第19話 ふらふら2
魚津さんが行ってみたいというお店に入った。駅ビルの中にあるカフェだ。
店名が漢字の格調高そうなチェーン店だった。チェーン店なのが救いだ。
店内はそこそこ混んでいた。
私たちは二人掛けの席に案内された。魚津さんと向かい合って座った。
ちょっと距離が近いと思った。四人掛けの席だったとしても、向かい合って座るのだろうが。
椅子がとても豪華だ。
「神崎さんの私服、お洒落ですね。会社と全然雰囲気が違いますね」
注文したあと、いきなり言われた。
今日は髪を内巻きにしてマスカラはいつもの三倍、唇にもグロスたっぷりだ。
ヘアメイクは及第だろう。
ワンピースを着てくれば良かったと思った。
注文の品が運ばれてきた。
店員が目の前でコーヒーを注いでくれる。
魚津さんはお店イチ押しのフルーツロールを頼んでいた。私はアップルパイ。
お店のBGMはクラシックだった。食器や雰囲気、全てが調和していた。
魚津さんと色々おしゃべりをした。
魚津さんはメタルの他に、クラシックも好きだと言った。
私はJ‐POPが好きで、さっきのスクリーンの話をした。
「あの歌手、僕も好きです」
大好きな歌手を好きだと言われて、良い気分になった。
誘ったのは自分だからと、魚津さんが会計を済ませてくれた。
こういう時はお金を払っている姿を見ないのがマナーだと何かで読んだので、見えない所にいた。
ありがたいという気持ちと同時に、設計の給与はやっぱり高いのだろうかと思っていた。
ここから少し歩いた所に映画館があるので見に行きませんかと誘われた。
魚津さんが薦めたのは女子が好きそうな外国の恋愛映画だった。
私は普段そんなに映画は見ないのだが、折角都会にいるのだからいつもと違うことをしようという気持ちが強くなっている。恋愛映画を見た。
映画の内容は、カップルに降りかかる困難を主人公の女性がたくましく解決していくといった感じだった。
恋人と一緒にいる時と、困難を乗り越える姿のギャップが良いのだろうか。
これは女子が好きそうだな、と男子が思っているのだろうか。
キスシーンが何度かあった。
映画を見ている最中、魚津さんに手を握られた。
これが小川さんだったらいいのにと、思ってしまった。
魚津さんがこちらを見ているのが目の端に映る。
私はスクリーンを見ていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます