第16話 飲みに行きませんか
お店は駅裏にあった。
もう少し行くとごちゃごちゃした飲み屋街があるのだが、ここは少しすっきりしている。
私たちのように会社帰りと思われる人たちが何人かいる。
「無難にチェーン店にしました、自分がよく行くので」
魚津さんは笑顔で言った。
私たちに気を遣わせないためだろうか。
気遣いが嬉しかった。
個室に通された。
「静かで良いですね」
絢芽が自然に発言してくれる。なんだろう、助かる。
何を話したらいいのだろう。私は少し、様子をうかがった。
絢芽はメニューを見て「何を食べよう」と本気で悩んでいた。
魚津さんと先輩と同期の人は、仲良さそうに見えた。
魚津さんの先輩がよく喋ってくれたので楽だった。
しかし私と魚津さんの会話が増える方向に持って行くのを感じた。
まさか、魚津さんは本当に私狙いなのだろうか。
お酒が入ってくると、魚津さんの本性が出てきた。
魚津さんはメタルが好きらしい。
スマホから自分の好きな音楽を流したり、好きなバンドの話をした。
全然解らなかった。
ちょっとついていけなかったが、魚津さんが良い人には変わりないことを感じた。
私が戸惑っていると、魚津さんは「しまった」という表情をして「すいません、べらべらと」と謝ってくれた。
周りも魚津さんをフォローしていた。
自分の好きなものを「好き」だとはっきり言える人は健康的だ。
絢芽も愉しんでいた。
かなり盛り上がったので良かった。ホッとした。
駅で解散した。
絢芽と二人で地下鉄に乗って帰った。
「結局、魚津さんは碧狙いなの? 特に進展なかったね」
私もそう思う。
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