぎる。


「それぐらい大丈夫ですよ。とりあえずそのリュックと袋一つぐらい持ちますから貸してください」


 先輩の目の輝きが変わった。ほんとに子供みたいだな……


「やっぱり気が利くねー。じゃあお願いするよ」

「別にこれぐら…って重っ! 何入れてんですかこのリュック!」

「いやー実は私自分のベッドと枕がないと寝られないし、リンスやシャンプーも自分に合うやつ持ってかなきゃだし。その他もろもろ全部詰め込んだらこんな荷物になっちゃった」

「なっちゃったで済まされる量じゃないですよこれ……」


 女性という生き物は大変なんだな……


「中身はあんまり詳しくは聞かないでよ? 私だって見られたくないものがあるんだから」

「中身がわかっても軽くはなりませんよ」


 ツッコミたいところだが意外とこのリュックが重くてそれどころではないのだ。

 気を抜くと後ろに倒れそうになる。てか先輩さっきまで平然とこれ持ってなかったっけ……


 そうだ、先輩の袋も重いはずだ。

 それを前に持てば前後で丁度いいぐらいのバランスに…。


「先輩、手に持ってる袋もください。まだ余裕なので。てかそれには何入れてるんですか」

「えーこれ以上はプライバシー的にムリかなー」

「じゃあ俺の家も俺のプライバシーの塊なので泊まれませんよ?」

「このくだりさっきもしたじゃん」

「なんのことやら」


 くだらないことを話しながら先輩から袋を一つの受け取る。

 袋は割と軽かった。

 てかなんかやけにもふもふするぞこれ。


 勝手に見るのは失礼なので一応聞いておく。


「……この袋って何が入ってるんです?」


「私が子供の頃から集めているぬいぐるみだよ。ちょびちゃん、ぎむちゃん、あーくん、全部合わせると十二匹いるんだよ。傷ついちゃ嫌だから大事に扱ってね」


 あっさり答えてくれた。

 ……ぬいぐるみ集めの趣味。


「……可愛い趣味ですね」


 これは本音だ。嘘ではない。


 チラッと横目で先輩を見ると茹でたこのように耳まで真っ赤に染まっている。

 つい口を滑らせてしまったらしい。


「い、今絶対バカにしたでしょ! 忘れて! 忘れなさい! やっぱりそれ返して!」


 顔を真っ赤にして怒る姿は怖さというよりむしろ愛らしさすら感じさせる。

 やべぇずっと怒られてたい。

 変な意味じゃないぞ。


「はいはいすいません。というかあんまり騒ぐと近所迷惑なのでそろそろ俺の家に行きません?」

「そうしよっか。……あとぬいぐるみのこと忘れてね」


 それから家に着くまでの少しの間先輩は口を聞いてくれなかった。

 多分しばらく根に持たれる気がする。

 からかうのは程々にしよう。


 一時はどうなるかと思ったが、先輩は何事も無かったように振舞っている。

 ここで下手に家庭事情を追求するのはタブーなので、一旦忘れてしまおう。


 そんなことを考えているとあっという間に自宅に着いた。


「ここがかずくんの家かぁ」


 先輩の豪邸に比べれば貧相なものに見えてしまうが、周りと比べて見るとそこそこの良いマンションだと思う。

黒を基調としているのでそれっぽく高級感がある。

 高校生の一人暮らしは不安だと親がそこそこいいのを買ってくれた。

 セキュリティもバッチリなのですごくありがたい。


 それはともかく、先輩から預かっていた荷物を返すと、背中からの負担が飛ぶように消えて、尋常じゃないぐらいに体が軽かった。

 重すぎたものを持った後の反動なのだろうか。


 あれを何気なく背負っていた先輩の底力に少し恐怖すら感じる。

 男なのになんか情けない気分だ。

 筋トレ、始めますか。


「リビング空けてるので、荷物はそこにお願いします」

「わざわざありがとね」


 一応八帖あるのである程度はいけると思っていたのだがその半分以上は先輩の荷物で占領されてしまった。


 何となく生活に癒しが欲しくて観葉植物のパキラを置いていたのだが、あれ確実に邪魔だな。

 後で部屋のレイアウトを考えよう。


「すぐに夕食の用意ができるので少し待っててくださいね」

「お、楽しみだなぁー。何作るの?」


 先輩は荷物の中から折りたたみ式のソファを取り出し、リビングの端に広げてくつろいでいる。


「肉じゃがと豚汁ですね。一応米も冷凍しているので出そうと思えば出せますが。」


 初心者でも分かりやすく料理ができる。

 クック○ッドバンザイ。


「肉じゃがと豚汁……」


 それを聞くと先輩が硬直した。電池切れのロボットのような動きに変わる。


「あ、アレルギーとかありますか?もしあるんだったら言ってくださいね」


 たしか今日の夕食にはアレルギー項目でよく見かける鶏卵……肉じゃがにはゆで卵が入っていたはずだ。

 取り除けば問題ないのだろうか。


「アレルギーじゃないんだけど……その……肉じゃがか豚汁の中に……にんじんって入ってる?」

「どっちにも入ってますよ。まさかにんじん嫌いなんですか?」


 先輩なのに情けないなぁと少しからかたった。

意識していなかったが自然と緊張はほぐれていたらしい。


「そ、そんなことない! だ、大好物だよにんじん! うん。あの甘さがたまらないよねー……」


薄々気づいてはいたのだが、先輩は煽り耐性というものがない気がする。


「なら多めにぎますね。大好物なんですよね?」

「え!? あ、そうだ! 配膳は私がするよ。なんでもやってもらうのは気が引けるし、少しは恩返ししないとね」


 先輩はやや小走りでキッチンの方へ向かってくる。


 ……さては自分の分のにんじんの量減らす気だな?

