第26話 談笑
もうほとんど仕事らしい仕事はないので、あとは談笑していた。
個人的お別れタイムだ。
小川さんが来ていない。他にも仕事を抱えている人だから忙しいのだろう。
藤木くんは来ていた。
小泉さんと海老原さんが私の所に来てくれた。
小泉さんたちはまだ東北支社にいるらしい。
「小泉さんと海老原さんのOLファッション、毎日愉しみでした」
美女のお洒落を見るのは本当に愉しかった。
雑誌の中だけじゃなく、ああいう人たちが実在しているのが凄いと思っていた。
「私は神崎さんのファッション好きだったな。何着ても似合うから羨ましいって思ってた」
海老原さんにそう言われてびっくりした。
綺麗でお洒落でスタイルも良い海老原さんが私を羨ましいだなんて。
美女は心も綺麗だっていうのを思い出した。
魚津さんは最後までよく解らない人だった。
けれども笑顔は絶えなかった。
なぜかSNSのフレンドになった。
やっぱり、少しは私に好意を持っているのだろうか。
「お薦めのバンドをSNSで紹介します、ほぼメタルですが」
健全な発言だった。
皆で和気あいあいとしていた。
「遅れてすみません」
小川さんが来た。
嬉しくて目が潤んだのが解った。とっさに耐えた。
小川さんはまっすぐ私の所に来てくれた。
「最後までややこしい部品を頑張ってくれて感謝しています」
いつも通りの優しい小川さんだった。
いつも通りということは、私に対して何も思っていないということでもある。
けれども私に向けた言葉、私だけにくれた言葉が嬉しかった。
私も笑顔で返した。
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