第17話 夏が終わる
次の月曜日、魚津さんと会うのが何故か少し恥ずかしかった。
ドアが開くたびに、そちらに意識が集中してしまう。
今日は極力、下を向いていよう。仕事に集中しているように見えるように。
そんな小細工を思いついた。
小細工の準備をしていたら「おはようございます」と声をかけられた。
反射的に挨拶を返すと、魚津さんだった。
小細工の準備が終わらないうちに、会ってしまった。
どんな顔をしたらいいのだろうと焦っていると。
「この間は飲みすぎてしまってすいません」と笑顔で言われた。
一気に緊張がほぐれた。
私は自然に笑っていた。仕事がやりやすくなった。
小細工を考えていた自分が、恥ずかしかった。
魚津さんはいつも優しかった。
深田さんは相変わらずだった。
〇
試作品に電気を通す日が来た。
設計者が集まった。
自分の作った部品に電気が通る。それはまるで自分の子どもが産まれる瞬間のようなものらしい。
設計者の期待が伝わってくる。
電気が通った瞬間、歓声が上がった。皆喜んでいる。
私もつられて感動した。
しかし感動したのも束の間、すぐに問題個所を指摘された。
再び問題シートと部品との闘いに戻った。
部署内での飲み会があった。
海老原さんがとても可愛いワンピースを着ていた。丈が少し短かった。
小泉さんはオフィス御用達のアンクル丈ズボンをはいていた。トップスは、胸元が空いたブラウスだった。
二人とも、とても輝いている。
新川さんが課長補佐に言い寄っていた。酔っ払っているのだろう。
課長補佐も何処かの支社から出向で来ている。妻子持ちだ。
問題を起こさないでほしい。
夏が終わる。
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