あえて気づいていないふりをして、先輩の提案に乗ることにする。


「助かります。風呂洗ってくるのでその間にテーブルに並べてくれるとありがたいです。お椀や皿は後ろの食器棚から好きなの選んでください。あまり種類ありませんが」


 そう言って風呂場に向かった。


 さすがにこれ以上は先輩の恩返しをしたいという善意も含まれているかもしれないのでからかうのはやめておこう。


 しかし風呂掃除に使うスリッパを戸棚から出しているときに先輩のぐぬぬ……という何かに苦戦しているような声が聞こえたので多分予想が的中していたのだと思う。


 適当に風呂掃除を済ませ、自動運転のスイッチを押し、風呂の栓が抜けていないことを確認してリビングに戻った。


 ……先輩がやけにニヤニヤしている。


 配膳は終わっていたようで、俺が先輩の向かい側に座り、自分の豚汁を見ると先輩がニヤニヤしていたことが一瞬で理解出来た。


 豚汁の上に……にんじんの山ができていた。

 にんじんの豚汁添えと言ったところか。


「先輩……これって」

「どうしたの? 早く食べないとせっかくの夕食が冷めちゃうよ?」

「そ、そうですね……」


 なるほど。

 あくまでしらを切るつもりですか。


「じゃあいただきます」

「いただきます」


 ならこちらも何も反応せずに黙々と豚汁を食べることにした。

 別にどうということは無い。


 少し先輩の表情をうかがうとこちらを見ながら顔を真っ青にしている。その表情にはこいつ正気かと言わんばかりの威圧感すら感じるほどだ。


 少しだけやり返してやろう。


「先輩も早く食べないと冷めますよ?」


「わ、分かってるよ」


「まさかにんじんも食べれないほどお子ちゃまじゃありませんよね?」


「ぐぬぬぅ……わかったよ! 食べればいいんでしょ食べれば!」


 そう言ってガバッと豚汁を一気に飲み干した。


 作った側としては味わって食べて欲しいが嫌いな食べものなら俺にだってあるし、そこについては詳しい言及しないでおく。


「ほ、ほら……た、食べれたよ?」


 体をプルプル震わせながら涙目で言われても説得力が皆無である。


「はいはい。肉じゃがも食べてくださいよ。自信作ですから」


「それはさっき味見したから知ってるよ」


「……何勝手につまみ食いしてるんですか」


「あ……てへっ☆」


 あざとく舌を出して可愛さで誤魔化そうったってそうはいか……なくもない。

 可愛いからね。仕方ない。


 その後を軽く談笑したり家の設備の説明や(もはや古代遺跡と化した)自室には入らないでくださいと警告をしたりして、夕食を終えた。


 恩返しの一環なのか皿洗いも先輩がしてくれるとのことなので有難くくつろがせてもらうことにする。


 風呂には先に先輩が入ることになった。覗かないでよ? と忠告されてしまった。


 見たくないと言ったら嘘になるがその場合俺の方が家から叩き出されかねないので自室の片付けを少しだけ終わらせることにした。


 四十分程度したら先輩が風呂から上がり、ドライヤーで髪を乾かしていた。


 女子の風呂って結構長いんだなと感じつつ、このペースなら自室の整理も1週間程度で終わらせることができると少し前向きに考えることができた。


 ……いや、1週間って結構長いな。


 その後俺も風呂に入り、午後八時を迎える頃には一緒にテレビのバラエティー番組を見ながら談笑していた。


 俺自信、ある程度の自分がコミュ障であることを自負しているので、もし話すことが無くなってしまい、無言で気まずい空気になってしまったらどうしようと頭の片隅で考えていたのだが、先輩も程よく話題を振ってくれてとても充実した夜を送ることが出来た。


 楽しい時間はあっという間……とはよく言うが本当にあっという間だった。


 もう時計は夜の十時を指している。


 先輩も瞼を緩め、今にも寝てしまいそうなほどウトウトしている。


「そろそろ寝ますか」

「そーだね。私はここで寝るよ。見ててこのソファベッドにもなるんだからぁ」


 深夜テンションなのか先輩の声がふわふわしていて言葉や仕草がすごく子どもっぽくなっている。


 まだ出会って2日目なのだが、先輩は俺に対して甘すぎるのではないかと薄々感じていた。まぁ可愛いんだけど。


「はいはい。じゃあ俺は自分の部屋で寝ます。部屋の電気のリモコンはテレビのリモコンの横にある白と青のやつですよ」


「はーい。あ、かずくんちょっと待って」

「なんですか?」

「あ、あのね……」


 やけに先輩の頬が赤い。今日見てきた中で一番と言っていいほどに。


「その……ここでは先輩じゃなくて……心愛って呼んで欲しいなぁ……なんてね。今日初めて泊まるのに馴れ馴れしいよね……ごめん忘れて」


 先輩は……心愛は余程恥ずかしかったのか持参していたぬいぐるみに顔をうずめてそっぽを向いてしまった。


「……べ、別にいいですよ」

「……忘れてってばぁ」


 俯せのまま頭をぬいぐるみに埋めて足をパタパタとしている仕草から恥ずかしさが伝わってくる。


「その……おやすみ、心愛」

「お、おやすみ……和弥」


 急に下の名前で呼ばれることには抵抗は無かったがさすがに少し恥ずかしい。

 でもそれ以上に……心愛が可愛い。

 自分に可愛さを表す語彙力がないことを恨むぐらい可愛いのだ。


 ぐぅぐぅとわざとらしく寝息を立てているのが聞こえるが気づいてないふりをしてリビングを後にした。


 部屋までの廊下を歩きながらついさっきまでに起こったことを頭の中で整理した。


 正直たった一日で下の名前で呼んでと言われるほどに俺に対して心を開いてくれているとは思ってもみなかった。


 信用してくれるのは嬉しいけど…過度に期待してしまう自分がいる。


 もし、自分が期待する状況になったとしても、ある一線以上は和弥からは踏み込めない……踏み込んではいけない。



 



 さっきまでにあんなに楽しかったのに、

 急に一人になると悪いことばかり考えてしまう。早く寝てしまいたい。


 思い出したくもないことを思い出しながら部屋に戻った。


 最低限の片付けしかしていなかったので、足の踏み場も少ないが、多少片付けていたのでベッドの周りは片付いている。


 部屋の電気を暗くすると、いつも以上に暗く感じた。

 ダンボールが連なっていることも相まってか自分の部屋が古びた遺跡のように見えた。


 一時の感情に身を任せるなんてのは……馬鹿のすることだ。

 ……思い出したくもない。

 やけに重くなったまぶたに従い、その日はそのまま眠ることにした。



 その頃だろうか、雨がポツポツと少しずつ強くなるように降り始めたのは。



〘 あとがき 〙

 ども、室園ともえです。

 少し長くなってしまいましたが、ここまで読んでくださってありがとうございます。

 前回に引き続き見てくれた方、感謝しかないです。

 たかが高校生がライトノベルのラブコメに影響を受けて執筆しているものですので、多少の矛盾やつまらなさは多めに見てやってくださいm(__)m

 自分なりに精一杯頑張らせていただきますので、感想やレビュー、ご要望などお待ちしております。

 それでは、また(。・ω・)ノ


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